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29 チャームって怖いな

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



俺たちは隠し通路から、神官長の所へ戻って行く。

神官長が出迎えてくれた。

この人、本当にルナさんの言う通り、ここで待っていたんだな。

・・チャームって、怖いな。

俺はそう思って見ていた。


「神官長、ご苦労だったな。 ワシたちの作業は終了した。 さて、お主の記憶を少し変えて、チャームを解こう」

ルナがそうつぶやきながら神官長へと手を伸ばしていく。

「ルナ様、そんなもったいない。 私はあなた様の下僕で大満足でございます」

神官長が急いで言葉を発する。

どうやらチャームには、主人に対する忠誠心が増せば増すほど、多幸感たこうかんが得られるようだ。

麻薬みたいだな。

ルナはそんな神官長の言うことなどお構いなく、相手の頭に手をかざす。

「あぁ、ルナ様・・」

神官長の目が懇願する犬のようになっていた。

あわれだな・・俺はそう思いながら見ている。


ルナの術はすぐに終わり、俺たちは神官長の前で座っていた。

キラキラとルナを見ていた神官長の目が普通の状態に戻り、落ち着いた目線で俺たちを見る。

「さて、ルナ様、テツ様。 この神殿のご案内させていただきましたが、いかがでしたか?」

「うむ、よい神殿であったぞ」

ルナが答える。

どうやら、俺たちは神殿の中を案内してもらったことになっているらしい。

「そうですか。 それは何よりです。 で、これからどうされるおつもりですか?」

神官長は聞く。

「うむ。 ワシらは旅をしているのだ。 次の都市へと向かおうかと思っている」

「なるほど、ごもっともです。 それでしたら、輸送車で移動されると落ち着いて移動できると思います。 魔術都市と武装都市、どちらも似たような距離にありますが、お勧めは魔術都市でございましょうか」

神官長は営業スマイルだ。

「そうか。 途中に立ち寄りたい場所もあるのでな」

「なるほど・・輸送車も小さな街を経由いたしますので、途中で下車されたりするとよろしいかと思われます」

「うむ。 神官長、いろいろ世話になったな。 礼を言う」

ルナが相変わらず上から目線で話す。

「いえいえ、滅相もない。 我ら神官、使徒様と龍神族の眷属様のお力になれたのでしたら、これほどの名誉はございません。 今後ともよろしくお願いします」

神官長が深々と頭を下げる。

神官長・・やっぱあんた職業間違えてるよ。

俺はそう思う。


俺達は神官長に見送られながら、輸送車の停車場へ向かって行く。

俺は歩きながら、気になっていた。

これからの神官長のことだ。

情報操作で、俺たちの仕事の記憶はない。

それに、ブレイザブリクの神殿に向かったやつの情報で、これからどうなるのか?

ルナにはいろんな考えがあるのだろうと思っていたが、それでも気になる。

聞いてみた。

「ルナさん、あの神官長・・これからどうなるのでしょうか?」

ルナは少し歩いて答える。

「知らんな。 ただ、面白くなるのは間違いない」

ルナはそう言いながら笑っている。

・・悪魔だな。

俺は心の中でつぶやく。

輸送車の発着場が見えて来た。


◇◇


<ブレイザブリクの神殿>


神官長マグニが、イザベルからの使者の報告を聞いていた。

席を立ち、窓際へ向かい少し考えているようだ。

ゆっくりと振り向き、ルナのチャーム下にある使者の前に座る。

「・・何度考えても信じられません。 あのフォルセティが裏切ったというのですか。 どれだけの年月をかけて今の状態を築いたと思っているのでしょう。 いや、だからこそというべきでしょうか。 イザベルの街は巨大魔法陣の中心となる場所です。 う~む・・」

マグニがそうつぶやきながら、使者が待機しているのを思い出した。

「おっと、これは失礼しました。 報告ご苦労様でした。 引き続き、フォルセティの監視をお願いします」

「はい、神官長様」

若い男はそう言うと、マグニの部屋を出て行く。

その背中を見送りながらマグニは考えていた。


今はまだ泳がせておく方がいいでしょう。

まさかフォルセティが裏切るとは思ってもいませんでした。

だからこそ裏切ることができたのかもしれません。

これは私が甘かったようです。

確かに神殿騎士の動きが不自然でした。

ダンジョンへ向かったといって、消息が分からなくなっていた。

だが、無事に帰還。

何らかの情報を得ているのは間違いないでしょう。


フォルセティ・・いったい何を企んでいるのか。

神官たちを敵に回して得られるものなどあるのだろうか。

マグニは考えていたが、良い回答が浮かぶわけでもない。

取りあえずは経過観察と言ったところだと結論づけた。


◇◇


<輸送車の中>


俺とルナは輸送車の中でくつろいでいた。

魔術都市へと向かっている。

輸送車の中は、それほど混雑してるわけではない。


ルナは椅子に座ると、すぐに眠ってしまった。

俺も目を閉じて、うつらうつらとしている。

席は一人の空間が確保されるように設定されていて、隣の人が気になることはない。

ただ、声などは聞こえてくる。

「・・知ってるか? イザベルのダンジョンレベルが上がったようだってよ」

「あぁ、知ってる。 かなり魔物のレベルが上がったようだな」

「俺も見てきたが、10階くらいでやめたよ」

「そんなにか?」

「・・そうなんだよ、俺もだよ。 いったい何が起こったんだ?」

「まぁ、いいじゃないか。 ダンジョンはイザベルだけじゃない」

「そりゃそうだが、魔術都市のダンジョンは30階層しかないからな」

「あはは・・30階層しかないって、お前どこまで行ったんだよ」

「そうだよなぁ・・どの都市のダンジョンもS級の冒険者でもクリアしてないからな」

「当たり前だ。 ダンジョンはクリアするためのものじゃない。 生活のためのものだ」

「「あのなぁ・・」」

・・・

・・

冒険者だろうか。

いろんな会話が聞こえてきていた。

俺はそれを聞いていると、どうやら眠ってしまっていたようだ。


周りがザワザワする雰囲気で俺は目が覚めた。

ゆっくりと目を開けると、人が移動している。

どうやら魔術国家に到着したようだ。

俺は椅子から立ち上がり、周りを見渡す。

人が降車口に向かっていた。

ルナは、椅子に持たれたまま眠っている。

「ルナさん、着いたようですよ」

俺は軽くルナを揺すってみるが、うぅ~んと言うだけで起きそうにない。

仕方ない。

俺はルナを背負い、輸送車から降車。


外へ出てみると、神殿都市と違った景色に少しドキドキした。

まずは大きな木がある。

緑が豊かな街の雰囲気だった。

大きなビルの建物はない。

輸送車の発着場はバスターミナルのような感じだが、すぐに石畳みのような道路が広がる。

建物が2~3件並んでは木が植えられている。

建物も石造りが基本のようだ。

ただ、どこの都市もそうだが、土魔法ですぐに建つようだった。

これも地上と同じだな。

俺はルナを背負ったまま、まずはギルドへと向かおうと思った。

神殿に行ってもいいが、ギルドの方がいい感じがする。

発着場のところに街の案内図がパネルに表示されている。

ライセンスカードをかざすと、情報がコピーされる。

ノートたちが教えてくれたものだ。

でもまずはどんな街なのかを確認したい。


パネルを見ると、いろんな場所がわかった。

・・・・

なるほど、ここがギルドか。

神殿はギルドの近くだな。

ん?

総督府・・ここは都市の司令塔みたいな感じか。

あれ?

そういえば、来る途中にどこかに下車するんじゃなかったっけ?

寝てたからな。

俺はそんなことを思い出したが、とにかくルナを背負ってギルドへ向かう。


◇◇


<ブレイザブリクの神殿>


神官長の部屋がノックされる。

「どうぞ」

神官長マグニは答える。

「失礼します。 神官長様、フォルセティ様が来られております。 いかがいたしますか?」

マグニに報告した男が問う。

マグニは驚きはしなかった。

ただ、行動が早いなと思っていた。

「そうですか。 では、こちらへご案内してください」

「御意に」

報告をした男はそういうとドアを閉めて消える。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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