221 スーパーノヴァ?
「邪王・・ね」
フレイアも顔を引き締める。
その気持ち悪い感覚を纏ったものが急接近してくる。
フレイアとメサイアは移動を開始。
街から離れていく。
少し移動したところで、フレイアは立ち止まる。
「ここで迎え撃つわ」
メサイアは何も言わずにフレイアの横に立つ。
すぐに赤く立ち昇る煙のようなものが見えた。
邪王だ。
赤い霧に包まれているようにも見える。
メサイアは見た瞬間に身体が硬直してしまった。
身体を動かそうにも動かない。
右手で剣を持とうとするが、震えているようだ。
フレイアはまっすぐに邪王を見つめて弓を引き絞っていた。
「ふぅ・・まずはこの一撃を」
ヒュン!
フレイアが矢を放つ。
白い航跡を描きつつ、まっすぐに邪王に向かって飛んで行く。
距離的には500mは離れているだろう。
空に飛行機雲を描くように高速で飛んで行く。
邪王のところで立ち昇っていた赤い煙がフッと消えた。
直後、邪王のいる辺りに白い爆発が発生。
遠くから地鳴りのような轟音が聞こえてくる。
ゴォォォォン・・・。
その音を聞くと、メサイアの緊張が少し緩んだようだった。
メサイアはフレイアを見て、爆発のあった場所を見つめる。
煙がゆっくりと流れ薄まってくると、また赤い煙のようなものが立ち昇っていた。
フレイアはそれをみて微笑む。
「やはり、これくらいではダメね」
赤い立ち昇る煙がゆらゆらと揺れながら、メサイアたちの方へ接近してきていた。
「フ、フレイア殿、邪王が来ます!」
メサイアは思わず言葉を出していた。
フレイアは別に焦るでもなく、次の矢をつがえていた。
フレイアの身体を白い光が覆う。
ヒュン!
矢が放たれた。
同時にフレイアの身体を覆っていた光も矢と共に飛んで行く。
真っすぐに邪王に向かって白い航跡を描く。
まるでミサイルだ。
邪王のいる場所に着弾。
ピカッ!
メサイアはその光景に見入っていた。
言葉が浮かんで来ない。
メサイアは思っていた。
フレイア殿の放った矢が邪王のいるところに寸分たがわず着弾している。
しかもまるで太陽のような光が溢れている。
その光は大きくなることなく、広がろうと力いっぱい輝くが、何かがそのエネルギーを収束させようと逆の力で抑え込んでいるように見える。
だからこそ余計に凄まじいエネルギーを感じる。
誰が見てもわかる。
あの光の中ではいかなるものも存在しえないのではないか?
メサイアはその光景を見ながらフレイアを見る。
!!
「フ、フレイア殿!」
フレイアが片膝をついていた。
「だ、大丈夫よ。 ちょっとね・・テツの魔法の真似をしてみたの」
フレイアが微笑みながら言葉を出す。
「テ、テツ殿の魔法?」
メサイアは思わず言葉を繰り返す。
「そう・・なんて言ったかな? 名前は忘れたけど、一度ダンジョンでテツが使った魔法があったの。 私たち死にそうになった魔法なんだけど・・それを少し私のイメージと融合して撃ってみたけど・・うまくいったようね」
フレイアがゆっくりと立ち上がっていた。
メサイアもフレイアの視線の先、邪王のいた場所を見る。
光の爆発は、広がることもなく光度を落としつつ、ゆっくりと収束していった。
・・・
メサイアは思わず前のめりになる。
「な・・なにもない・・ですね」
フレイアの矢の着弾したところには何も残っていなかった。
きれいに球状にえぐり取られている。
メサイアの感じていた嫌な感じは完全に消えていた。
邪王を感じたときにはどれほどの戦闘になるかと危惧していた。
しかし、高レベルになればなるほど、その勝負などは一瞬で片がつくのだろう。
フレイアの攻撃力の高さに恐れ入っていた。
「フレイア殿・・さすがですね」
「ううん・・テツの魔法のイメージがあったからね。 でも、何度も撃てるものじゃないわ・・」
フレイアが微笑みながら答えているとゾワッと背中を撫でる感覚がある。
!!
メサイアにもわかったようだ。
「フレイア殿! こ、これは・・」
「えぇ、まだ居たのね」
2体の邪王がフレイアたちのところへ向かって来ていた。
「これは・・2つの反応があるわ」
フレイアがつぶやく。
「フレイア殿・・私でも時間稼ぎくらいはできるでしょう。 先ほどの矢をまだ放つことはできますか?」
メサイアが真剣な顔で聞く。
「そうね・・後1度くらいなら同じレベルの矢が放てると思うけど・・やってみるわ」
「なるほど・・そうですか」
メサイアはその瞬間に死を覚悟した。
自分が1体に対し時間を稼ぐ。
その間にフレイアに確実に1体を仕留めてもらおう。
その後はわからない。
だが、確実に1体は減らせるはずだ。
「来たわね」
フレイアがつぶやく。
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