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217 送還



「大丈夫か!」

ジョーは驚くと共に剣を構えていた。

「あ、あぁ、大丈夫とは言えないが、傷はない。 だが、見た目のとは違う衝撃度だ。 ミノタウロス以上のパワーだぞ」

アイザックがゆっくりと立ち上がる。

邪王は剣を肩で担ぎながら、ジョーとアイザックを見渡していた。

「ジョー・・こいつに俺たちの言葉は通じるのかな?」

「さ、さぁ、わからないな。 どうしたんだ?」

「覚悟は決めていたんだが、こんな子供に全力で剣を振るうことができないかもしれない」

「な、何を言っているんだアイザック!」

ジョーが驚きつつ声を少し大きくして言う。

「すまないな、ジョー・・わかっているんだ。 だが、俺の頭に家族が浮かんでしまった」

「アイザック! ここは戦場だぞ!」

ジョーがアイザックに気合を入れていた。

「わかっている・・」

アイザックも剣を構えるが、少し気合がボケているようだ。

ジョーは呼吸を整えて剣を構える。

「アイザック・・俺がやる」


ジョーは一歩前に出た。

邪王は確かに笑ったようだ。

ニヤッとしたかと思うと、ジョーに向けて剣を縦に振って来た。

ギン!

ジョーは剣を受け流しながら、さらに一歩前に踏み出す。

その姿を見てアイザックは思う。

ジョーは本気だ。

あの受け流しからの速攻。

相手は反応できない。

ジョーは邪王の剣を自分の剣の上を滑らせている。

剣の先の方まで滑らせた時だ。

ジョーは流れに逆らわず、すり抜けるように剣を邪王に向かって振るう。

ヒュン!

邪王の赤い血のような霧を斬り裂いた。

そして、そのまま邪王を斬ったと思った。

だが、そこに邪王はいない。

ジョーの剣に流された方向へ移動していた。


ジョーが斬ったと思ったのは残像だったようだ。

だが、ジョーはそのまま向きを変え邪王に追撃を加える。

左足をドンと邪王に向けて踏み出して、今度は水平に剣を薙いでいる。

避けるところはない。

邪王の左腕のところに剣が当たる。

ガン!

邪王が剣で防いでいた。

直後、邪王の右腕がジョーを貫く。

「グボォ・・」

ジョーが声にならない言葉を出して、口から血をはき出している。

「ジョー!!」

アイザックが叫びながら、邪王に向かって剣を突き出す。

邪王は右腕を引き抜くと、乱暴にジョーをその場に捨てる。

そのままアイザックの迎撃を喜んで待ち構える。

「このぉお!」

アイザックの3連撃の突き。

並みの冒険者なら連続の突きとわからない速度で繰り出される。

ドドド!

邪王は剣で防ごうとするが、アイザックの最後の突きが右腕にヒットした。


邪王は持っていた剣を離さざるを得ない。

カラン・・。

剣を落とす。

アイザックはそのまま追撃を加える。

もう一度突きを繰り出す。

もはや迷いはない。

!!

驚いたことに、邪王は右腕を突き出してアイザックの突きを受ける。


アイザックは突きを放った直後、息を吐き吸おうとした。

息ができない。

よく見ると、自分の胸に邪王の左腕が突き刺さっていた。

邪王はスッと左腕を抜く。

そして、自分の右腕を左手で撫でていた。

アイザックはヨロヨロと歩いてジョーのところへ向かう。

「ゴホ・・ジョ、ジョー・・」

アイザックがジョーに触れようとした瞬間に、アイザックとジョーは邪王の前から消えた。


邪王は赤い目を大きくして辺りを見渡す。

キョロキョロとしていたが、ある方向を向いて止まる。

キョウジたちが戦っている場所だ。

ニヤッとすると、そのままキョウジたちの方へ向かって走り出した。

右腕はどうやら使い物にならないようだ。

赤い霧が全身を覆い出血などは見えないが、どうやら回復などはできないらしい。


<帝都神殿>


神殿内の青い大きな光る石の前に司祭がいた。

ゆっくりと石の方を見る。

ブーン・・。

光の粒が集まり、人の形を成してゆく。

ジョーとアイザックが武具と共に転送されてきた。

司祭は近寄り、回復魔法をかける。

・・・

効果はないようだ。

傷が癒えることはない。

だが、出血は少し止まっているような感じがする。

司祭はアニム王に念話と飛ばす。

『王様、戦士が戻って参りました』

アニム王は王宮でその言葉を聞く。

今の業務を停止し、急いで神殿へ向かった。

政務官たちも同行する。

・・・

・・

アニム王はジョーとアイザックの傷を見て絶望を覚える。

間違いなく致命傷だ。

邪王による傷に回復魔法が効かないとは思っていたが、まさかこれほどとは思わなかった。

時間遡行を行ってみるも、本人たちに支払える代償がない。

時間が戻る前に命が尽きる。

それにそもそも神聖術系に属する魔法だ。

どれほどの効果が得られるかわからない。


「酷いことをさせてしまった・・」

アニム王はジョーとアイザックの傍で膝をつく。

「お、王様・・申し訳ありません・・はぁ・・はぁ・・私が油断したばかりに・・」

アイザックが苦しそうに言葉を出す。

アニム王はアイザックの手を取りうなずく。

「何を言う。 私のミスだ・・本当に申し訳ない」

アニム王は震えているようだ。

時間遡行によって、アイザックたちの基礎体力が少しは戻っている。

だが、傷には効果がないようだ。

アニム王は思っていた。

やはりテツのように神の祝福がなければ難しいのか。

いくら試練とはいえ、これは辛すぎる。



最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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