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192 セイレーン



「おぉ、これはちょうどいい。 ワシも何か甘いものが食べたくなっていたのだ」

ルナがいきなり発言する。

テュールが軽くうなずくと、ヴェルがドアの外へと退出していった。

エイルとテュールでレアたちの元に食事が運ばれる。

ルナは先ほどの話し合いのことなど頭から消えているようだ。

テュールたちが食事を並べ終わると、ヴェルがスイーツを持ってきてた。

本来なら食後に出される予定だったが、ルナの言葉に反応したらしい。

ルナの前にだけ、そっとテュールがチーズケーキを置く。

ふわっとした感じのするチーズケーキだ。

「おぉ、気が利くではないかテュール!」

喜んでいるルナにレアが一言。

「ルナ様、デザートは食後に食べるものですよ」

「レレよ、ワシはこれが食事なのだ」

・・・

レアに言葉はない。

レアはそうですかという感じで、テュールの出された食事を品よくいただく。

ロイヤルガードたちも同じように食事をしていた。


◇◇

<帝都ダンジョン43階層>


おそらく誰も到達はしていないエリアだろう。

テツ、キョウジ、シルビアがいた。

テツとキョウジは水の上を歩いている。

シルビアは近くの島に立ってテツたちを見ていた。


「テツ、クラーケンって魔物だがレベル43って見えるぜ。 セイレーンってのが、1・2・3・・全部で5体か」

キョウジがつぶやく。

俺の索敵と同じくらいの能力だろうか。

俺は複雑な心境だ。

こんな強い男が武具にも恵まれてレベルも上昇している。

脅威だろう。

俺が見たキョウジのレベルは42。

俺は少し考えていた。

すると、俺の耳に歌声のような音が聞こえてくる。

とても心地よい歌だ。

目の前の景色が揺らいでいる。

揺らいでいるが自分ではあまり自覚できないようだ。

・・・

周りに誰もいないのか?

ここは・・どこに・・。

ドシュ!

俺の頬を何かがかすめた。

俺は刺激を感じた頬の側をゆっくりと向く。

横に紫色に燃えている矢が刺さっているのが見える。

俺は頬に触れてみる。

ん?

赤いものが・・俺の頬から血が流れているのか?

俺の意識がだんだんとはっきりとしてきた。

おかげで目が覚めた。

自分が意識朦朧としていることすらわかっていなかったようだ。

矢に貫かれて燃えながら蒸発していく魔物を見る。

!!

「うぉ! バ、化け物!」

俺は見るなり驚く。

顔が鬼のような感じに見えたが、すぐに消滅。

その周りにウゴウゴと同じような顔の魔物が集まっていた。

き、気持ち悪いな・・こんな顔で接近されたら吐きそうだ。

エイ〇アンじゃないぞ。

セイレーンだ!


なるほど、歌声で船乗りをおびき寄せて捉えてしまうという神話通りか。

しかし、きれいな歌声に反してこの容姿。

気の毒だな・・って分析している場合じゃない。

俺は飛燕を抜き、セイレーンに向かってダッシュする。

ズパン!

ズパン!

連続で2体のセイレーンを斬った。

セイレーンたちは驚いているようだ。

残り2体だが、難なく討伐。

飛燕を収納。


一体何だったんだ?

俺はそう思いキョウジの方を見ると、ボーッとしてどこを見つめているのかわからない感じでゆらゆらと立っている。

ゆっくりと近づいて、キョウジの肩を叩いてみる。

ポンポン・・。

あれ、反応しないな。

ボディに1発掌打を放つ。

ドン!

「ぐふ・・」

キョウジがその場で膝をつく。

「・・くぅ・・いってぇ、いったい何だ?」

キョウジが顔を上げて辺りを見渡す。

「ん? テツじゃねぇか・・あれ? 俺、何してたんだ? いや、クラーケンを倒そうかどうか思っていたはずだが・・」

キョウジがそこまで言葉を出すと、俺とキョウジは一緒の方向を見つめる。

クラーケンが水上に現れてきた。


俺はその姿を見ると思い出していた。

確かウルダが雷をくらったはずだ。

そう思うが早いか、雷が落ちてくる。

パシューーン!!

俺は直撃を避けることができた。

キョウジも躱していたようだ。

凄いな。

俺には予備知識があるが、キョウジはその状況で的確に判断したのか?

恐ろしい感覚だな。


クラーケンが白い大きな手というのか触手を伸ばしてくる。

そしてムチのように振り回してきた。

俺もキョウジもクラーケンの攻撃をうまく躱している。

触手が俺の方へ飛んで来た。

飛燕で切断。

ズパン!

キョウジはカウンターで触手を破壊していた。

クラーケンは触手を5本ほど失っただろうか。

俺の足元から触手が伸びて来て俺の足首を掴む。

!!

そのままクラーケンが俺を水中に引きずり込んでいった。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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