215 それぞれの場所へ
アニム王の激励も終わり、早速みんな移動する。
全員が決められた場所へと向かって出発していく。
ニコニコしている人や、真剣な顔をしている人たち。
だが、確実に気合は入っているようだった。
俺もレアさんたちと一緒に飛行船の発着場のところへ来ていた。
北米行の特別船に乗り込む。
飛行船内は俺とレア、ロイヤルガードたちと帝都の人が3人付き添っている。
「テツ様、こちらの席へ座りましょう」
レアが笑顔で席を勧めてくれる。
俺はうなずきながら座らせてもらった。
「ありがとうございます、レアさん」
「いえいえ、到着まで2時間くらいですか・・ゆっくり過ごしましょう」
レアの言葉に何か妙な安心感を感じる。
ロイヤルガードたちも一緒に席につく。
・・・
セレネーだったか・・無表情は怖いぞ。
飛行船の旅は快適だった。
レアもロイヤルガードもこれから戦闘に向かうとは、とても思えない。
俺もかなりリラックスできた。
セレネーも、普通に話していると美人な人だ。
それもとてつもなく美人。
ロイヤルガード全員が美人揃いなんだ。
レアもフレイアとは違うタイプの美人だ。
フレイアが氷のような美人とでも表現すればいいのだろうか。
レアは暖かい美人という感じだ。
ルナなんてすべてが吸い込まれそうな美人だからな。
うまく表現できないな。
とにかく、あっという間に北米に到着した。
俺たちは飛行船から降りる。
ギルドの職員と帝都の人が出迎えてくれた。
「よくぞおいでくださいました。 よろしくお願いします」
集まっている人たちが俺たちに丁寧に挨拶をする。
「ご心配には及びませんわ。 私レア・レイドルドと英雄テツ様が討伐に向かうのです。 皆様方は街の人たちの保護をお願いいたしますわ」
レアが流暢に話してくれていた。
俺は横で微笑むだけでいい。
楽だ。
ギルドから出て、街の出入り口へ向かう。
街の外へ出ると、俺たちは邪王に認識されるだろう。
一気に街から離れなければいけない。
それは飛行船の中で何度も話し合ったことだ。
全員で一気に駆けてゆく。
必ず邪王が向かってくるだろう考えていた。
また、俺たちが街の結界の外に出ればレベル40を超える存在だ。
わからないはずがない。
俺とレア、ロイヤルガードたちは街の出入り口のところまで来た。
「テツ様、いよいよですわね。 皆さんも心の準備はよろしくて?」
レアが問う。
レアの言葉を聞いていると、何だか落ち着いてくる。
帝王学というか、当たり前にリーダー的な存在なのだろうな。
「レアさん、ロイヤルガードの皆さん、本当によろしくお願いします。 そして、皆さん気を付けてください。 邪王の攻撃を受けると回復魔法が効かないようですから」
俺がレアの言葉の後に続けて話した。
ロイヤルガードたちの顔が少し緊張したような感じに見えたが、レアが微笑んで俺を見る。
「テツ様、問題ありませんわ。 テツ様がおられるのですもの。 全く心配しておりません。 それに、最悪私たちは戦闘で命を落とすことになりましても、覚悟はできておりますわ」
レアがさらりと言葉を出す。
ロイヤルガードたちも表情を変えずにうなずく。
・・
それってすごい覚悟なんですけど・・俺にあるかな?
俺は少し自問したが、答えは出なかった。
北米の街を出た。
「な・・なんだこれは・・」
ねっとりとまとわりつくような不快感。
遠くに感じるのに足首に絡みつくような感じだ。
!!
すぐにわかった。
邪王だ。
強烈な感覚がある。
これが魔素というものだろう。
レアたちも一瞬でわかったようだ。
表情を変えずに声をかけていた。
「皆さん、一気に駆けますわよ」
「「「ハッ!!」」」
レアの言葉に全員うなずくと、一気に走り出す。
◇
<キョウジとシルビア>
キョウジたちはロシアの南側方面を担当していた。
キョウジのレベルは41、シルビアもレベル41になっていた。
ギルドの出入り口で待機している。
「キョウジ、確認しておくが、私がやられても構うことはない。 そのまま邪王を倒してくれ」
シルビアが言う。
「ヘッ! シルビア・・その覚悟、いいねぇ。 逆に俺にも気を使わないでいいぜ。 まぁお前が弓で遠距離支援だからな。 俺も戦いやすいぜ」
「あぁ、任せておけ」
「シルビア・・やっぱり俺の女にならないか?」
キョウジが言う。
「キョウジ・・あのなぁ、今から命を懸けて戦うんだ。 どうやったらそんな言葉が出て来るんだ?」
シルビアが少し呆れた顔をしていた。
「何言ってんだよ。 死と隣合わせだからこそ求めるんじゃねぇかよ。 ま、戦いが終わったら考えておいてくれ」
「はぁ・・前にも言ったが、私にはテツがいる。 あいつは強さだけではない何かがある」
シルビアの言葉にキョウジが笑う。
「あっはっはっは・・シルビア・・そりゃ、テツは強ぇと思うぜ。 だが、借り物の強さだ。 あいつは自分自身以外、誰も信用していないやつだぞ。 おそらく死ぬまで、いや死んでも答えが掴めないものを求めている」
「答えが掴めないもの・・」
シルビアがキョウジの言葉を反芻する。
「そうだ。 俺も似ているからわかる。 理想とかそういうものじゃない。 なんて言うのかな・・確実にあるものだが、決して触れたりできないものを求めていると言えばいいのかなぁ・・例えば、雲や虹だな」
「雲や虹?」
「そうだ。 雲は見えるが決して掴むことはできないだろう。 そういったものを本気で求めているタイプだ」
キョウジの言葉を聞きながら、シルビアが考えていた。
!
「ん? キョウジ・・テツと似ていると言っていたな。 お前もそんなものを求めているのか?」
シルビアがキョウジを見つめる。
キョウジはシルビアの目をジッと見据えて、いきなりキスをしようとした。
シルビアが手を添えてキョウジの顔を遮る。
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