207 邪王出現
<世界>
かつて大国と呼ばれた国々。
邪神王の戦いの時に、政府高官の連中はかなり滅んだ。
だが、その恩恵を受けていた輩は、帝都に属することもなく自分たちの街を運営していた。
帝都システムの良いところを取り入れつつ、自分たちに都合の良いルールで運営していた。
当然、人が残るはずもない。
ある人物がいう。
誰か一人を英雄にしてはどうかと。
英雄といっても善い行いをさせるわけではない。
高レベルの駒を育てようと提案したのだ。
力があればこちらの要求が許される。
かつての地球世界だ。
その幻想を抱く連中の考えそうなことだった。
そしてその実験は行われていた。
従順な子供を集め、選別していく。
大体15歳くらいの子供たちだろうか。
どの地域も似たようなことをしていた。
子供たちもレベルが上がり、強くなって行くのは楽しかった。
初めは嫌々だったが、自分の成長は楽しい。
それにお話に聞く英雄譚を生きているようだった。
帝都ツアーで帝都ダンジョンに入ったりもした。
戻って来ない子供たちもいた。
自分の意思で戻ってこないもの。
途中で命絶たれるもの。
いろんな理由があるが、ほとんどの子供たちは戻ってきていた。
そしてある段階に来たときに大人たちが言う。
近くに悪い街があるのだと。
どうにかその街の住人を救ってやってくれないだろうかと。
子供たちは自分に力があるのがわかっている。
人の基本性質だろうか。
弱いものを守ってやらねばなどと、稚拙な正義感に溢れていた。
大人の言う通りに街の解放に向かう。
戦闘自体は楽だった。
どの敵も問題にならない。
だが何か妙な感じがする。
相手が弱すぎるのだ。
だが、そんなことは演技かもしれないと教えられていた。
子供たちは遠慮なく虐殺を行っていた。
帰って来ると大人たちが大変褒めてくれる。
そんなことを繰り返していると、たまに記憶が消えているところがある。
邪王の発芽だった。
そして突然目覚める。
・・・
子供たちは、今まで指示を出していた大人たちに牙を向けた。
街は全滅。
エレンが見ていた赤い点の群はそんな街の1つだった。
見ていると赤い点は同じ場所である程度留まっているが、そのうちにお互いの赤い点が近づいて行く。
ある場所で赤い点が重なると、どちらかの赤い点が確実に消える。
しばらく見ていたが、疲れてくるのでエレンは事務所に戻って行った。
◇
<帝都王宮>
ギルマスがアニム王のところへ急いでいた。
遅い時間だが緊急事態だ。
王宮の係の人に事情を告げる。
大広間で待つように指示を受け、係の人はアニム王のところへ向かった。
ギルマスが大広間に到着すると、それほどのタイムラグもなくアニム王が現れる。
「トリノ・・始まったか」
アニム王が席につきながら言う。
ギルマスは一礼すると報告をする。
・・・
・・
「なるほど・・それほど多くの邪王の種が現れてきたということか・・ふむ」
アニム王はしばらく考えていた。
そしてギルマスを見る。
「トリノ・・で、どう見るかね?」
「はい、ギルドとしてはしばらくは飛行船の往来も控えたいと考えております」
「うむ、それがいいだろう」
アニム王とギルマスが会話していると、係の人が入って来る。
「王様、会議室に皆集まっております」
「ありがとう、今行く」
係に人は軽く頭を下げて壁際で待機していた。
「トリノ、今集まれるものたちを集めた。 行こう」
アニム王の言葉に従ってギルマスは会議室に移動。
会議室には王国の重鎮や騎士団長以下、各隊長がいる。
モニターはそれぞれ世界のギルドとつながっていた。
会議室の机の中心部分に地球の球体ホログラムが表示されていた。
各ギルドにも同じようなものが同時に表示されているはずだ。
その世界各地に赤い点が蕁麻疹のように広がっていた。
そして、決して遅くはない速さで赤い点が重なり数が減って行く。
重なった赤い光は少し光度が増しているのか、強く表示されているようだ。
会議室に集まった人たちを見ながらアニム王が言う。
「ついに邪王が現れたようだ。 見てもらうとわかるように赤い点が現在把握できている、レベル40を超える者達だ」
アニム王の言葉を聞き、議場は騒然となる。
「おぉ・・レベル40とは・・」
「大丈夫なのか?」
「防御は問題ないと聞いている」
「倒せるのか?」
「あの者がいるではないか・・」
・・・
・・
「まずは安心して欲しい。 邪王たちはお互いを求め合う。 そして、帝都以下、ギルドのある場所の防御は問題ない。 守るだけならば、ルナの攻撃にも耐えられるだろう」
アニム王のその一言で議場は落ち着いた。
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