177 ユニコーン
ジャイアントとマイケルの位置はかなり離れている。
ジャイアントの攻撃範囲ではない。
マイケルはジャイアントの弱点を知っていた。
ボディが弱いということを。
それにある一定距離にならなければ攻撃をしかけて来ないことも。
つまり、狙撃できるのならば、これほど効率の良いターゲットはない。
そして、それができる立場にマイケルはいた。
マイケルの銃口がジャイアントのボディを狙う。
「ふぅ・・」
マイケルはゆっくりと息を吐き出して引き金を絞る。
ドン!
魔弾が発射された。
ジャイアントのボディに見事に命中。
すぐにジャイアントが蒸発していく。
『レベルが上がりました』
マイケルたちのパーティー全員の頭に天の声が響く。
だが、みんな黙ってマイケルを見つめている。
狙撃はまだ終わっていない。
邪魔をしてはいけないことを知っていた。
ドン!
ドン!
マイケルは続けて残りの2体のジャイアントを始末した。
「ぷはぁ、マイケルありがとう。 おかげでレベルがまた上がったよ。 さすがだな」
「ほんとにありがとうマイケル。 私たち何にもしてないのにね」
「うんうん、ありがとね、マイケル」
仲間たちがそれぞれお礼の言葉をマイケルにかけていた。
マイケルは返答することなく、スコープ越しにユニコーンを見ていた。
ユニコーンが辺りを見渡している。
どうやらジャイアントを倒した敵を探しているようだ。
何度かキョロキョロしていたが、遠くを見つめるような目線でマイケルの方を見る。
!!
マイケルと視点が重なったようだ。
「まずい、敵に発見された!」
マイケルが急いで銃を担ぎ、みんなの方を向く。
「こちらにユニコーンがやって来る・・は、速いぞ。 戦闘態勢だ」
「「「りょ、了解!!」」」
仲間たちは即座に反応。
ユニコーンがマイケルの方へ向けて駆けて行った。
◇
<テツ>
俺はどんな訓練をするのか、少し楽しみにしていた。
だが、ジャイアントを倒した時に驚いた。
誰が指揮しているのかわからないが、ポンコツか?
それとも魔物の特性を教えているのか?
何にせよ、その意図を図りかねた。
というのも、ユニコーン。
この魔物は基本、静けさを好むと教わった。
後は少し変な性癖もあると。
自分のフィールド内にいる魔物が騒がしいと、魔物といえども倒すことがある。
仲間という意識はない。
ジャイアントを倒すのはいい。
だが、ユニコーンの近くで倒すと暴れるのはわかっているはずだ。
まぁ、倒せれば問題ないが、俺が索敵で探知したところによると、この訓練班だろう連中はレベル32程度だった。
対してユニコーンはレベル35。
まず無理だ。
数でこのレベル差は埋められない。
何考えているんだ?
・・・
もしかして、隊員の誰かが焦って先走ったのか?
わからない。
俺はパーティの方へ移動を開始する。
◇
<マイケルたち>
ユニコーンが赤紫色の影を伴って迫っていた。
一気にマイケルたちのパーティたちの所へ到着する。
かなり荒ぶっているようだ。
首を振りながらパーティを眺める。
ジェシカとステファニーの方を見つめる。
少しすると、ユニコーンが前足で地面をかき上げていた。
「ブルルル・・・グオォォーー!!」
雄叫びをあげたかと思うと、ジェシカを目掛けて駆けて行く。
「ジェ、ジェシカ!!」
マイケルが叫びつつ、ライフルでユニコーンを銃撃。
連射モードになっているようだ。
ダダダダダ・・・!!!
ユニコーンにはダメージはない。
それどころか全く無視して、ジェシカをその光る角で突き刺そうとする。
一直線にジェシカを突き抜ける。
ジェシカが刺されたかと思ったが、かろうじてジェシカは避けることが出来ていた。
!!
ジェシカの左肩から出血している。
「ジェシカ! 大丈夫か?」
マシューが叫ぶ。
「え、えぇ・・何とかね」
ジェシカが左肩を押さえてふらついていた。
ユニコーンは向きを変えると、今度はステファニーの方へ同じように直進する。
!!
「ステファニー!!」
マシューとマイケルが叫ぶ。
ステファニーもかろうじて躱すことができたようだ。
マシューとマイケルが駆け寄り声をかける。
「大丈夫か2人とも」
「えぇ、何とかね。 でもジェシカが負傷しているわ」
「だ、大丈夫よ。 肩にかすっただけだから」
「それよりも、あのユニコーン・・ジェシカとステファニーを狙ったよな?」
マシューが言う。
「あぁ、迷わずに向かっていった・・もしかして・・」
マイケルの口が重くなる。
「ちょ、ちょっと何よマイケル。 何か知っているの?」
ステファニーがマイケルを見つめる。
マイケルが言いにくそうな感じで言葉を出す。
「神話の話だ・・ユニコーンは処女を好むという。 その懐に抱かれているとおとなしいという話だ」
・・・
・・
マシューがジェシカとステファニーを見渡す。
「バ、バカなの?」
「そうよ。 こんな年齢まで恋愛もしていない女なんていないわよ」
「私だってそうよ。 高校のダンスパーティなんて出会いの場でしょ?」
ジェシカもステファニーも呆れたような顔をして言葉を出していた。
「そんなことよりもユニコーンがこちらを観察しているぞ」
マシューが言葉をかける。
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