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32 ギルマスっていい人だな

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



バジリスク程度ですらなかなか攻略できないレベルの世界ですよ。

いくら何でもありえないでしょ。

せめてレベル30くらいの魔石じゃなきゃ。


俺が慌てて魔石を取ろうとすると、受付の女の人が不思議そうな顔で俺たちを見ていた。

「お客様、この魔石とおっしゃる石ですが、私の知る限り見たことがありません。 こちらで買い取れるかどうかわかりませんので、鑑定していただくことになりますが、よろしいですか?」

受付の女の人は言う。

すると、パッと受付の女の人をルナが見る。

「女、見てわからんのか? この魔石はミノタウロ・・」

ルナがそう言う途中で、俺がルナの口を塞ぐ。

「あ、すみません。 魔石を間違えました。 こ、こっちです」

俺はそう言ってゴーレムの魔石を出す。

ミノタウロスの魔石は交換して引っ込めた。


「ルナさん、いくら何でもダメでしょう」

「は? 何を言っておるテツよ。 たかがミノタウロスではないか。 それすらわからんとは・・」

「いや違うのです。 あのイザベルのダンジョンで思ったのです。 この世界のレベルは地上とはかなり違うと・・」

俺とルナが小さな声でやり取りしていると、受付の女の人が震えながらこちらを向いている。

「お、お、お客様・・この魔石ですが、いったいどこで手に入れたものでしょうか? こんな貴重なもの・・私も1度くらいしか見たことがありません。 確かゴーレムの魔石ですよね? 少し鑑定させてもらってもよろしいですか?」

受付の女の人はそう言うと、奥へと移動した。

受付の女の人の声が、近くの冒険者たちに聞こえたらしい。

なるほど、遮音壁の中にいたのか。

俺はその言葉を背中で受ける。


「おい、ゴーレムだってよ・・」

「マジか? そんなヤバい代物いったいどこで・・」

「本物か?」

「あの黒髪の美人とヤサ男のパーティ・・」

「どこかから盗んで来たんじゃないのか?」

「お前、盗むといってもゴーレムだぞ、俺なんて見たこともない・・」

「俺もない・・」

声が広がってゆき、ギルド内がザワザワしていた。


これってヤバいんじゃないか?

注目を集めるのは苦手なんだがな。

もっと低レベルの魔石を出せばよかったのか?

俺はそう思いながらジッと受付の女の人が帰って来るまで待っていた。


まさかゴーレムでこんな反応になるとは思ってもみなかった。

ミノタウロスの魔石なんて出さなくて良かったよ。

いったいどうなっていたことか。

受付の女の人が帰って来た。

もう一人、それほど年配でもないが、渋い感じのおっさんが一緒に現れた。

俺たちの後ろの方から、ギルマスだ! なんて言葉が飛び交う。

「君たちがこの魔石を持ってきたそうだが・・少し話を聞かせてもらってもいいだろうか?」

ギルマスが真剣な顔で俺たちを見る。

俺はうなずく。

チラっとルナを見ると、ルナは自分の手の爪を見つめていた。

「ルナさん、ギルマスがああ言ってますが・・」

「ん? 何でもいいぞ」

ルナは全く聞いていないようだ。

この女は・・。


「ギルドマスターですよね? よろしくお願いします」

俺がそう答えると、ギルマスはうなずいく。

「こちらに来てくれ」

ギルマスが俺たちを奥の部屋へと案内してくれる。

部屋に入り、ギルマスが椅子に座るように勧めてくれた。

俺とルナは遠慮なく座る。

その後でギルマスも俺たちに向かい合うように座った。

真剣な目つきをして話してくる。

「君たちは神殿騎士ということだから、何か特殊な能力者というのはわかる。 だが、君たちが提示した魔石はゴーレムだ。 私も実物を見るのは数えるくらいしかない。 それをパッと受付に出したとか・・いやはや、一言で言えば常識がないと言われても仕方がない」

ギルマスが首を振り、やれやれという感じで話す。

俺たちは黙って聞いている。

「それで、鑑定してみたがレベル31の魔石だと判明し、本物だということもわかった。 それほどの魔物になれば偽物も平気で持ってくる輩もいるからね」

ギルマスは話を続けながら俺たちを見つめる。

「・・聞きたいのだが、どうやって手に入れたのだ?」

ギルマスは明らかに不審な目つきだ。

俺たちを疑っているのだろう。

俺がどうしようかと思っていると、ルナが軽く答える。

「そんなの決まっておろう。 倒したのだ」

!!

俺とギルマスが同時にルナを見る。


この女何言ってるんだ?

俺がそう思うと同時にギルマスが口を開く。

「な・・倒しただって? 冗談はよしてくれ。 いったいどれほどのパーティを組んで挑まなきゃいけないと思っているんだ。 しかもS級レベルの冒険者でパーティを組んで挑むレベルだぞ。 それにそんな討伐話は、俺がこのバナヘイムのギルドマスターになってから聞いたことがない。 バナヘイムの三巨頭ですら難しいかもしれない魔物だ」

ギルマスが笑っているのか、怒っているのかわからないが、とにかく声を少し大きくしながら話している。

ルナは一言しゃべるとギルマスの言うことなど聞いていないようだ。

三巨頭ってなんだ? 

俺はそんなことを思いながら、ギルマスに話してみた。

「そ、そうなのですか? ギルドマスター、我々の言い方が悪かったのかもしれません。 ですが、本当に不正なルートで入手したものではないのです。 まぁ倒したと言っても信じてもらえないかもしれませんが、とにかく手に入れたのは事実です。 もしかして、運よく魔物が弱っていたのかもしれません」

俺はパッと思いつくままに話してみた。

かなり苦しい言い訳のように思うが。

しかし、ルナの言葉は俺の神経をすり減らすよな。


ギルマスが腕を組んで考えている。

「う~ん・・そうか。 確かにな・・ゴーレムが弱っていれば、倒せないこともないかもしれない。 それに魔石が盗まれたという情報も入っていない。 なるほど・・」

ギルマスが言う。

おい、あんた信じたのか?

俺の方が驚く。

「ギルドマスター、少し聞きたいのですが三巨頭って何ですか?」

「何? 知らないのか、君たちは神殿騎士だろう。 はぁ・・まぁいい、このバナヘイムを統括する指導者たちだよ。 この魔術都市には王族はいない。 総督府が設置されていて、その最高指揮の三席に座る人達を三巨頭と呼んでいるんだ。 最高レベルの魔術を行使する大魔法使いだ」

ギルドマスターが説明してくれる。

・・・

・・

俺たちはいろいろ話して、何とかギルマスの不審だけはぬぐうことができたようだ。

ギルマスとの話の途中、ルナが暇なのか、余計な爆弾発言をするので俺がアイテムボックスからシュークリームを取り出して食べさせた。

ルナは大喜びで食べ、静かになる。

ギルマスが俺のアイテムボックスを見て驚いていた。

素養が必要な能力のようだ。

とにかくこの世界では珍しい部類の能力だという。

ギルマスが言うには、あまり人のいるところでは見せない方がいいと念を押された。

いい人だな、ギルマス。


とにかく何とか無事にギルマスの話も終わり、ゴーレムの魔石は売ることができることになった。

おそらく、この世界での大金だろうということはわかる。

全額を一気に払うことはできないから、3分割で払わせてくれということだ。

総額3億ギル。

大体レベル20くらいの魔石でかなりの時間食べて行けるそうだ。

あのミノタウロスの魔石を鑑定してもらわなくて良かったよ。

俺はそう思った。

ルナはどこ吹く風で、ただスイーツを食べていた。

お金は帝都のシステムと同じく、ライセンスカードに振り込まれるようだ。

神殿騎士のライセンスカードにお金を入れてもらう。


ギルマスに見送られながら、ギルドのフロアに出て来た。

人が結構増えている。

受付の女の人が事務処理をしているようだ。

先ほどのお礼を言ってから、どこかおいしいものを食べられる場所はないかを聞いてみた。

「それでしたら、このギルドを出てまっすぐに道なりに歩くと食べ物街があります。 どのお店もおいしいですよ」

受付の女の子はにっこりと微笑んで紹介してくれた。

俺はお礼を言ってルナを見る。

「ルナさん、何か食べませんか? そろそろお腹も空いてきたのではないですか?」

「おぉ、テツよ気が利くな。 何かおいしいものを少し食べたいぞ」

ルナが答える。

「少し?」

俺が言葉をつぶやくと、ルナが言う。

「前にも言っただろう。 ライフドレインでエネルギーは確保できるし、ダンジョンからも供給されておる。 ただ食べられないわけではないのだ。 だからこそ美味しいものだけを味わえればいいのだ」

ルナが得意げにしゃべる。


俺たちはギルドを出て、受付の女の人が教えてくれた通りに道を歩いて行く。

・・・

尾行?

後ろからついてくる人がいる。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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