184 意外な出会い
確かに。
すべてに答えがあるわけじゃない。
考えてもわからないことは放置だ。
そのうち俺の中から何か言葉として出て来るだろう。
俺はそう思うと気持ちを切り替える。
さて、次の階層へ進もう。
あれ?
どれくらい時間が経過したんだ?
少し落ち着いたらそんなことが俺の頭に浮かんだ。
◇◇
<マイケルたちの帰路>
ダンジョン31階層に帰って来ていた。
「マイケル、帰り道は楽だよな」
マシューが軽く口を開いていた。
マイケルはニヤッとしながら答える。
「フフ・・確かにな。 だが、俺たちが負傷していないからだ。 もし負傷していればわからない」
「・・そうだよな。 あの日本人・・なんていったっけ?」
「テツよ」
ステファニーが答える。
「そうそう、その・・なんだっけ?」
「テ・ツ!」
ステファニーはイラッとしたようだ。
「わ、悪かったよステファニー。 日本人の名前なんて覚えられないんだよ。 で、その日本人だが、ずっと頭に引っかかっているんだ」
マシューのその言葉にみんなが注目する。
「あいつは1人であの場所、しかも33階層なんてとんでもないところにいた。 普通じゃないぞ」
「あぁ、それは俺も考えていた。 だが、考えてもわからない。 こんな世界になってレベルというのが絶対的な基準になっている。 あの日本人のレベルが俺たちより高いだけだろうが、そのレベルがいくつなのかわからないな」
「そうなんだよな。 俺たちのレベルが32、マイケルにしても33だ。 まさかそれ以上のレベルなんて考えられなかった。 いったいどれくらいなんだろうな」
マシューとマイケルがうなずいていた。
「ふぅ・・ほんと男ってそんなことばっかりよね」
「うんうん。 確かに強いに越したことはないけど、強くなり過ぎてもどうかって思うわ」
「えぇ、誰も近づけないんじゃない?」
ステファニーとジェシカが会話していた。
「え? でも、強かったら何でもできるぜ」
「はぁ・・これだから男はバカなのよ」
ジェシカが呆れるように言う。
「な、何がバカなんだよ」
「マシュー、あなたの言っている強さって肉体の強さでしょ? 見た目だけよ」
ジェシカの言葉に思わず次の言葉を失う。
「そうそう、そんな強さなんて要らないの。 もっと人間として強くあって欲しいわ。 その強さに優しさが備わるのよ」
「ジェシカ、いいこと言うわね。 今、私も同じことを考えていたわ」
ステファニーがうなずく。
「そうかなぁ・・肉体的に強ければ今の世界では何でもできると思うけどなぁ・・」
ステファニーとジェシカが向かい合う。
「「はぁ・・」」
ため息をつきながらジェシカが言う。
「マシュー、強さの捉え方が違うわね。 危害から守る物理的な強さならそれでもいいと思うわ。 でも、その強さを持ってその人の意思を押し通して来たらどうなると思う?」
マシューは答えない。
「マシュー、わかった? 力で強制されたら逆らえない。 その分、負のエネルギーが蓄積される。 いつか爆発するでしょうね。 押さえつけられた方は死んでもいいと思って逆らうと思うわ。 私ならそうする。 そして誰もいなくなるのよ」
ジェシカの言葉に誰も弁明できない。
・・・
「え、えへん。 ジェ、ジェシカがいいこと言ったわ。 私だってそう思うわよ。 だからってマシューの言う力を否定しているわけじゃないの。 なんていうのかなぁ・・使い方次第ってことね。 あのテツって日本人がそういう方向に行かないように祈るだけだわ」
ステファニーがジェシカのフォローをしているようだ。
「・・わかったような気がするが、とにかく強さはあった方がいいな」
マシューは軽く答える。
「「あはは・・」」
ジェシカもステファニーも笑うしかなかった。
そこまでだった。
マイケルが片手を上げる。
!!
「ど、どうしたのマイケル」
ジェシカが聞く。
マイケルが銃を構えてスコープを覗く。
「いや・・何かいる感じがしたんだ・・ん? あれは・・」
スコープから顔を外し、もう1度スコープを覗く。
「間違いない。 だがどうしてこんなところに・・」
「マイケル、どうしたのよ?」
ステファニーだ。
スコープから顔を外し、仲間の方をマイケルが向く。
「いや、セーラ大尉がいるんだ。 それも1人で」
!!
「セーラ大尉って、あのセーラ・マクダネル?」
「あ、俺知ってるぞ。 あの陸軍大尉のエリートだよな?」
「うん、私も知ってる。 武装ロイドの開発に関わったとかいう優等生よ」
「そうそう、有名人だものな。 でもそんな有名人さんがなんで帝都のダンジョンなんかにいるんだ? しかも1人って・・」
マシューが不審そうにつぶやく。
マイケルはまたスコープを覗いていた。
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