表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/236

18 赤いドラゴン

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



谷底から上を見上げると、遠くに光らしき点が見える。

いったいどれくらい降りて来たんだ?

周りはほとんど真っ暗だが、俺やルナはスキルのおかげでよく見える。

ジメジメして気持ち悪いが、どうやら道は続いているようだ。

この方向で合ってたよな。

俺はそう思い意識を集中してみる。

ピピ・・。

魔物の反応がある。

バジリスクが2体いる。

倒すのも面倒なので、駆け抜けよう。

「ルナさん、魔物がいますが、相手にせず駆け抜けていいですか?」

「テツよ、別に構わんが、ワシをおんぶしていけよ。 降りて来るので疲れた。 それに何やら甘いものが食べたくなってきた。 ワシも人間に近づいてきたのかもしれんな」

ルナがあくびをしながら言う。

嘘つけ。

ただスイーツが食べたいだけだろ。


俺は仕方なくスイーツを出す。

モンブランを出した。

「おお、これはモンブランではないか。 フレイアのところでも食べたが、おいしいのだ」

ルナは俺の手からモンブランを取り上げると、パクッと早速半分食べてしまった。

「うまいのぉ」

ニコニコしながら食べている。

片手に半分になったモンブランを持つルナを背負い、俺は歩き出した。

「テツ、頼むぞ」

ルナが背中で言う。

「では、行きますね」

俺はそういうと、軽くダッシュする。


一気にバジリスクを抜き去り、谷に沿って道を走って行く。

かなりの速度だろう。

別に全力ではなく、なるべくルナに振動を伝えないように走る。

無論、風魔法で防御もしている。

しばらくすると、谷の出口だろう・・光が見えて来た。


途中、結構な魔物と出会うが、すべて無視。

相手も俺たちを認識しているのかどうかも怪しい。

バジリスクを抜けると、キマイラなどがいた。

ヒュドラなどの気持ち悪い蛇系の魔物もいた。

戦闘はせずにひたすら移動。

楽と言えば楽だった。

背中のルナはいつの間にか眠っていたようだ。

俺の頭の後ろで、スースーと小さな寝息が聞こえる。

のんきなものだな。

俺はそう思いつつも、ルナを起こすことなく移動していた。


谷を抜けた。

一気に視界が開ける。

光がパァッと降り注ぐ。

楽園のようだ。

緑が広がり、大きな川も見える。

どこまでも草原が広がっている景色だ。

俺はルナを背負ったまま、移動速度を歩きに変更。

光と緑に包まれながら歩いて行く。

!!

俺たちのところを影が通過する。

俺は油断していた。

あまりにも景色がきれいだったから索敵などしていなかった。


影はスッと俺たちを抜けていく。

俺はすぐに上空を見た。

ドラゴンだ。

赤い色だろうか。

遠くてはっきりとわからないが、今までアニメなどで見たことがある一般的なドラゴンの形と同じだ。

尻尾のところにトゲみたいなものがある。

背の翼をゆっくりと大きく羽ばたかせて上空を舞っている。


その姿がグン! と大きくなった。

かなり強い風と共に、俺たちの前に着陸する。

ドラゴンを初めて目の前で見たが、でかいな。

口のところから火が溢れているように見えるのはなんだ?

口って焼けないのか?

俺はそんなことを思って見ていた。

すると、ドラゴンが話しかけて来る。

「仲間のような気配を感じて来てみれば、人間のようだな」

俺は黙って見ている。

「おい、人間。 貴様、本当に人間なのか?」

ドラゴンがたずねてくる。

俺も慌てて返答をした。


「は、はい、人間ですよ。 あなたはドラゴンなのでしょう?」

「アッハハハ・・我を見てドラゴンと思えなければ、お主の目がおかしい」

ドラゴンは言う。

俺は、あんな火の見える口でよく上手にしゃべるなぁと思いながら見ていた。

「人間、なぜドラゴンの里にいる? 谷で道に迷ったのか?」

ドラゴンが聞く。

「いえ、そういうわけではないのですが・・俺はテツって言います。 ドラゴンのおさに会いに来たのです」

俺がそう言うと、ドラゴンがゆっくりと前脚というか、黒い爪を持った手を伸ばしてくる。

黒い爪を俺の目の前で止めて、

「テツと言ったな、人間。 何故、我が長に会いに来たのだ」

「実は・・・」

俺は正直に話すことにした。

この世界に転移してきたこと。

ヘルヘイムに紹介されて、この場所へ来たことなど・・。

・・・・

・・

「なるほどな。 地上への帰還方法か。 我が長なら良い知恵をくれるだろう。 ヘルヘイムの紹介と言うしな・・どれ、ワシがおさのところへ連れて行ってやろう」

ドラゴンが言う。

「あの・・俺の話を信じるのですか?」

俺の言うことをあまり疑わないドラゴンに聞いてみた。

「信じるも何もない。 この谷に来るには、ヘルヘイムの国を通過せねばならない。 それにあの谷を越えて来たのだ。 我が長に会う資格はある」

ドラゴンはそう言うと、ついて来いという。

ドラゴンが翼を一つ羽ばたかせると、上空へ舞い上がる。

俺はその後を追い、地上を走ってつく。

乗せてくれるわけじゃないのか。

俺は少し残念だった。


ドラゴンは俺から見える高さだろう、その高さを維持しながら飛んでいる。

「あの人間・・我の速度についてきているのか。 いったい何者なのだ。 それに人間にしては、龍族の雰囲気も感じる・・わからんな」

ドラゴンはテツを見ながらかなりの速度で飛んでいた。


地上ではテツがルナを背負って走っている。

ほんとにルナさんはよく寝るな。

俺はそう思いつつ、ドラゴンの後を追う。

それほど速い速度でもないので、ルナに負担もかけないだろう、風魔法で身体も覆っているしな。

1時間ほど移動しただろうか。

この世界では時間がよくわからない。

自分の感覚でそう感じているだけだ。

昼と夜の区別は一応ある。

夕方も朝もある。

だが、太陽はない。

月もない。

景色がそう変化しているだけだが、光は眩しいし夜は暗い。

ま、あまり気にしてもそうなっているのだから、仕方ない。

俺はそう思って、考えるのをやめていた。


ドラゴンが飛びながら俺に近づいて来る。

「人間、間もなくおさの居城だ」

ドラゴンがそう言い、山の間を抜けると大きな岩の城が現れた。

大きいな。

それが第一印象だった。

ドラゴンが丸ごと着陸できる入り口がある。

赤いドラゴンがそこへ着陸した。

俺は居城の入口の方へ到着。

門は開いている。

門をくぐり、居城の大きな扉の前に来た。

扉がゆっくりと開いて行く。

中から、赤い服をまとった壮年の男が現れた。

俺は驚いた。

まるでミランのような雰囲気じゃないか。

いや、フェニックスか?

そんな感じだった。

でも、誰?

「ん? あ、そうか。 我だ、赤いドラゴンだ」

その壮年の男が言う。

「え?」

俺が言葉に詰まっていると、壮年の男が言う。

「居城では人型に変身しているのだ。 効率がいいからな。 元の姿では不便でな」

そう言いながら、俺たちを中に誘導してくれる。

すると、俺の背中のルナが目覚めたようだ。

「・・う、うぅ~ん・・よく寝た。 テツの背中は気持ちが良いな」

・・・

ルナさん、あんたねぇ。 

「お、どうやらドラゴンの城についたようだの」

ルナはまるで他人事のように言う。

スッと俺の背中から降りると、俺と一緒に歩いて行く。


赤いドラゴンは俺たちを先導してくれている。

少し後ろを振り返り、チラチラとルナを見ていた。

ルナが歩きながら言う。

「なんだドラゴン。 ワシの顔に何かついているのか?」

ルナさん、あんた相変わらず偉そうですね。

「い、いや・・そうではないが、何かこう・・我の背中に圧力を感じるのだ」

赤いドラゴンが言う。

ルナはそんな言葉を聞き流し歩いている。

「ドラゴン、貴様らはどれくらいの数が残っているのだ?」

ルナが聞く。

「え、あ、はい・・なんか調子狂うな・・なんでだろう?」

赤いドラゴンは条件反射で返事をしているようだ。


そりゃそうだろう。

ルナの方が強い感じがする。

1/10の分身体なのに、それでも魔素量というか分厚い感じがする。

「赤いドラゴンよ、ワシの質問が聞こえなかったのか?」

ルナが言葉を重ねて言う。

「あ、はい!! 我々の種族は確認されている個体では5体ほどとなっております」

赤いドラゴンは、上司に報告するように言っていた。

もうダメだな。

この赤いドラゴン、ルナに対しては対等足りえない。

俺はそう思いながら歩いていた。


最後までお読みくださり、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

よろしければ、ブックマークなど応援お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ