188 シルビアの勝ちだな
それにしても確かキョウジはビームで貫かれたはずだが。
俺は不審に思いながらもキョウジに近づいて行く。
シルビアも俺と一緒に歩いて行く。
しばらくしてタイタンが蒸発。
キョウジはレベル41になっていた。
「キョウジさん・・大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ないと言いたいところだが、危なかった」
「えぇ、俺もそう思いました。 確かビームのようなもので貫かれていましたよね?」
「ハハ・・俺のスキルだよ。 まぁ分身の術みたいなものだな」
・・・
そんなスキルがあったのか。
俺にはその方が衝撃だ。
分身の術?
忍術じゃないか。
自分の身替わりってことだろ?
違うか?
俺も忍者に戻ってやり直した方がいいのかな?
いや、スキルは個人によって違うはずだ。
俺には発現しないかもしれない。
・・・
考えても仕方ない。
まぁいい。
俺たちは次の階層への入り口に向かって行く。
42階層のフィールドに到着。
確か、ここで俺のダンジョンカウントは終わっている。
ヒュドラやサーペント、ハーピーなどがいたはずだが・・。
俺がそんなことを頭に浮かべると、すぐに索敵にひっかかる。
キョウジやシルビアもわかったようだ。
ヒュドラ:レベル41,サーペント:レベル37×3体、ハーピー:レベル36×5体が表示される。
後は特に注意するような魔物はいない。
普通の野良魔物だろう。
とはいえ、レベル30前後の種類ばかりだが。
「なるほどな・・結構な威圧感を感じる魔物だ」
キョウジがつぶやく。
俺はキョウジの方を見て情報を提供。
「キョウジさん、あの遠くに見えるヒュドラという魔物ですが、鈍い動きかと思うと飛びあがって攻撃してくるのです。 予備知識がなければ少し戸惑ってしまうと思います」
俺の言葉を聞き、キョウジが笑う。
「ハハハ・・テツ、ありがとう。 だがな・・いや、別にいいか。 でもなぁテツ、俺が完全な敵側であればどうするつもりだ。 今まで仲良くしていた振りをして、肝心な時には助けてくれない。 結局見殺しにされる」
「う~ん・・そうですね。 信用というと怪しいですね。 ただ目の前の敵の情報は共有している方がいいでしょう。 それに相手に期待するから裏切られたなんて思うのでしょう。 初めから何も思っていなければいい」
俺は思っていることを正直に伝えてみる。
俺はこんな世界になる前からそうだったと思う。
仕事をするときも、信用しないと始まらない。
だが、期待することはしない。
それができなければそれまでのことで、違う方法を構築すればいいだけだ。
最後に仕事ができなくてもそれは仕方ない。
そう思っていた。
明言することはないが。
責任は果たすが、できないこともあるだろう。
それで文句を言う奴等は、結局は仕事がうまくいっても文句を言うに違いない。
俺はそれで自分を納得させていた。
今もそれほど基本は変わらない。
ただ、家族になると感情が入るので違ってしまうが。
俺の言葉を聞きながらキョウジがうなずく。
「フッ、やはり似ているな・・」
「え?」
「いや、何でもない。 よし、取りあえずこのエリアのボス、ヒュドラとやらを拝むとしますか」
キョウジは微笑みながら言葉を出して両拳をガンガンと打ち合わせていた。
俺たちがゆっくりと歩いていると、ハーピーが急接近してくる。
俺たちに気づいたようだ。
俺はチラっとシルビアの方を見ると、すでに弓を番えていた。
ヒュン! と紫色の航跡を描いて矢が放たれる。
シルビアは連続で矢を放っていた。
かなり速い回転で次々に矢が飛んで行く。
見る間にハーピーたちが落下していく。
「ねぇちゃん、やるねぇ」
「ねぇちゃんではない、シルビアだ」
シルビアが弓を背中にかけ直していた。
・・・
ごっつぁんです!
シルビア、その胸・・さすがだ。
やはりフレイアよりも自然に豊かさが溢れている。
文句なくシルビアの勝ちだな。
「さてと、次はサーペントだな」
シルビアが遠くを見ながら言う。
「さすがだな、シルビア。 見事だ」
俺は思わず言葉に出していた。
シルビアはニヤッと笑うと前を向く。
うねうねとサーペントが向かって来ていた。
ヒュドラも動きは鈍い。
・・・
何度見ても蛇の動きは気持ちのいいものではない。
シルビアがサーペントに向けて矢を放つ。
やはり紫色の航跡を描いて矢が飛んで行く。
3体にそれぞれ突き刺さる。
サーペントの動きが少し鈍くなる。
俺はスッと前に出るようにしてサーペントに向かう。
う~ん・・蛇だよな。
やっぱ気持ち悪い。
そう思いつつ、飛燕で軽く薙ぐ。
俺的には作業になっていた。
キョウジも難なくサーペントを倒す。
残り1体だが、俺たちが倒している時にシルビアが追撃をしていたようだ。
ほぼ同時に3体のサーペントが消える。
さて、残るはヒュドラだけだ。
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