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19 ヴァヴェル

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



「あ、こちらです。 この扉の向こうにおさがおられます」

赤いドラゴンがそう言うと、扉をゆっくりと開けてくれた。

ズーーーーン・・。

扉が重そうに開き、奥の椅子に黒い服をまとった人が座っている。

赤いドラゴンは一礼をして、その黒い服を纏った人に近づいて行く。

俺たちも後をついて行く。

黒い服の前に到着し、赤いドラゴンが頭を下げ報告をしていた。

「ヴァヴェル様、ただいま戻りました。 この者たちは、ヘルヘイム様の客人のようです。 お連れいたしました」

黒い服を纏った人物は、椅子に片肘をつきながら報告を聞いていた。

黙ったまま何も言わない。

・・・

報告を終えた赤いドラゴンは、長いこと下を向いていたが顔を上げる。

ヴァヴェルと呼ばれた人物をゆっくりと見る。

「ヴァヴェル様・・」

赤いドラゴンが驚いていた。


ヴァヴェルと呼ばれた人物は、椅子から立ち上がりゆっくりと俺たちの方へ近づいて来る。

「ま、まさか・・」

俺たちの前、いやルナの前に近づいて行くと震える手を伸ばしてゆく。

「ルナ様ですね」

ヴァヴェルは両手でルナの右手を丁寧に取ると、自分の額に当ててルナの前に片膝をついていた。

!!

おい!!

ルナさんよ、あんた一体どれだけ規格外なんだ。

俺は心の中で叫ぶ。


「ヴァヴェルよ、久しいな」

ルナが言う。

「はい。 まさかルナ様にお会いできる日が来るとは思ってもみませんでした」

ヴァヴェルは言う。

「うむ」

ルナは微笑みながらうなずく。

俺と赤いドラゴンだけが、何をしていいのかわからない。

ただ、ジッとしているだけだった。

「ヴァヴェルよ、紹介しよう。 テツだ。 地球人だが、少し特殊でな・・」

ルナが言う。

「はい。 先ほどから感じております、我が神の息吹を。 クイーンバハムート様に近い何かを・・」

ヴァヴェルがそういうと、赤いドラゴンが飛び上がるように驚いていた。

俺は言葉がない。

ただ、そのヴァヴェルと呼ばれる人物を俺は見つめていた。

「ふむ。 私に興味が御有りかな? 私は単なる龍神の代行者に過ぎませんよ。 さ、こちらへ」

ヴァヴェルは微笑みながら言う。

ヴァヴェルに案内されて、玉座の横の応接室らしいところへ移動。


俺たちは上品に整っている部屋に入る。

豪華な椅子が並んでいた。

今まで実物で見たこともないような椅子だ。

ルナは平気でサッサと座る。

俺は、どの椅子に座ってよいものやら悩んでいた。

「どうぞこちらの椅子へ」

ヴァヴェルが手を差し出してくれる。

はぁ、と返事をしながら俺はその椅子へ座らせてもらう。

赤いドラゴンもヴァヴェルの近くに座った。


「さて、ルナ様・・それにテツ様でしたね。 初めまして、龍族の長のヴァヴェルです」

ヴァヴェルが丁寧に挨拶をする。

俺も急いで椅子から立ち上がり、挨拶をした。

「お、俺、いや私はテツと申します。 地上から来ました。 よろしくお願いします」

ヴァヴェルはにっこりとして聞いていた。

「ヘルヘイムの領地を抜けてきたところを見ると、信頼に値すると思います。 まぁルナ様ですから、問題もありませんが、我々龍族も数が少なくなってきております。 どうやら魔素の循環が徐々に悪くなっているようなのです」

ヴァヴェルが話していた。

俺はそれを聞いた瞬間に思った。

ほんとか?

確か地上から滝のように魔素が流れ落ちていると言っていたが・・。


ヴァヴェルの話を聞いていると、ここに移動してきたときには問題なく魔素は全体を循環していたようだ。

だが、時間が経過してくるとどうも魔素が薄くなったような感じたしてきたそうだ。

それに光の神の種族が増えてきていた。

その関係か?

そう思って経過観察。

ヘルヘイムに聞いてみても、原因もわからないという。

原因がわからないまま時間が経過。

そのうち、どうも光の神を崇拝している一部のものが魔素の流れをゆがめているのではないかと思うようになったそうだ。

ヘルヘイムのところから調査員を派遣して調査しているとそれがわかったという。

だが、行動を起こそうにも、次の行動につながる魔素が足りない。

行動を起こせずただジッとしていたという。

まるで真綿で首を絞められているようだな。

そんな時に俺たちが現れたというわけだ。

・・・

・・

「なるほど・・あの神官たちが行っているというわけか」

ルナがつぶやく。


「はい、間違いないと思います。 我々龍族もそうですが、光の神から遠い種族はこうして集まって種を保っているのです。 ヘルヘイムの国が関所みたいな感じになっており、守っているわけです。 情けない話です」

ヴァヴェルが苦笑しながら言う。

「そうか」

ルナはそう一言だけ口にしていた。

「ヴァヴェルさん、先程クイーンバハムートの事を言われていましたね」

俺が言葉を出す。

赤いドラゴンも俺の方を向く。

「えぇ、テツ様から少しそんな雰囲気を感じたものですから」

「そうですか。 まずは、クイーンバハムートのことですが、地上で顕現しております」

!!

俺がそう言うと、ヴァヴェルと赤いドラゴンは席から立ち上がっていた。


「それは本当ですか?」

ヴァヴェルが両手を机につき、前のめりになりながら聞いてきた。

・・・

そんなリアクションされたら、ちょっと引くぞ。

「え、えぇ・・俺が直接会ったので間違いないです」

俺がそう言うと、さらに驚いていた。

「なんですと? クイーンバハムート様に謁見されたのですか? 我々ですらお目にかかることも稀というのに・・」

マジですか?

そんなこと言われると、有限の存在になったなんて言ったら俺・・殺されるんじゃないだろうな。

俺が少し悩んでいると、ルナが言う。

「あぁ、事実だ。 それに顕現して命を得たらしいぞ」

!!

ちょ、ちょっとルナさん。

あんたアホですか?

シルビアがアホじゃなくて、あんたが一番アホでしょう!

俺は内心レッドアラートだ。

どうしていいのかわからない。


ヴァヴェルはルナの言葉を聞き、少し放心状態でいたようだが席に座り直す。

少し落ち着いたような感じがすると、言葉を出す。

「そうですか・・有限の存在になられたのですね。 あの方のご希望でしたから・・」

ヴァヴェルは微笑みながら言う。

俺は意外な感じを受けた。

激怒して、なんてことをしてくれたんだって来ると思っていた。

違ったようだ。


ヴァヴェルは俺の方を向いて頭を下げる。

「テツ様、ありがとうございます。 クイーンバハムート様を救っていただきました。 このご恩は決して忘れることはありません」

「い、いえ、そんな大げさな。 あ、それに名前もあるのです」

俺はうろたえながら言う。

「え? 名前があるのですか?」

ヴァヴェルが言う。

「はい、ゼロという名前です。 今から僕の人生が始まるんだって、ゼロ、クイーンバハムートは言ってました」

俺がそう言うとヴァヴェルはゼロ、ゼロ・・と口ずさみながら目を閉じていた。

少しして大きくうなずき、一人納得したようだ。

「そうですか。 なるほど・・」

赤いドラゴンは放心状態のままだ。

「テツ様。 我が龍族として、クイーンバハムート様の願いに添う行いをしていただき、感謝の言葉もありません。 ありがとうございます」

ヴァヴェルが言う。

「い、いえ、俺は何もして・・本当に、何もしていないのです。 ただゼロの居城に行ったら偶然会えただけなのですから」

俺は焦ってしまった。

まさかお礼を言われるなんて思ってもみなかった。

逆にブチ切れされるんじゃないかと、身構えていたくらいだ。

「何にせよ、それがクイーンバハ・・いえ、ゼロ様のご意思だったのですから。 それに、この世界が整えばゼロ様ともお会いできるかもしれませんね。 そういったことを考えると、やはりルナ様とテツ様は、この世界に招かれたのかもしれませんね」

ヴァヴェルが少し考えながら発言する。


その後、ヴァヴェルがいろいろと話してくれた。

ルナも地上でのことなどを話す。

俺も補足的に邪神王などが現れて、地上も今までとは違う世界システムにシフトしたことなどを説明した。

・・・

・・

「そうですか・・なるほど」

ヴァヴェルが興味深そうにうなずいている。

赤いドラゴンは黙ってジッとしていた。

おそらく何を言っていいのかわからないのだろう。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

よろしければ、ブックマークなど応援お願いします。

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