51 明らかに自慢だろう
さて、本題はこの街の魔法陣の破壊だ。
おそらくダンジョンか神殿の地下に設置されているはずだ。
それを探って破壊しなければ、地上への無事帰還が怪しい。
後少しだ。
俺はそう思うと同時に、妙なフラグ感が頭をよぎる。
後少し・・これって、ダメフラグじゃね?
そんなことが浮かんだが、頭を振ってかき消す。
「ではルナさん、この街の魔法陣も撤去しに行きますか?」
俺がそう言うと、ルナが満面の笑みで答える。
「そうだ! 早くあのシュークリームが食べたいしな。 この魔法陣を撤去すれば、後は一つか」
「ここの魔法陣って、やはりダンジョンの中に設置されているのでしょうか? もしかして神殿とか?」
俺が何となくつぶやくとルナが答える。
「うむ。 ダンジョンの位置はまだわからぬが、街の地下の方に強い魔素溜まりを感じるな」
ルナがそう答えた時だった。
俺たちの前に、わかりやすいルナ目当ての冒険者連中がいた。
「姉さん、冒険者なのかい?」
4人組のパーティのようだ。
「俺たち、この街で武技を磨いている冒険者なんだ、よろしくね」
ルナに4人ともが注目しながら話しかけている。
俺が言葉を出す。
「あの、パーティの勧誘なら・・」
俺の言葉に被せて話してくる。
俺のことなど眼中にないようだ。
「どうだろう、俺たちと一緒に行動してくれないかな? 何ならお試しで1回だけでも一緒にダンジョンなんか行ってもらったら、俺たちの価値がわかると思うぜ」
「はい、僕もそう思います。 美人なお姉さんには声をかけないと失礼ですからね。 こうして声をかけさせてもらっています」
横の男が一緒にしゃべる。
「我々は、これでもこの街の隣、武装都市ビフレストの冒険者ランクでは3位に位置しています。 まぁあまり自慢はできませんがね」
3人の男たちがニコニコしながらルナに話す。
明らかに自慢してるだろ!
心の声です、はい。
少し後ろのフードを被った人が黙ってお辞儀をしていた。
ルナがその人に目線を移すと、話していた男たちも気づいたのか、紹介する。
「あぁ、彼女はヒーラーなんだ。 とても優秀でね、高位回復魔法も使えるんだ。 女の人同士、気になったのかな?」
男たちはベラベラとしゃべっている。
「失せろ!」
ルナが一言つぶやく。
「え?」
「は?」
男たちは、全く予想していない言葉だったようだ。
「お姉さん、今なんて・・」
男が言うと、ルナが面倒くさそうに言う。
「失せろと言ったんだ。 2度も言わせるな」
男たち全員の背中が伸びる。
身体がビビッていたようだ。
そりゃそうだろう。
ルナが少しだが、イラついている感じがする。
相手にしてみれば、殺気みたいな感じで受け取れるんじゃないか?
「い、いや、すまない。 初めて見る人だったから声を掛けさせてもらっただけなんだ・・気を悪くしないでくれ」
「そ、そうです。 何か気に障ることがあったのなら、お詫びいたします。 すみません」
・・・
男たちはオロオロとしている。
そんな男たちを気にすることなくルナは立ち上がる。
「さて、行くかテツ」
俺にそう言うと、スッと歩いて行く。
俺もルナの後をついて行く。
ルナに声を掛けたきたパーティはその場で立ちつくしていた。
ただ、俺の背中めがけて何かを投げつけてきたようだ。
パリンッ!
俺の背中に触れる瞬間、弾けて消える。
男の中の1人が驚いた顔をする。
「え?」
そして、もう1度同じことを繰り返す。
・・・
同じだった。
男は驚いた顔で横の男を見る。
「リーダー、信じられませんがトレースできませんでした?」
「なに?」
「今、2度ほど追尾魔法を放ってみましたが、あの男の背中に触れることすらできませんでした。 いったい何者なんでしょう?」
「ほんとか? お前のトレースが弾かれたのか? 信じられないな・・」
男たちは不思議なものを見る目で、俺たちを見送っていた。
◇
俺とルナはギルドを出て歩いている。
「テツよ、魔法陣だが街の真下というわけではないようだ。 その真上まで歩くぞ」
ルナはそういうと、まるで勝手知ったる街かのごとく歩いて行く。
少し歩くと、どこかの教会のような建物が現れる。
その建物の前に来るとルナが言う。
「この建物の地下に魔方陣があるようだ」
俺は建物を見ながら思う。
どうみても神殿だろう。
ただ、作りは教会風の作りだが、規模は大きい。
大聖堂という感じと言った方がいいだろうか。
建物の正面の階段を少し登り、中へと入って行く。
なるほど、神殿の雰囲気だな。
静かで荘厳。
1階ロビーには椅子に座ってお祈りでもしているのだろうか、幾人かの人がいる。
俺たちはそんな人を横目に奥へと歩いて行く。
奥の方では神父みたいな服を着た人が何人かいた。
その中の1人に声をかけてみる。
「こんにちは。 神官長とお会いできますか?」
俺は単刀直入に聞いてみた。
相手は少し驚いた顔をして俺たちをみる。
マズったか?
いきなり神官長に会いたいとは、無礼過ぎたのだろうか。
俺はそう思い、すぐにライセンスカードを取り出した。
「え、あの・・私たちは神殿騎士でして・・」
そう言いながら、俺はライセンスカードを手渡してみる。
神父風の人は俺のライセンスカードを受け取ると、少し顔の緊張が緩んだようだ。
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