178 スタン
ユニコーンは4人をジッと観察しているようだ。
荒ぶっている感じは変わっていない。
その場でいなないている。
身体を何度か震わせると、雄叫びをあげた。
「グォォォォオオオーーー!!」
ユニコーンの身体を赤紫色の煙みたいなものが覆う。
目が赤く光っていた。
「カッ・・ハッ・・う、動けねぇ・・」
マシューが苦しそうに言葉を出す。
「クッ・・」
ジェシカとステファニーも動けないらしい。
どうやらスタンをかけられたようだ。
マイケルは身体が痺れる程度で、何とか動けていた。
「お、お前たち! チィ!!」
マイケルはユニコーンに向けて銃を構える。
ユニコーンが狙いを定めた猛獣のようにマイケルを睨む。
ドン!!
マイケルの魔力を込めた銃弾が発射される。
ユニコーンが軽く首を振る。
ギン!
ユニコーンの角に当たり、魔弾が弾かれたようだ。
!!
「まさか・・」
マイケルは驚くとともに次を構えた。
今の一撃にはかなり魔力を込めた。
それにこの装備のおかげで基礎能力が向上しているはずだ。
もしかしてあの魔物には効かないのか?
嫌な感覚が全身を駆け巡るが、次の銃弾を発射する以外に選択はない。
銃口を構えてユニコーンに照準を合わせる。
マイケルは先ほどよりも集中する。
周りの音も聞こえにくくなるくらいに集中。
ドン!!
黄色い魔弾が発射された。
おそらく次の魔弾は発射できない。
それほど集中し魔力を込めた一発だった。
ギン!
ユニコーンは首を軽く振り魔弾を弾く。
マイケルは首をうなだれて片膝をつく。
「・・ここまでか・・すまないな、みんな」
「「「ウグググ・・・」」」
マシュー、ジェシカ、ステファニーは固まったままだ。
ユニコーンが角をマイケルたちに向けて突進してきた。
「終わった・・」
マイケルがそう思った瞬間、ユニコーンの突進を妨害する影が現れた。
ガキーン!!
ユニコーンの角が空中で何度か回転し、地面に突き刺さる。
◇
<テツ>
俺は騎士団の隊員がいるであろうところへ到着しようとしていた。
!
「あれ? 騎士団じゃない・・しかし、ヤバいな」
ユニコーンが突進していた。
俺はユニコーンの前に立ちはだかり、飛燕を抜く!
ガキーン!!
ユニコーンの角が切断され、空中で何度か回転し地面に刺さっていた。
ユニコーンは突進を止め、1歩後ずさろうとする。
俺は構わずに飛燕で一閃。
ズバン!
ユニコーンの赤紫色の煙と共に首の辺りから袈裟斬りにした。
少ししてユニコーンが蒸発する。
俺は飛燕を収納すると振り返る。
1人のガタイの良い男が膝をついて俺を見ていた。
他の3人は身体が硬直している。
なるほど、スタンだな。
俺は3人に近寄って行き、背中を軽く叩いてやる。
パン、パン・・。
「ぷはぁ・・はぁ、はぁ・・なんだったんだ?」
マシューが肩で息をしながら言葉を出す。
「ふぅ・・死んだかと思ったわ。 あ、ジェシカ?」
ステファニーもホッとしていた。
そのままジェシカの肩に回復魔法をかけていた。
「あ、ありがとうステファニー・・」
ジェシカが苦笑いをしながらお礼を言っていた。
マイケルが立ち上がりながら俺の方へ歩いてくる。
「まずはお礼を言わせてくれ。 ありがとう、助かったよ」
「そうそう、ありがとう」
マシューがマイケルの後ろで声を出す。
「ほんと、助かったわ」
ジェシカたちも同じように声を出していた。
「俺はマイケル。 このパーティでダンジョンを攻略していたんだが、調子に乗っていたらしい。 君が助けてくれなければ死んでいたところだよ」
マイケルが握手を求めてきた。
俺も片手を出し握手をする。
「俺はテツっていう冒険者です。 危なかったですね」
マイケルは片手を外しニヤッとして話しかけてきた。
「テツ、君は強いんだね。 まさか刀で魔物を倒すとは・・恐れ入るよ。 見たところアジア人というか、日本人かな? 俺たちはアメリカ人なんだ。 まぁ今となってはそんな国は存在しないがね」
「ハハ・・はい、日本人です」
俺が答えると、マイケルの後ろからマシューがひょこっと現れる。
「テツは忍者だね。 サッと現れて俺たちを助けてくれた。 感謝するよ」
「ほんとに、ありがとう」
ステファニーがニコッとして言う。
「いえいえ、どういたしまして。 でも、あのユニコーンですが、初めて遭遇したのですか?」
俺は聞いてみる。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
よろしければ、ブックマークなど応援お願いします。




