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26 ギルドにて

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



俺たちはどこへ行こうかと迷っていたが、とりあえず最後に立ち寄った街、イザベルへと行ってから考えようということになった。

ヘルヘイムもそれがいいでしょうと後押し。

「では、私がイザベルの街の入口までお送りいたしましょう」

ヘルヘイムがそう言うと、これまたゲートを作ってくれる。

黒い縁を持ったゲートが完成。

「ルナ様、テツ様、よろしくお願いします。 光の巫女のことはご安心くださいませ」

ヘルヘイムがそう言うと、執事長以下メイドたちが見送ってくれた。

ルナは片手を挙げてサッサとゲートを通過。

俺もヘルヘイムたちに慌ててお礼を言って、ルナの後を追う。



「ヘルヘイム様、順調に進んでおりますね」

執事長が言っている。

「うむ。 まさかここまでスムースに動くとは思ってもいませんでしたよ。 それにしてもルナ様とお会いできるとは思ってもみませんでした。 そしてあの人の能力を超えた人間・・恐ろしいですね。 もしかして、魔王・・えへん」

ヘルヘイムは言葉の最後の方で小さくつぶやきながら、軽く咳ばらいをする。

「どうかされましたか、お館様」

「いえ、何でもありません。 後は待つだけですね」

ヘルヘイムはそう言うと、椅子に深く座り直した。



<イザベルの街>


俺とルナはイザベルの街の入口に来ていた。

街の入口に近づいて行く。

門衛にライセンスカードを見せると、少し驚いていたようだ。

何せ、神殿騎士様だからな。

問題なく入口を通過して、とりあえずは困った時のギルドへ行ってみる。

神殿とは少し距離を置こう。

どうせ放っておいても、俺たちの位置はライセンスカードでわかるようだし、接触は勝手にしてくるだろう。

俺はそんなことを思いながら、ギルドを目指す。

ルナはご機嫌のようだ。

「ルナさん、初めに来たときと違って元気そうですね」

俺が聞いてみると、

「まぁな。 ダンジョンから常にエネルギーの供給があるから落ち着いていられる」

ルナが答える。


そっか、ダンジョンの管理者が変わったのだった。

これでルナさんの存在も安心だな。

俺たちはギルドの前に来た。

神殿もギルドも結構近代的な建物に見える。

近代的といっても俺目線だが。

ビルだ。

神殿ほどは高くはないが、それでも10階くらいはあるんじゃないかという大きさだ。

ギルドの入口がスッと開く。

帝都のような大きな扉ではないが、それでもかなり広い入口だ。

中に入ると、帝都のギルドとよく似た作りになっていた。


俺たちはゆっくりと移動しながら掲示板を探す。

なるほど、帝都ギルドと思っていい感じだ。

デジタルサイネージのようなパネル表示で情報が流れている。

タッチして紙をはがすような動作をすると、そのまま自分のライセンスカードに情報が入るらしい。

それを持って受付へ行けばいいわけだ。

俺は街の情報や光の巫女に関する情報など、いろいろ調べていた。

すると、俺たちに声をかけてくる人がいた。


「君たち、ちょっといいかな・・」

俺が振り向くと、声を掛けて来た男の人と、周りの連中5人くらいが驚いたような表情をしていた。

!!!

「やっぱりそうだ・・」

「生きていたんだ」

「だが、どうやって・・」

「私たちみたいにレアアイテムを持っていたのよ・・」

おそらくパーティだろう、その連中が口々につぶやいていた。

俺は誰だ? という顔で見ている。

「君たち、覚えていないか? ダンジョンでバジリスクの扉の前で話をしたパーティだよ」

俺に声を掛けてきた人が言う。

なるほど、思い出した。

あの追いついてくる仲間を待っているとか言っていた人たちだ。


俺は少し驚いたような表情をして返事をする。

「あぁ! あの時に俺たちに丁寧に接してくれた人たちですね」

「思い出してくれたか。 それよりも、君たち無事だったんだな?」

苦笑いしながら言う。

「ここでは何なんで、あちらで座って話をしないか?」

俺に声を掛けて来た人がそういうので、俺はルナをチラっと見てうなずく。

「そうか、ではテツよ、話を聞いてやればいい。 ワシは少し散歩でもしてくる」

ルナはそう言って、スタスタとギルドの外へ出て行った。

「すまないな・・何か気を悪くさせのだろうか?」

俺に声を掛けて来た人が言う。

「いえいえ、問題ありません。 彼女は気分屋なのですよ」

俺はそう言って、座れる席に移動。


移動途中にギルドの中ではいろんな声が聞こえて来た。

その中でもダンジョンの話が一番声が大きかった。

「・・知ってるか? ダンジョンの魔物が少し変わったんだってよ・・」

「あぁ、知ってる。 10階層に行くのが難しくなったよ・・」

「・・そうなんだよな・・」

「魔物が強くなっているんだよ・・」

「一体何があったのだろうな・・」

「わからんが、これじゃぁ攻略組もなかなか先に進めないな・・」

・・・・

そんな会話が聞こえて来た。

俺はルナのせいだなと思いながら、黙って移動して席につく。


俺に声を掛けてきた人も席に座りながら言う。

「本当に驚いたよ。 おっと自己紹介がまだだったね。 俺はA級冒険者のペトロだ。 今、このパーティでダンジョンの攻略を兼ねてレベルアップをしている」

そう言いながら、ペトロが握手を求めて来た。

俺もその手をしっかりと握り返し、自己紹介をする。

「テツといいます。 先ほど出て行った彼女と旅をしています」

ペトロたちが席につき、すぐに話しかけてきた。

「テツ、君たちはいったいどうやってあのバジリスクのところから脱出できたんだ?」

ペトロの後ろの女の人も続けて聞いてくる。

「そうよ。 私たちも3つのパーティで挑んだけど、3人が石化させられて、どうにか1体を倒したけどそのまま転移石を使って脱出したのよ」

周りの人たちも、うんうんとうなずいている。

俺は転移石なんてあるんだと、新しい発見に一人驚いていた。


「そうなんだ。 だから君たちを先ほど見たときに驚いたよ。 まさか生きているとは・・いや、これは失礼な言葉だったね。 許してくれ」

ペトロが言う。

「いえ、別にいいですよ。 でも、大変でしたね」

俺はそう答えつつも、簡単にバジリスクを倒しました、なんて言えないだろうと思った。

それに転移石がどういうものか知らないが、それを使って脱出したと言うことにしておけばいいんじゃないかと考えた。

ペトロのパーティがみんな俺を見ている。

完全にどうやったのかを知りたい感じだな。

まさか倒したとは考えてもいないようだ。

「えぇ、俺たちも転移石を使って脱出したのですよ」

俺がそう答えると、ペトロたちは驚いたような安心したような顔をしていた。

「やっぱりそうか・・あのハジリスクの集団にはもっと多くのパーティで挑んでいかないと無理そうだしね」

「そうよ。 あのにらまれたら石化するのがやっかいよね」

「それもあるけど、あの皮膚の堅さといったら、魔法銃の魔法は弾くし剣は折れるしで、さんざんだったよ」

みんな苦笑いをしながら話している。

盛り上がるような感じではない。

そんな中、女の子が俺に聞いてきた。

「でもあなた、よく転移石なんて持ってたわね。 あんな貴重なアイテム、なかなか手に入らないでしょう?」

え?

そうなのか?

ど、どうしよう・・あ!

「そ、そうなんですか? え、あ、あの・・ここだけの話にしてもらえますか?」

俺はそう言って、話を続ける。

「先ほど出て行った女の人ですが、少し遠いところから来たお姫様なのですよ。 俺はその従者でして・・その安全のために転移石を持たせてもらったのですよ」

俺はとっさにそう話してみた。

ちょっと苦しかったか?

すると、案外素直に受け入れてくれた。

何か、俺の嘘つきレベルが上がっているんじゃないか?


どうやら冒険者のマナーらしく、相手の詳細は聞かないようだ。

「そうなんだ・・テツも苦労するね」

ペトロが言う。

「こう言っては失礼だけど、あの女の人、偉そうだものね」

女の子が言う。

俺は笑いながらうなずいて話す。

「でしょ? 偉そうなんですよ。 でも、あの美人さんですからね・・いい気なものですよ・・」

俺がそう言っていると、ペトロたちが真剣な顔になっていた。

バコ!

俺は頭を殴られた。

「何が、いい気なものですよ、だ」

ルナだ。

「さ、行くぞテツ」

ルナはそういうと、俺の襟首えりくびつかんで俺を立たせる。

俺は少しよろめきながら、急いでペトロたちに「またね」と手を振り、ルナの後をついて行った。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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