表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/236

200 危険、危険



<嫁の家>


もうすっかりお義母さんは自分の家よりも嫁の家の住人のようだ。

凛たちと遊びながらニコニコしていた。

凛がスラちゃんにいろんな要らないものを与えている。

スラちゃんは何でも食べる、消化する。

スラちゃんのレベルは1。

そんなことはお構いなしに凛の遊び相手だ。


スラちゃんをなでなでしながら凛がつぶやく。

「ねぇ颯ぇ、スラちゃんにバーンを食べさせたらどうなるのかな?」

お義母さんの笑顔がなくなる。

嫁も凛の言葉が耳に届いたようだ。

「え? 凛・・あなた・・サイコパス?」

思わずつぶやく。

「凛、何言ってんだよ。 そんなことできるわけないだろ! バーンはドラゴンなんだぞ。 それに俺の友達だ。 スラちゃんだってそうだよ」

颯がムッとして凛に言う。

「うん、ごめんね。 でもね、スラちゃんって何でも食べるから・・なんとなくそう思ってみただけ」

バーンは凛の言葉を聞き、颯の頭でバタバタしていた。

「危険、危険、危険・・」

と連呼してうるさい。

今はおとなしくなっている。

颯がそっと頭から降ろし、なでなでと撫でている。

「凛、バーンが驚いているじゃないか。 人の言葉がわかるんだから・・」

「うん、ごめんね。 そんなつもりじゃなかったんだけど・・う・・うぅ・・うわぁーん・・」

凛が泣きながらスラちゃんを抱きしめる。

スラちゃんはピトッと凛にくっついていた。


「ふぅ・・まったく・・凛、泣いても仕方ないでしょ。 きちんとバーンに謝って、ね」

嫁の言葉に凛がうなずきながらバーンのところへ行き謝っていた。

「凛、明日学校休みだし、テツのところへ行って美味しいもの食べさせてもらおうよ」

颯がいきなり言葉を出す。

凛が泣いているのを見て気遣ったのかもしれない。

嫁は颯の言葉に一瞬ドキッとした。

そして凛の方を見ている。

「う~ん・・おいしいものかぁ・・いいよ。 じゃあ明日パパのところへ行こうね。 ママも一緒に行くでしょ?」

「う、うん・・」

嫁の返事はぎこちない。

返事をしつつも自分に言い聞かせる。

なぜ、私が気を使わなきゃいけないのよ。

あの男はいつでも来ていいって言ってたじゃない。

大丈夫よ、うん、大丈夫。

「そ、そうよ、大丈夫よ」

「ん? どうしたのママ。 何が大丈夫なの?」

凛がキョトンとした顔をして嫁を見る。

「ううん、何でもないの。 さ、明日行くところも決まったし、もう寝ましょう」

嫁は凛と颯を寝室へと送って行く。


<テツの屋敷>


俺はいつも通り目覚めて朝食を済ませていた。

今日はレアさんが来るはずだ。

9時だったよな?

テュールさんたちには伝えている。

妙に俺は落ち着かない。

女の子が家に訪ねてくる。

・・・

こんなソワソワしているなんて、学生じゃないか!

なんでこんな気持ちになるんだ?

慣れてないのはわかる。

今までも片手で数えるほどというか、数えるまでもない。

家に女の人を招待したなんてことはないんじゃないか?

嫁くらいか?

よく覚えていない。

学生時代にはなかった。

社会人時代には自分の家を持ったことはない。

マンションやアパートだ。

全然緊張もワクワクもしなかった。

だが、今は妙な気分だ。


俺は気づかなかったが、どうやら席を立ったり座ったり、飲み物を飲んだりしながらウロウロしていたようだ。

黙ってテュールたちが見守ってくれていたようだが、ついにテュールが声をかけてきた。

「テツ様、どうかされたのですかな? 先ほどから落ち着きがありませんが・・」

「え? 落ち着きがない?」

「はい、立ち上がったかと思えば座られる。 それでコーヒーなどを飲まれたかと思うと、また立ち上がって部屋の中を行ったり来たりされておられます」

「え? そ、そうなんですか? 俺・・気づきませんでした」

「間もなくレア様が来られると思われます。 準備は整っております」

テュールが落ち着いた口調で話す。

「あ、ありがとうございます、テュールさん・・なんでしょうね・・何か落ち着かないというか、自分でもわからないのですよ」

「フフフ・・テツ様、あなた様を見ていると本当に駆け出しの冒険者のような感じですな」

テュールが微笑みながら言う。

「えぇ、よく言われます」

俺も別に嫌な気持ちになるでもなく、気軽に答える。

「ですが、その雰囲気を鵜呑みにすると怖いですな。 あなた様は人を無意識に試されているのかもしれませんな」

テュールが真剣な眼差しで俺を見つめる。

「お、俺が試している?」

「テツ様、お気を悪くされたのなら謝ります」

テュールが軽く一礼をして続ける。

「テツ様が意識しておられるのでしたらそれはそれで怖いですが、相手も人です。 そういった雰囲気は伝わるものでしょう。 試すという言葉は悪いですが、相手がテツ様をなめてかかると大やけどをするということです」

俺はテュールの言葉を聞きながら考えていた。

そんなこと、思ってもみなかった。

ただ素直にその場その場で反応していただけだ。

でも、考えてできるものでもないだろう。



最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


よろしければ、ブックマークなど応援お願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ