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205 ゲリラの英雄



しばらく世界は何の変化もなく、普通に時が過ぎていた。

帝都においてもギルドネットワークを行き来する飛行船は通常運転だ。

ただ、それぞれの街から出るときには光学迷彩のような装置を付与されていた。

周囲からは視認できない。

ちょうど帝都の街を外から見るような感じだ。

それに飛行船自体に結界が施され、乗員の魔素が感知できないようになっている。

それぞれの街の外に出る冒険者はほとんどいなくなっていた。

帝都騎士団にしても同じだった。


<ロシアと中国の境:昔の地図上>


それは起こるべくして起こったというものであり、突然でもあった。

邪王出現。

帝都システムから独立して、自分達だけで好き勝手に生きてきた連中がいた。

元ゲリラなどの連中が多く集まっていた、いや潜伏していた場所。

前の邪神王の戦いの時、特に動くこともなく破壊を免れた村。

また、戦いの時に逃げ延びた連中の集まった集落など。


レベルのある世界になり、ゲリラ活動などをしていると、突然頭の中に変な声が聞こえた。

『レベルが上がりました』

『経験値を獲得しました』

いったい何のことかわからない。

ただ、その声が聞こえる度に自分たちが強くなってゆくのがわかった。

それ以降も変わることなく略奪や破壊活動を繰り返す。


人でないものを見たときには驚いたが、倒したり逃げたりしながら逃げのびた連中が集まっていた。

今では最高レベルが28くらいの人が数人いる。

世界の街を回り、いろんなことを学んできた。

帝都というものが出来上がり、妙な世界が出来上がっていた。

ただ、自分たちの思い通りのことができる世界でもあった。

魔法などというものがある。

いろんな街でギルドという場所があり、情報を得るのにとても役立った。

だんだんと世界状況がわかるようになる。

だが相変わらず自分たちで街を運営するというよりは、小さな街を襲ったりする方が慣れていた。

昔、国のお偉いさんたちが自分たちを顎で使っていたが、そんな連中を遠慮なくぶっ殺したりできた。

スッキリしていた。

しかし、ゲリラたちの暗黙のルール。

帝都システムを持つ街には手を出すなということだ。

ギルドを持つ街と言ってもいい。

リーダーの指示に従わずに襲撃した部隊があった。

結果は全滅だった。

誰一人として生き残るものがいなかった。

帝都騎士団は決して容赦しない。

ゲリラの戦力が有利そうなら、すぐに手を打ってくる。

それほどのタイムラグなくより強い部隊がすぐに派遣される。

ゲートを使って送り込まれてくるのだが、ゲリラの連中がそれを知ることはない。

増援された騎士団は迷うことなくゲリラたちを殲滅する。

決して逃れられることはない。


ただ、ギルドがない街や帝都システムのない街などはほとんど無関心だった。

そんな街を襲っては生きながらえていた連中だ。

気が向けばダンジョンにも行ったりもしたが、どうも帝都の連中のようにレベル上昇に固執する気にはなれなかった。

魔法は面白い。

攻撃力も上がる。

だが、自己鍛錬というものが身についていないようだった。

気が付けば略奪によって生きてきたのだ。

自分を磨く教育など受けているはずもないだろう。

そんなゲリラの街で1人の英雄が誕生していた。

シンという戦士だった。

戦闘術に優れ、仲間からの信用も篤い。

気が付けばレベル29になっていた。

シンはこんなゲリラ中では珍しく、レベルに興味を示していた。

当初は仲間たちと一緒に、昔の中国やロシアの街を襲撃していた。

相手とのレベル差はかなりある。

おもしろいように人が狩れる。

好きなように物を持ってこれる。

移動もすさまじく速い。

俗に言うスーパー〇ンだ。


「シン隊長、この金のネックレス見てください。 あの家の連中が持ってました」

「今さら金など役に立たないが、お前が入手したんだ。 お前のものだ」

隊員は喜んでいた。

「シン隊長、今度帝都ってところに行くみたいですが、大丈夫ですか?」

「あぁ、いろんな街の連中の言葉によると、ダンジョンっていうシステムがあるみたいだ。 そこへ行けば今よりも強くなれるっていうぞ」

「ハハ・・俺たちはシン隊長が強ければそれでいいんですよ」

部下達が笑いながら答えていた。


シンはしばらくして帝都のダンジョンに行った。

何でも、利用するにはライセンスカードなるものが必要らしく、すぐに作成できた。

シンはダンジョン25階層くらいまで攻略して帰投。

全然面白くない。

魔石など手に入れても意味がない。

売っても帝都の通貨になるだけだ。

これなら今まで通りに街を襲撃したり、たまにその辺りに出現する魔物を倒していた方がいい。

とはいえ、この先の階層へと進むの難しかっただろう。

命を落としていたかもしれない。

そういう意味では運が良いとも言える。

まだ邪神王が出現する前のことだ。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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