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27 神殿

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。




ペトロがテツを見送りながらつぶやく。

「あのテツって人も、大変だな・・」

「そうよね。 お姫様って、どこでもわがままだから・・」

「あれ? ララもお姫様じゃなかったっけ?」

「私は違うの!」

パーティの中のタンク役だろうか、大きな男がつぶやく。

「なんにしても、みんな無事で再会できるのは良いことであるな」

みんながその言葉に、顔をほころばせうなずいていた。

「それよりも気づいた? あのテツって人だけど、剣を持っていたわよ。 剣士かしら?」

ララが言う。

「うん、俺も気になっていたんだが、聞けなかったな。 まさかとは思うが、剣を主体にして戦う人なのかな? 普通は魔法銃で一定距離を取って戦うスタイルが多いんだが・・」

ペトロが言う。

タンク役の男がそれに反応して言う。

「そうであるな。 だが、いないわけではない。 暗殺者などは銃は使わないし、剣を好む人もいることはいる。 ただ、銃の方が有利だが・・」

みんなでうなずきながらテツの背中を見送っていた。



ギルドを出て、俺とルナはフラフラと歩いている。

「テツよ、この街の魔素の流れを先ほど調べてみたのだ。 やはり神殿の辺りで渦を作っている感じだ。 まだまだ問題となるレベルではないが、魔素の暴走が起これば、この街の住人程度では対処できないぞ」

ルナが言う。

「なるほど・・で、結局はどうすればいいのですか?」

俺はそう答える。

というか、何をしていいのかさっぱりわからない。

「お前なぁ・・まぁいい。 水や風の流れを変える人為的な方法があるだろう。 お前の地球などでも水をせき止める装置などがあったはずだ」

「あ、ダムですか?」

「そう、それだ。 そういった自然に反するものを壊せばいい。 おそらく神殿の地下かどこかに魔法陣でもあるのだろう。 それが魔素の流れを変えている。 それに世界全体に及ぶ魔素の滞留・・各神殿が布置となって、大きな魔法陣とも考えられる。 とにかく片っ端から片づけるしかないだろうな」

ルナはさも簡単そうに言う。

「ルナさん・・それって結構面倒な作業のように聞こえますが、大丈夫ですか?」

俺は少し面倒な気持ちになった。

「何を言っているテツ。 いろいろ探す手間が省けたというものだ。 むしろ簡単だぞ。 壊すだけでいいのだからな。 では、行くか」


え?

今からですか?

「ルナさん、今から行くのですか?」

俺は少し驚いた。

「無論だ。 そんなのは・・なんて言ったか、朝飯前だ」

ルナはニヤッとして颯爽と神殿に向かって行く。

俺も遅れずについて行った。

なんか、この人といると不可能なんてないんじゃないのか?

そんな風に感じる。


◇◇


<イザベルの神殿>


神官長のところに報告に来ていた男と会話をしていた。

「・・そうなんです、神官長様。 あの二人がふらりと街に戻って来たのです」

「ふむ。 いったいどこに行っていたのでしょう?」

「はい、不確かな情報ですが、どうも転移石を使って移動していたとか・・」

若い男がおそるおそる報告をしている。

「なるほど・・ダンジョンから転移した時に、どこか違う場所に転移させられたというわけですか・・」

「はい、おそらくは・・」

神官長と若い男は都合よく理解しようとしていた。

神官長は少し考えている。

確かに転移石を使うと、ダンジョンから脱出は可能だ。

だが、明確な場所指定は、余程のイメージコントロールがなければできないだろう。

しかし、どこで転移石を手に入れたのだろう・・いや、ダンジョンの中でどこかのパーティから譲り受けたのかもしれない。

・・・

神官長はそんなことを考えていると、部屋の扉がノックされ、違う男が入って来た。

「失礼します、神官長様」

神官長は入って来た男の方を向き、失礼な奴だなという目つきで見る。

「いきなりなんですか?」

「も、申し訳ありません。 ですが、急ぎの報告です。 ギルドを出た例の二人ですが、こちらに向かって来ております」

神官長は別に焦る風でもなく、落ち着いて答える。

「別に急ぐほどのことでもありませんよ。 彼らは神殿騎士なのですから、神殿に立ち寄るのは自然なことではありませんか。 お茶の用意を頼みます」

若い男は、神官長の言葉を聞いているうちに落ち着いてきたようだ。

「ハッ! わかりました」

若い男はそう返事をすると、部屋を出て行く。

「さて、いったいどんな情報を持って帰って来たのでしょう? さて、私たちもお迎えの準備をしなければいけませんね」

神官長はゆっくりと窓の外へ視線を移動させた。


◇◇


俺とルナはイザベルの神殿へと向かっていた。

神殿の入口に到着。

神殿の中へ入ろうとすると、ノートが迎えに来てくれた。

「これは神殿騎士様、お帰りなさいませ」

ノートは微笑みながら近づいて来る。

・・・

俺の目線は、ノートの胸にロックオン。

一歩足を運ぶたびに揺れる胸。

思いっきり掴みたい!

俺の妄想が駆け巡る。

がっつりと掴んで持ち上げてみたい。

前から後ろからと・・くぅ・・たまらん!!


ノートが変な顔をして、ルナに話しかけている。

「ルナ様、従者の方ですが、どこか調子が悪いのでしょうか?」

「さぁ、わからんな」

そんな会話をしていると、奥から神官長が現れた。

「お帰りなさいませ、神殿騎士様」

神官長は深々と頭を下げる。

俺も正気に戻っていた。

「何か、光の巫女様に関わることがおわかりになりましたか?」

神官長が聞く。

「うむ。 いろいろとわかったぞ。 まずは声が漏れないところで話したいものだな」

ルナが言う。


神官長は少し驚いたようだった。

「そ、そうですか。 わかりました。 どうぞこちらへ」

神官長が俺たちを案内してくれる。

どうやら応接室のようなところへ連れて行ってくれた。

俺たちと神官長の3人で部屋に入る。

神官長が大きなソファに腰かける。

俺たちも向き合って座った。

ん?

誰かいる・・俺はそう思ったが、黙ってそのまま神官長を見る。

念話でルナにメッセージを送ってみた。

『ルナさん、この部屋ですが、俺たちと神官長の他にもう一人いますね』

『うむ。 わかっている。 まぁ見ておれ』

ルナはそういうとそのまま神官長に話し出した。


「神官長よ、光の巫女のことだがな・・結論から言えば、所在は不明だ」

「は? 不明と申しますと・・」

神官長は意表を突かれたような感じだ。

「言葉の通りだ。 それよりも、お主に聞きたいことがある」

神官長の目が少し真剣な目つきになってルナを見る。

「私に聞きたいことですか?」

「そうだ。 お主、自然界の魔素をコントロールしようとしているのではあるまいな」

ルナがそういった。

俺は驚いてルナの横顔を見つめる。

・・美人だ。


だが、それどころではない。

いったいいきなり何を言い出すんだと俺は思っていた。

「な・・こ、これはいったい何をおっしゃっているのか、私にはわかりませんが・・」

神官長は明らかに焦っている。

「作らなくてもよい。 ワシには魔素の流れがわかるのだ。 この神殿で大きな渦を作っている。 このままでは魔素が暴走して、生き物が飲み込まれるぞ」

ルナは淡々と言う。

「し、神殿騎士様・・もし仮に私どもがそのようなことをして、いったい何のメリットがあるというのでしょう」

神官長はギリギリのようだ。

「まぁ、正直に言いたくないのならばそれもよい。 だが、本当に街自体を滅ぼすことになるぞ」

ルナが重ねて言う。

「神殿騎士様・・恐れながら申し上げます。 本当に私には何をおっしゃっているのか・・」

神官長がそこまで話した時だ。


ルナが片手を神官長にかざす。

「チャーム!」

そして続けて言う。

「そこに隠れている者、ここまで出て来るがよかろう」

ルナがそう言うと、奥の壁際からうっすらと形を成して、若い男が現れた。

神官長はボォーッとしたままだ。

「男、こちらに来い」

ルナが言う。

若い男はゆっくりと足を動かしながら近づいて来る。

俺たちの手前3メートルくらいになった時だろうか。

いきなり懐から銃を取り出して、俺たちに向けて発砲しようとした。

俺が瞬間的動いて、男から銃と取り上げる。

若い男は、銃を取り上げられたのもわからず、そのまま指を動かしていた。

人差し指が引き金を引く動作を繰り返している。

「ん? え? あ、あれ? じゅ、銃はどこだ?」

若い男は軽く首を動かして、自分の手を見て辺りを見渡していた。

俺が銃を持って、男の横に立っている。

!!

「な、バカな・・」

若い男がそういいながらつぶやく。

「いつの間に・・そこに座っていたはずなのに・・」

足は後ずさろうとしていた。

「おっと、動かない方がいい」

俺はそう言って、飛燕を抜刀することなく、そのまま若い男の背中に当てる。

若い男はビクッとなっていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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