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33 よく食べますね

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



ギルドを出てから俺達をつけてきている連中がいる。

一定の距離を保っていた。

間もなく食べ物街に入るのだろう。

街の雰囲気が少し変わってくる。


尾行者は距離を詰めるでもなくついてきている。

まぁ、危害を加える気がないのなら放置でいいだろう。

ルナに言う必要もない。

俺はそう思い、食べ物街に入って行く。

完全に街の雰囲気が変わる。

青山の表参道の通りのようだ。

ただ、道路に車はない。

石畳の両脇におしゃれなカフェっぽいお店が並んでいる。

ガラス張りだろうか、どのお店もきれいな感じだ。

「ルナさん、どのお店がいいですか?」

「ふむ・・あの店がよさそうだな」

ルナがお店を指さす。


石造りの階段が入り口の横から半螺旋を描いて上に向かっているお店があった。

2階のテラスでも食べれるのだろう。

1階の入口はそれほど広くはないが、オープンカフェのようなものも設置していた。

お店に近寄って行くとわかった。

何故ルナがこのお店を選んだか。

入り口のところに色とりどりの一口サイズのケーキが並んでいた。

どれもおいしそうだ。

パッと見ただけも30種類くらいはあるんじゃないか?

入り口から奥にはカウンターが縦に並んでいる。

そのカウンターはいろんな食材で間地切られていた。


なるほど、自分で食材を選びながらバイキング方式でチョイスして持って行くんだな。

俺はそう思いながら、入り口でトレーを取りお店の中へ入って行く。

「いらっしゃいませ~」

お店の入り口でかわいらしい女の子が出迎えてくれた。


ルナがジッと入り口のケーキを見つめている。

入り口の女の子の笑顔がだんだん引きつってきていた。

そりゃ、他のお客さんの邪魔だからな。

「ルナさん、どのケーキにするんですか?」

一応聞いてみる。

「うむ、全部だな」

「は?」

「全部だ」

ルナが当たり前のように答える。

もはや何も言うまい。

俺は入り口にいる女の子に言う。

「あの、ここに展示してあるケーキって呼んでいいのか・・全種類をいただけます?」

「ぜ、全部ですか? それは構いませんが・・」

女の子が驚きながらも、テキパキと処理してくれる。

「後でテーブルまでお運びしますから、先にどうぞ」

女の子が言う。

「ルナさん、行きましょう」

俺がそう言ってみたが、ルナはなおもケーキのボックスを見つめている。

「ルナさん!」

俺は片手でルナを引っ張り、店の奥へと進む。

子供か!


なんでこんなに精神的に疲れるのだろう?

俺はそう思いつつ、カウンターにいる店員に食材を注文してゆっくりと移動して行く。

店員が俺のトレーに食材をそれぞれ乗っけてくれる。

バンバンジーのようなものと、野菜炒めのようなもの。

赤いトマトで煮たような肉とサラダなどを入れてもらった。

全部見た目で判断。

何せ、ゆっくりと選べない。

ルナはケーキのことで頭がいっぱいのようだから。

カウンターを進んで行くと、会計がある。

ライセンスカードを提示して清算をする。

神殿騎士のライセンスカードを見ると、店員は少し驚いていたようだがスムースに処理も終わり、案内されて俺たちは席についた。

同時にルナのケーキも運ばれてくる。

お皿が5つに分けられて、すべてケーキが乗っていた。

・・・

俺は言葉が出ない。

後、飲み物は席で注文できるようだった。

取りあえず、お店のオススメを注文。


店員が注文を聞いて席を離れるのを待つことなく、ルナがパクパクとケーキを食べ始める。

とてもうれしそうだ。

凛が喜んでいるような感じだ。

「ルナさん、まだまだいっぱいありますし、また取りに行けばいいんですから」

俺は取りあえず声をかけてみる。

「モグモグ・・おぉ、そうだな・・うまいな・・うん。 こっちもおいしいぞ・・モグモグ・・」

聞いてないな。

いったいこの人は・・甘いもので身体ができているんじゃないだろうな。

確かエネルギー供給源はライフドレインのはずだ。

それにダンジョン管理者になって、食事がなくても大丈夫って言ってなかったか?


この食欲。

凄いな。

俺はそんなことを思いながら、自分の食事を進めて行く。

俺たちを尾行していたと思われる連中も、店の2階でいるようだった。

接触してくるわけでもなく、単なる監視なのだろうか。

まぁ気になり過ぎる距離でもないし、とりあえずは腹ごしらえだ。

見た目で選んだ食事だが、想像通りの、いやそれ以上のおいしさだった。

肉は濃いトマトで煮詰めたような甘さだ。

バンバンジー風の食べ物も、さっぱりとした肉とシャキシャキとした野菜で、とても食べやすい。

おいしい。

飲み物は炭酸系の飲み物を持ってきてくれていた。

これがまたシュワーッとしてさっぱりとさせてくれる。

すると、ルナが席を立ちまた入り口付近に向かって行っている。

マジか?

まだ食べる気か?


俺は自分の席からルナを見ている。

入り口のところで何やら話していると思ったら、ルナはそのまま手ぶらで帰って来る。

カウンターの最後のところで会計を済ませていた。

テーブルの席について俺に話しかけてくる。

「テツよ、ここのスイーツは絶品だな。 特においしかったものを全部持ってきてもらうように言ってみたぞ」

ルナはご機嫌のようだ。

・・・

何も言うまい。

俺はうなずきながら、自分の食べ物を食べている。

「テツよ、おとなしいな。 おいしいのか?」

「・・おいしいですよ」

「そうか。 食事は楽しまなければいけないぞ」

ルナがにっこりとしながら言う。


そりゃわかってますよ。

俺も同じようににっこりと笑顔を返し、自分のを食べる。

スイーツも少し取っていたので食べてみるが、確かにおいしい。

「ルナさん、このスイーツ、おいしいですね」

「そうだろう」

ルナが喜んでいる。

すると、ルナのところにまたもや5皿に盛り付けたケーキが運ばれてきた。

今度は1皿に同じ種類がいっぱい乗っている。

ルナはうれしそうに全部を眺め、食べ始める。

一口食べてはうなずき、また次から次へとパクパク食べていく。

ある意味、凄いな。


ルナも満足したのか、ふぅと一言、話しかけてきた。

「テツよ、もう食べられないな。 で、これからどうするつもりだ?」

そりゃ食べられないだろう。

いったいどれだけ食べたんだ?

俺はそう思いつつも答える。

「はい、次は神殿に行ってみたいと思います」

「なるほど・・そうなるな」

ルナはあれだけ食べたのに、身体の変化は全くない。

苦しそうでもない。

「前の街のような魔法陣はどこかにあるだろう。 その機能を無くしてしまえばいいわけだが、この街に来る途中にも2つくらいの場所はあったように思うぞ」

「そうなんですか? 俺、寝てましたから・・」

俺は少し驚きつつ答える。

ルナも寝てたよな?

「うむ。 テツよ、お前ワシが寝てばかりいると思っているのではあるまいな。 周辺を探っておるのだ。 たまにそのまま寝てしまう時があるがな」

ルナが淡々と言う。

「そうだったのですか・・」

俺は驚きつつも、あの目を閉じている姿からは想像できない。

でも、ルナがそういうのだから事実なのだろう。

この人、なんだかんだ言っているが、一度も嘘は言ったことがない。

それに信じられる人だ。

それは間違いない。

・・と思う。


「さて、神殿に向かうか」

ルナが言う。

なんかルナが船頭みたいだな。

俺もうなずいて席を立ち、店を出る。

俺たちが店を出ると、やはり尾行者らしい連中がついて来ていた。

ルナは周辺の店をキョロキョロと見ている。

「おぉ、あの店もよさそうだな。 こちらもいいぞ」

確かにおいしそうな店がいっぱいだ。

するとルナがパッと走り出した。


俺以外なら瞬間移動したように見えたんじゃないか?

きれいなガラス張りのような店の前に来ている。

スイーツだらけのカフェのようだ。

先程の食べたところとはまた違う一口サイズのケーキが並んでいた。

「ルナさん、後でまた寄りましょう。 今食べたばかりじゃないですか」

俺はそう声をかける。

・・・

ルナは動かない。

完全に目が釘付くぎづけだ。


しかし、食べたばかりだしとりあえず神殿に行ってみなければわからない。

「ルナさん、神殿に行きますよ」

・・・

ルナの返事はない。

仕方ない。

「ではルナさん、俺だけでも行ってきますね。 ここら辺りでゆっくりとしておいてください」

俺はそう言って移動しようとすると、ルナが並んだケーキを見ながら言う。

「テツ、お主は魔法陣の無効化の仕方がわかるのか?」

「・・・」

そりゃそうだ。

わかるはずがない。

使用不能に破壊するしかできないが、それでも大丈夫じゃないのか?

「今、お主は魔法陣を破壊すればいいと思っているだろう。 確かにそうだが、かなめの柱などを破壊すれば、それを支えとしている部分も壊滅する。 もしこの街の地下にあるのなら、この街も崩壊することになる」

ルナが説明してくれる。

この人、きちんと聞こえていたんだな。

「そ、そうなのですか。 破壊すればいいわけではないのですね」

俺はそう答えながら思った。

「ではルナさん、もし俺が魔法陣を破壊してしまえば、このスイーツが食べられなくなりますね」

俺がそう言うと、ルナがバッと俺の方を向く。

目は真剣な眼差しになっている。

「それは困る!」


なんか元気になってないか?

「よし、神殿へ行こう」

ルナはパッと気持ちを切り替えてサクッと言う。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

よろしければ、ブックマークなど応援尾根委がします。


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