35 三巨頭
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さすがにルナもわかっているようだ。
神殿の宿泊所なんて完全に監視対象だろう。
俺たちは丸裸だ。
「ルナさん、身体は調子いいですか?」
俺は声に出して聞いてみた。
あまり黙ったままでいても怪しい。
「うむ、問題ないぞ」
「それよりも、光の巫女ってどこへ行ったのでしょうね」
俺がそういうと、ルナがプッと少し笑ったような感じがしたが、すぐに収まる。
「さぁな、とにかくいろいろと場所を回って情報を集めなければいけないだろうな」
そんな他愛ない会話を俺たちはしていた。
◇◇
<魔術都市バナヘイムの神官長の部屋>
ゆったりと座れる椅子に深く腰掛ける神官長がいる。
前の机の上にパネルボードのようなものがある。
テツとルナが写っていた。
テツたちの様子を見ていたようだ。
「ふむ・・特に変な感じはないようですね。 本当にダンジョンから飛ばされただけのようです。 しかし、光の巫女の行方がこれほどわからないとは・・実は既に存在しなくなってしまったのでは・・いや、それにしては安定していますし・・不思議です」
ナナバがそうつぶやくと、パネルの画面がパッと変わった。
ナナバはすぐに反応し、椅子に座ったまま姿勢を正している。
「ナナバよ、神殿騎士が到着したようだが、どんな感じだ?」
「はい、特に変わったような感じは見えません。 神殿都市からの情報では夜の王の使徒と龍神族の眷属ということでしたが、全然そんな感じには見えません。 それに強い魔素も感じないのですが・・」
ナナバは答える。
「そうか。 とにかく監視の目を怠るな。 また連絡を入れる」
パネルにはフードを被った3人がぼんやりと映っていた。
魔術都市の三巨頭だ。
パネルが消えるとナナバがふぅと息を吐き、くつろいでいた。
いきなり三巨頭からのメッセージが入るとは思ってもいなかった。
まぁ報告するタイミングでもあったことだから良しとしよう。
さて、神殿騎士たちも今日は動くこともないだろう。
ナナバはそう考えると席を立ち、部屋を出て行こうとした。
突然消えたパネルから呼び出しがあった。
ナナバは急いでパネルを見て、発信元を確認。
「な! さ、最長老様・・」
ナナバは急いでパネルをオンにする。
「はい、ナナバでございます、最長老様」
ナナバが緊張しているようだ。
「ナナバか、ご苦労」
「はい。 最長老様、いかがされましたか?」
「うむ。 今、その都市に神殿騎士が来ておるようだな」
「はい。 ただいま宿泊施設にて休んでおります」
「そうか。 ナナバ、お前が見てどのような感じだった?」
最長老の声だけが聞こえる。
「はい。 私個人の見解ですが、ブレイザブリクの神官長の言うような夜の使徒とか龍神族の眷属という威圧は感じませんでした」
「ふむ・・そうか。 引き続き監視の目を怠らないようにしてくれ」
「はい、心得ております」
ナナバがそう答えると、パネルの反応は消えていた。
ふぅ・・今日は妙に疲れる。
ナナバは部屋を後にした。
◇◇
<三巨頭の部屋>
「インパよ、どう思う?」
ドウブが聞く。
「ドウブ、どう思うとは抽象的だな」
インパが答える。
「今、魔術都市にいる神殿騎士だが、夜の王の使徒と龍神族の眷属という話だ」
ドウブが聞いている。
「フフ・・間違えたのですよ」
シーナが声を出す。
「シーナ、何か証拠でもあるのか?」
ドウブがシーナの方を向く。
「いえ、そういうわけではありません。 ですが、我々も彼らがこの街に来たときに威圧感を感じましたか? もし、それほどの能力者ならば、隠そうとしても隠せはしないでしょう」
シーナが答える。
「なるほど・・シーナの言う通り、何も感じなかったな。 だが、神殿都市の測定器が間違えているとも思えない」
インパが言う。
「何か突出した数値が出たために驚いたのではないのですか? それにイザベルの神官長が裏切ったという話もあります」
シーナがそう言うと、皆も変に納得しているような感じだ。
「そうだったな。 おかげでこちらの注目度も減るというわけだ」
インパが笑いながら答える。
「さて、我が都市に来ている神殿騎士たちを少しもてなそうではないか」
ドウブが椅子に深く座り直しながら言ってみる。
「そうだな。 ダンジョンへ招待すればよいだろう。 不幸な事故が起きたとしても問題はない」
インパが微笑みながら言う。
「不幸な事故ですか・・インパもよく言う」
シーナも笑いながら発言していた。
「シーナよ、我々の地下魔法陣のファイブスターだけでも十分すぎる魔素量だ。 仮に光の巫女がいなくても問題はない」
「インパの言う通りだな」
ドウブが答え、続けて言う。
「最長老殿は光の巫女をもって、人族全体のことを考えておられるようだが、そんな巨大魔法陣を維持できるはずもない」
「ドウブの言う通りだ。 歳を重ね過ぎて大きさがわからないのかもしれぬ。 既に我らの方が上位魔法を行使できるしな」
「インパ、地下神殿もそうだが、この都市に配置してある5つの要石、無事に機能しているのだろうか?」
「さぁな、まだ設置してそれほど時間も経過しておらぬだろう。 ただ魔素の流入は始まっているようだがな」
「さて、神殿騎士をどこで接待しようか」
「ダンジョンの25階層辺りでいいだろう。 我々もあそこなら力を十分に発揮できる」
「そうだな、ではダンジョンへ誘導するように指示しておくか」
三巨頭は密談が終了すると、ゆっくりと席を立ち部屋を後にする。
ファイブスター魔法陣:バナヘイムの地下、都市全体を大きな魔法陣として星型に5つの要石を設置している。
この都市だけで、独自で魔素をコントロールしてゆこうという計画だ。
◇◇
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