49 食べ過ぎだろう
「え・・えぇ、このプリンですね。 わかりました」
店員はそう答えると、会計の奥の方へ戻って行き大きな箱型の紙の入れ物を持ってくる。
プリンで正解だったんだ。
商品名も書いてあるようだが、見てなかったな。
俺はそう思いつつも、店員が手際よくプリンを詰めているのを見ていた。
・・・
初めの5個くらいは数えたが、面倒になった。
おそらく20個くらいは入ったのではないだろうか。
この人、おいしいとなると単品ばかりだな。
俺はそう思いつつルナ言う。
「ルナさん、このマカロンもおいしいですよ」
俺がそういうと、ルナは振り向くこともなく言葉を出す。
「女、このマカロンも全部頼む」
店員さんは、え? という顔をするが、会計の方を見て片手を挙げる。
もう一人の店員がやってきて、事情を説明。
呼ばれた店員が袋を取りに行っていた。
2人でルナの言う通りにプリンとマカロンを、今あるだけ詰めていた。
その袋を持って会計にルナと一緒に行く。
ルナが店員にライセンスカードを差し出す。
「ありがとうございます。 23000ギルになります」
店員がそう言うと、聞こえた他の客がピクッとなり、一瞬だがルナの方を見た。
確かに買い過ぎだろう。
ルナはプリンが入った箱を持ち、マカロンの入った紙袋は持てそうにないので、俺が持つ。
俺たちはそのまま店を出て、外のテーブルへと向かう。
「ありがとうございました」
後ろから店員の声が聞こえる。
俺たちは外の空いているテーブルに荷物を置く。
「ふぅ・・ルナさん、買い過ぎですよ」
俺は荷物を置いて、席に着きながら言う。
「何を言う。 食べれるときに食べておかなければ、いつ食べれるかわからないではないか」
ルナがそう答えながら、早速プリンを取り出していた。
あ、飲み物を買っていなかった。
俺はアイテムボックスからコーヒーを取り出そうとした。
!!
そうだった。
アイテムボックスは貴重な能力らしい。
見せない方がいいと言われていたな。
そう思って俺の紙袋に手を入れてコーヒーを取り出す。
「ルナさん、どうぞ」
俺はルナにコーヒーを差し出した。
「おぉ、テツ、気が利くな。 うむ・・それよりもこのプリン。 スッと口に入って溶けていく。 甘すぎずいい口当たりだ。 うまいな・・」
ルナはすでに食べていた。
俺もコーヒーをテーブルに置き、紙袋から白いモチモチしたパンを取り出す。
美味しそうに見えたからな。
俺はパンを半分に割って、半分をルナに差し出してみた。
「ルナさんもどうぞ」
ルナがプリンを食べる手を止めて、少し目を大きくする。
「いいのか? テツが買ったものだろう」
「どうぞ」
俺はそう言って半分のパンを手渡した。
残りの半分をかじってみる。
!
おいしい。
肉まん風だが、蒸しパンではない。
白いパンだ。
しかもモチモチとしている。
中にホイップクリームみたいなのが入っている。
これがまたおいしい。
バターのように溶けたりはしないが、口の中でモグモグすると知らない間になくなっている。
モチモチの歯ごたえはあるのだが、すぐにちょうどよい感覚で固形物が無くなっていく。
いくらでも食べられる感じだ。
後でいっぱい購入しておこう。
そう思いながら、コーヒーを飲む。
ブフォ・・!!
「ゴホ、ゴホ・・ルナさん、いったいどれだけ食べたのですか?」
俺が少しパンを食べている間に、プリンのカップが山積みになっていた。
「・・モグモグ・・うむ。 食べても食べても口の中で溶けていくのでな」
ルナがそう言いながら、おそらく最後の1個だろう、プリンを食べていた。
ルナは食べきったプリンのカップを箱に入れ、マカロンの入った紙袋を開ける。
・・・
俺は言葉が出ない。
俺が1個のパンを食べる間に、このプリンを全部食べたのか?
アホだろう。
それでまだマカロンを食べるのか?
見ているだけで胸が焼けてくる。
ルナはうれしそうにマカロンを手に取り、満面の笑みで口に運んでいた。
「う~ん!! うまいなぁ」
ルナのつぶやきが聞こえる。
こりゃ、すぐに無くなるな。
俺はそう思いながら、ルナを見ている。
予想通り、すぐにマカロンも無くなり最後にコーヒーを飲んでいた。
「さて、行くか」
ルナが言う。
え?
どこへ行くのだっけ?
俺は一瞬呆けていたが、すぐに思い出した。
ギルドへ行くのだった。
「どうしたのだ、テツ? 行くぞ」
ルナはそう言って席を立つ。
ルナさん、あんたに引いているんだ。
心の声です、はい。
ルナは歩きながら言う。
「テツよ、あのお店はなかなか良かったな。 また行こう」
「はい」
俺も返事をしながら苦笑する。
さて、ギルドだが、どこにあるのやら?
ま、誰かに聞けばわかるだろう。
そう思って辺りを見る。
結構な人数が歩いている。
パッと目に入った人をターゲットにして声を掛ける。
「あの、すみません」
俺が声を掛けると、顔をこちらに向けてくれた。
若い男の人だ。
なかなかのイケメンだな。
「はい、何か?」
おぉ、美声じゃないか。
「俺たち、今この街に着いたのですが、ギルドへ行こうと思っているのです。 その・・ギルドの場所がわからないので、声を掛けさせてもらいました」
俺がそういうと、若い男は微笑みながら答える。
「なるほど。 私は今ギルドへ行って来たところですが、歩いてもすぐにわかります。 ご案内してあげたいところですが、仲間が待っていますので場所をお教えしますね」
若い男はとても丁寧に応対してくれた。
最後まで笑顔を絶やすことなく接してくれて、ルナにも丁寧に応対している。
慣れているな。
そんな感じだ。
だが、その雰囲気から傲慢さは微塵も感じない。
なんて好青年なんだ。
俺はそう思ってしまった。
俺はお礼を言って若い男を見送る。
あ、名前を聞くのを忘れた。
ま、いっか。
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