214 アニム王の下に
<アニム王の下に>
俺は係の人に案内されて大広間に入って行く。
かなりの数の人が整列していた。
フレイアとメサイアがいる。
俺を見ると軽く手を振ってくれた。
見たことがある顔が結構いる。
ん?
あれって・・あの色っぽい女の人・・。
あ!
よくダンジョンに行かないかって声をかけてきた・・なんて名前だったかな?
一度助けたことがあったぞ。
その女の人が微笑みながら俺に手を振っている。
俺はチラっとフレイアの方を見た。
妙なオーラを感じるのは気のせいではないだろう。
俺はレアさんのいるところに並ぶ。
「テツ様、よろしくお願いしますわね」
レアさんはニコニコしていた。
ロイヤルガードたちも挨拶してくれる。
みんな微笑んでいた。
ピンクの髪の女の子だけは無表情で、怖いんですけど。
ピクニックじゃないよね?
え?
キョウジじゃないか!
俺は瞬間的に思う。
泉の政治的判断だろうと。
帝都に恩を売る。
キョウジが死んでも協力したという証が残る。
生き残っても貢献したことになる。
さすがだな。
あれ?
キョウジの近くにいるのって・・シルビアじゃないか。
まさかあいつとキョウジが組んだのか?
凄い組み合わせだな。
いったいどんな感じで組み合わせているんだ?
少し気になる。
さて、それぞれの列というか、出撃単位はごく少数だ。
フレイアのところもメサイアと後1人の騎士団員。
他のところも大体3人くらいのものだ。
それもかなりの人数がいる。
俺も15単位くらいまで数えたが、やめた。
アニム王が声を出す。
「みんな、夜に集まってもらって申し訳ない。 今、このタイミングが最適だと判断したのだ」
全員を見渡して話し出す。
地球のホログラムも表示されていた。
大広間のど真ん中に浮いている感じだ。
「見てもらえばわかるが、赤い光点が邪王だ。 今のところ一番レベルの高いのが45となっている。 この邪王だ」
アニム王の言葉にその光点にタグが付いた。
アメリカだ。
「この邪王には、テツ・レア姫の班で向かってもらう」
!
俺はドキッとした。
まさかこんな集団で俺の名前が呼ばれるとは思ってもみなかった。
なんか恥ずかしいな。
それぞれの班に担当地域が指定されていた。
大体レベルが40程度の邪王のようだ。
専用の武具と装備品が提供されている。
何でもドワーフとじいちゃんの作品だという。
みんなそのレジェンド級の武器に興奮していた。
特にじいちゃんの武器は巷ではアキラシリーズなどと呼ばれているらしい。
その道では神殺しの武器などという言葉もあるそうだ。
ただ、誰もが扱いたいが使用者を武具が選ぶらしい。
ドワーフに言わせれば、生きている武具という。
そして、みんな持てないという現実に肩を落とす。
「こ、これが・・あのアキラシリーズか・・」
「君もこの武器を・・俺なんて怖くて触れない」
「実は・・俺も持ち上げれないんだ」
「そうなんだよな・・王様がどれでも持っていっていいと言ってたが、持てないんだよな」
「そうなんだよ・・ドワーフの武具は持てるんだが」
「あぁ・・だが、アキラさんってどんな人なんだ?」
「俺も見たことないんだ。 実際いるのかどうかもわからない」
「神様じゃないだろうな?」
「わからない・・」
・・・
・・
アニム王が武具を解放した時には、大広間はお祭りのような感じになっていた。
とてもこれから戦いに行く雰囲気じゃなかった。
しばらくはコミケの雰囲気だったが、落ち着いて来た。
みんなそれぞれに見合った武具を選び、王宮の人たちにも確認してもらっていた。
アニム王が頃合いを見計らったところで言葉を出す。
「皆、よろしく頼む。 そして決して無理だけはしないでくれたまえ。 危なくなったら遠慮なく逃げてくれ。 それに、それぞれの武具にパーソナル登録を済ませておいてほしい。 一応その武具を持っている限り、危うくなれば帝都に転移するようになっているが、絶対ではない。 重ねて言うが、君たちの命の方が確実に大事なんだ。 それだけは約束して欲しい」
アニム王の言葉が小さくなりながら大広間に響いていた。
・・・
・・
大広間に集まった人たちは沈黙している。
パチパチパチ・・
ある一角から拍手が起こったかと思うと、大音響となって盛り上がる。
「うおぉぉお!!!」
「最高だぁ!!」
「アニム王、この命捧げます!!」
「きゃあー! もう死んでもいい」
・・・
・・
俺も聞きながら思っていた。
まさか指揮官が逃げてもいいとは・・さすがだ。
でも、みんなも気合が入っただろうな。
俺もジーンと感動している。
◇
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