179 こいつは!
「あぁ、そうだ。 まさかあれほど強い魔物とは思わなかったよ」
マイケルが両肩をすくめて返答する。
「そうですか・・あの魔物は周りで騒ぎが起きると興奮するようなのです」
「なるほどね・・だから俺の狙撃で暴れたわけか」
マイケルが1人納得していた。
「それはそうと、テツさんだったわね。 あなた1人でダンジョンの攻略しているの?」
ジェシカが聞く。
「え、えぇ、まぁ・・そうなりますね」
「ほんとに~? いくら強くても危険じゃない?」
ジェシカが心配してくれているようだ。
「あはは・・そうですね。 でも、危険を感じたらすぐに引き返しますからね。 俺、逃げ足は速いんですよ」
「「あはは・・」」
ジェシカとマシューには受けたようだ。
「テツ・・君はコメディアンかい? あはは・・」
マシューが言う。
俺はマイケルたちのパーティが装着している装備が少し気になっていた。
マイケルが気づいたのだろうか、声をかけてきた。
「どうしたんだい、テツ? 何か俺たちについているのかい?」
「い、いえ・・珍しい防具を装着しているなと思って・・」
「あぁ、これか。 これは武装ロイドの簡易版プロテクターなんだ」
マイケルが答えてくれる。
「武装ロイド?」
俺は返答しつつも思い出していた。
そういえば、邪神王大戦の前に連合国の軍隊が使っていたロボ兵器の名称だったはずだ。
「うむ。 我が国・・といっても今はないが、アメリカが開発した戦略兵器だよ。 当時は人が乗り込むものだったが、俺が人が装着できるプロテクターとして依頼していたんだ。 なかなかカッコいいだろ?」
マイケルがガッツポーズで見せてくれる。
なるほど、確かにカッコいい。
身体を覆っているのに、とても動きやすそうだ。
まぁ、性能的にはじいちゃんの防具に勝るものはないだろう。
俺は確信する。
「カッコいいですね」
俺の返答にマイケルが大きくうなずく。
「ところで、テツはまだこの先に進むのかい?」
マイケルが聞いてくる。
「えぇ、もう少し先に行ってみます。 危なくなればすぐに引き返しますがね」
「そうか・・気をつけてな。 俺達は一度引き返すよ。 このままじゃ確実にダメだろうからな。 この階層辺りを何度か繰り返して地道にレベルを上げるよ」
マイケルが気さくに話してくれる。
「そうですか。 気を付けて」
俺も軽く挨拶を返す。
マイケルたちはパッと気持ちを切り替えたのか、みんなで階層入口の方へ向かって行った。
俺はその後ろ姿を見送る。
いい引き際だ。
それにいいパーティだ。
だが、この30階層を超える先は危険だらけだからな。
かなりレベル差がないと死ぬ可能性が高い。
◇
<マイケルたち>
マイケルのパーティが歩きながら33階層の入り口に到着。
「マイケル、私たち・・ほんとに危なかったわね」
「そうそう、危うく死ぬところだったよ」
「そうね、調子に乗り過ぎたわね。 簡単にレベルが上がっちゃうんだもの」
「そうだな・・だが、ここまでだとよくわかったよ」
マイケルの言葉にみんなが注目する。
「俺たちのように簡単にレベルが上がると思って進む連中は多いだろう。 それゆえに先ほどのような目にあって途中で絶たれる連中も多いんじゃないか? 俺はそう思ったよ」
「・・・」
マシューたちは言葉がない。
「ハハ・・まぁ、そう落ち込むなよ。 いい勉強になったんだ。 これからは慎重に行くさ」
マイケルが明るく振舞う。
「あぁ、そう思うよ。 ただなマイケル、あのテツって男・・何者なんだろうな? あっさりとユニコーンを倒して余裕だったよな? それにとても戦い慣れている感じだった」
「うん、私もそう思ったわ。 見た目はそれほどでもないのに、どうやってユニコーンを斬ったのかわからなかったわ」
マシューとステファニーが言う。
「さぁな、ただ強いのは間違いないだろう。 後は、わからないな。 そんな詮索よりも俺たちのこれからのことを考えないとな」
皆が苦笑いをしながらうなずく。
マイケルの言葉に完全に納得はしていないだろうが、自分たちの上がいることを目撃したのだ。
もっと頑張ってレベルを上げようという共通認識は共有できたようだ。
◇
<テツ>
33階層から次へ続く入り口を目指していた。
「確かこの辺りにあったと思ったんだが・・違ったか?」
俺は遠い過去の記憶から探っていた。
・・・
入り口を見つける前に、索敵に引っかかるものを発見。
ん?
また、誰かが来たようだが・・。
ピ!
レベル39
!!
俺は驚いた。
そうそうこんなレベルの人はいない。
一瞬シルビアかと思った。
だが、シルビアは確かレベル38じゃなかったっけ?
いや、あれから時間が経過しているからそれくらいになっているのかもしれない。
誰だ?
俺は43階層に飛ぶつもりだったが、レベル39の人が近づいて来るので少し待っていた。
レベル39の人はまっすぐに俺の方に向かって来ている。
・・・
迷わずにこちらに向かってくる。
かなりの移動速度だ。
俺の居場所がわかるのか?
やっぱりシルビアだろうか。
俺が少し待っていると目視できるようになってきた。
!!
違う、シルビアじゃない。
誰だ?
男のようだが・・。
相手も俺を見つけているはずだ。
隠れても意味がないし、妙な行動は警戒させるだけだろう。
俺は一瞬のうちにそれだけを考えると、その場で相手が来るのを待っていた。
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