39 最長老のところの影
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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テツたちが16階層のボス扉に入ったのを見送ったパーティ。
「リーダー、あの神殿騎士たちは大丈夫なんでしょうか?」
パーティの1人が聞く。
「さぁな、わからないが、転移石を持っているという。 危なくなったら外へ出られるから命を失うことはないだろう」
リーダーがそう答えると、違うメンバーが言う。
「神殿騎士って、それほど金持ちが多いのかね? 転移石なんて滅多に手に入る代物じゃないし・・」
「わからないな。 もしかして神殿騎士には付与されるのかもしれないな」
「いいよなぁ・・俺たちも早くレベルアップして金持ちになりたいよ」
「そうだよなぁ・・」
「リーダー、見ましたか? あの黒髪女の顔・・無茶苦茶美人でしたよ」
「あぁ、あまりに美人過ぎて声をかけれなかったよ」
「・・ったく、男はいつもこれね」
「い、いや、そういうわけじゃないんだ・・」
「じゃあ、どういうわけよ」
どこでもルナを見ると同じような反応のようだ。
・・・
みんなで顔を見合わせ乾いた笑い声が響く。
「「あははは・・・はぁ・・」」
すぐに笑いは収まり、みんなでため息をつき、扉を見つめていた。
◇
<テツたち>
俺とルナは16階層のボス部屋の中にいる。
大きな空間が広がっているが、上空に何かいる。
索敵・・ピピ・・。
ガーゴイル:レベル16×5、オーク:レベル15×6、オーガ:レベル18×3、後は雑魚っぽい魔物がいた。
「ルナさん、雑魚がいっぱいいます」
俺が前に出ようとするとルナが言う。
「うむ。 ワシが片づけてやろう。 食後の運動だな」
ルナが右手の人差し指を立てる。
指先に小さな黒い炎が揺らめく。
ルナがピッと指を前に倒すと、黒い炎がスーッと前方へ動いて行く。
・・・
見えなくなったと思ったら、黒い大きな球体の膜のようなものが広がり、一気に黒い炎が広がった。
ゴァ!!
ドォォォーーーーーン!!!
・・・
俺には言葉がない。
一瞬だ。
まさに一瞬の出来事だった。
索敵をしてみる。
・・・
何の反応もない。
すべての魔物が、あの小さな黒い炎で消えたのだ。
まぁ、レベル15程度の魔物だからそんなものだろう。
だが、ルナも1/10の分身体だ。
俺の生命エネルギーを吸収して、少し基礎レベルが上がったとはいえ(元々が相当なものだが)、目の前の現象をみると引くぞ。
「さて、こんなものだろう。 テツ、行くか」
ルナは何事もなかったように言う。
「はい」
俺も素直に答え、ルナと一緒に次の階層へ向かって行った。
◇◇
ダンジョンのテツたちを尾行している影がいた。
最長老のところの影だ。
テツたちの後を追っていた。
影は20階層までは進んだことはあった。
だからその階層まではいつでも飛ぶことができる。
テツたちを追っていて、初めは何も思わずに遠くで見ていた。
だが、10階層を超えてもテツたちの進行速度に変化がない。
初めから同じ速度で進んで行く。
ボスの部屋に入っても、まるで歩いて通過するように次のエリアへ移動しているようだ。
影は20階層で待つことにした。
影の計算では、ここまで来るのに早くても3時間くらいを考えていた。
15階層を超えるとレベルの高い魔物が現れる。
ボス級の魔物が普通のエリアに出現するため、それらを倒してボスまで挑むとなると、時間がかかるだろうと思っていた。
だが、驚いたことに1時間もかからずに20階層に現れた。
まさか今までにこのダンジョンに来たことがあるのか?
いや、そんなはずはない。
早すぎる。
いったい何だと言うのだ。
影は息を殺し、気配を消し、テツたちに気づかれないように隠れていた。
無論テツたちは気づいていたが、ソロ攻略者だろうと思って気づかない振りをしていた。
影は急いで戻って報告せねばなるまいと思っていた。
三巨頭の影にも知らせてやらねばいけないだろう。
そう思い、テツたちが20階層の入口からエリアの中央へ移動するのを確認し、即座に地上へと戻って行った。
◇◇
<テツ視点>
ダンジョン20階層。
俺たちは何の障害もなく散歩気分だ。
俺はエリアに来るとまず索敵をしてみる。
ピピピ・・
なるほど、レベル20~23程度の魔物がいるな。
ん?
人がいるぞ・・1人か。
この階層をソロで攻めてるなんて、やるなぁ。
そっと気づかないようにしておいてやろう。
俺はそう思うと、ルナと一緒に歩いて行く。
「テツよ、何か休憩したい気分だな」
ルナがつぶやく。
・・・
俺は聞こえない振りをする。
どうせ、スイーツを出せだろう。
「テツ、ワシのいい方が悪かった。 ティータイムだ、スイーツを出せ」
俺は歩く足を止めた。
何て、どストレートに言うんだ。
反対に気持ちいい。
「わかりました、ルナさん」
俺も思わず返事をしてしまった。
アイテムボックスからまずは飲みものを出す。
常にコーヒーは入っている。
ルナと俺のカップを取り出して、コーヒーを注ぐ。
次にシュークリームを出した。
このシュークリームはスーパーエイトのものではない。
専門店のものだ。
魔物が溢れたときにも、生き残っていたお店だ。
和菓子屋だが、この店のシュークリームがとてもおいしい。
中のカスタードと生クリームホイップもおいしいが、皮がしっとりとして食べやすい。
それに、皮の上の部分だけが少し甘くなっている。
1つ1つ包装してくれているので、保管もしやすい。
たっぷりと買い込んである。
それを3つほどルナに出してみた。
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