210 フレイアのカフェに立ち寄る
俺はギルドへ向かっているが、その前にフレイアのカフェに立ち寄ってみることにした。
時間は8時半。
まだお店はやっていない。
俺はドアをノックしてみた。
コンコン・・
すぐにドアが開く。
「おはよう、テツ」
「お、おはようフレイア・・元気だな」
フレイアがドンと現れたので少し驚いた。
「今からギルドへ行こうと思っているのだけど、少し立ち寄らせてもらったんだ」
「どうぞ」
フレイアが笑顔で中へ入れてくれる。
「どうしたの、こんな朝から・・」
当然の質問だ。
「あぁ、聞いているかもしれないが、邪王のことだ」
「えぇ、聞いているわ。 私も討伐に行くのよ」
フレイアが軽くうなずきながら答える。
「え? フレイアもか?」
俺は答えながらアニム王の言葉を思い出していた。
確か俺はレアと組まされていたよな?
あれ?
フレイアも一緒に行くのかな?
「そうなの・・私は騎士団の人たちと一緒に行くことになっているわ」
「そ、そうなのか? そうか・・俺はレアさんと一緒なんだ」
「ええーーー!!」
フレイアが驚きつつ、少し大きな声を出していた。
こっちが驚くぞ。
フレイアがグイッと近寄って来て俺の目をジッと見つめる。
・・・
俺は思わず目を逸らしてしまった。
「テツ・・まさかと思うけど、レア様に変なことしないわよね?」
「はぁ? なんだ変なことって・・」
「え、い、いや・・その・・キ、キスとか・・」
フレイアがモジモジしながら言葉を出す。
グッジョブ!
やはりその仕草、グッとくるぞ。
「あのねフレイア、そんなことできるわけないだろ。 ロイヤルガードの人たちも一緒だ。 それにピンクの髪の・・なんていったっけ? あの女の人が怖いよ」
俺が答えると安心したのか、笑いながら反応する。
「フフフ・・セレネーね、あの人はレア様のために自分があると思っている人だから・・なら安心ね」
「は? 何が安心だ・・」
俺がそう答えると、いきなりフレイアがキスをしてきた。
!!
な、なんだ?
全く予想外だぞ。
フレイアがスッと離れ、俺を見つめる。
「テツ・・死なないでね。 今、私の祈りを込めたから・・」
おい!
それって死亡フラグっていうやつだぞ。
俺じゃなくてフレイアの!
俺は慌てた。
「フ、フレイア、何か怖いな・・いなくなるんじゃないよな?」
「え? 何言っているのよ。 いなくなるわけないでしょ。 それに祈りを込めたというより呪いね・・あなたが悪さをしないように」
「あのね・・いったい俺をどういう風に見ているんだよ。 俺の人生で女の人にモテた記憶なんて・・中学生の時くらいだ。 後はないな」
俺はきっぱりと言った。
「まぁいいわ。 とにかく本当に気を付けて行ってきてね」
「うん・・」
俺が歯切れ悪く答えると、フレイアが不審そうな顔で俺を見る。
「なに?」
「いや、今フレイアに言われて思ったんだ。 確かにレアさんも美人だが、ロイヤルガードの人たちも美人揃いだよなって・・」
ゴン!
俺はフレイアに思いっきり殴られた。
「ってぇ・・痛いじゃないか」
「当たり前でしょ! せっかく私が気を使ってあげたって言うのに・・」
「誰も頼んでないぞ」
ゴン!
また殴られた。
「なんですってぇ!」
「い、いや、何でもないです・・と、とにかくありがとう。 フレイアも気を付けてな」
俺は急いでフレイアのカフェを出る。
俺の出て行った入り口をフレイアが見つめていた。
テツ・・同種族との戦いなんて気持ちの良いものでないでしょうね。
そんな戦いでテツが傷ついたり、いなくなってしまったら私・・。
ううん、きっと大丈夫。
テツ・・傷つかないでね。
◇
俺はそのままギルドへ向かって歩いている。
少し思い出していた。
それにしてもフレイア・・初め出会ったときは衝撃だった。
エルフだものな。
リアルアニメのような美人。
驚くというよりも言葉がなかった。
それがまさか俺と一緒に行動してくれている。
初めはドキドキしていたが、慣れって怖いな。
普通に感じるようになっていく。
それに今ではエルフって束縛的で狂暴な種族かと思っていたりする。
見た目は抜群に良い。
胸もハイエルフになって問題ない。
性格も純粋だし、人を思いやる気持ちもある。
嫁などと比べものにならない。
だが、何だろう・・このモヤモヤした気持ちは。
・・
人って、すべてを手に入れられるわけじゃない。
そして誰も完ぺきではない。
俺の頭にフッと優の顔が浮かんだ。
優もレイアの尻に敷かれているのだろうな。
俺はそんなことを思いながらギルドの入り口に到着。
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