176 マイケルたち
相手との距離が1㎞くらいになった時だろうか。
俺に対するチクチク刺すような視線を感じる。
俺はその視線の方を見つめる。
何かが見えるわけじゃない。
だが、索敵で引っかかった連中がいるところだ。
俺は騎士団の連中だと思って軽く手を振ってみた。
◇
<マイケルたち>
「マイケル、後はジャイアント3体と馬に角が出ている魔物・・まるでユニコーンね。 これらの魔物だけでしょ、このフィールドで残っているのは」
ジェシカが話している。
「あぁ、そうだ。 俺たちで何とかなりそうだと思うが、少しでも危険だと判断したら撤退するからな」
「えぇ、わかっているわ。 そのおかげで私たち生き延びて来れたのですから」
「あぁ全くだ」
ジェシカの言葉に他の仲間もうなずいている。
狙っていたジャイアントから照準を外して違う方向へ銃口を向ける。
マイケルの真剣な顔を見て仲間が顔を見合わせた。
「どうしたの、マイケル?」
「・・うむ。 妙な感じがしたんだ」
マイケルがレンズを覗き込みながら言う。
!
「人だ」
マイケルが思わずつぶやいていた。
「人ですって? 魔物じゃないの?」
「ほんとかマイケル。 こんな深い階層まで、俺たち以外に人が来ているのか?」
「何人いるの?」
ジェシカたちが少しざわついていた。
「1人だ」
マイケルが淡々と答える。
「ひ、1人?」
「そんなバカな・・」
「まさか仲間とはぐれたとか・・」
「そうね・・仲間が亡くなったのかも・・」
ステファニー、ジェシカ、マシューたちがそれぞれ勝手に言葉を飛ばしていた。
マイケルはレンズ越しにテツを見つめている。
!
テツが手を振っていた。
マイケルはその姿を見て驚きを隠せない。
スコープ越しに見えているが、距離は1㎞はあるだろう。
まさかこの距離でこちらに気づいているのか?
俺はスキルで遠くの標的がわかる。
まさかこの男も同じようなスキルを持っているのか?
油断できない!
マイケルはかなり警戒度を上げたようだ。
そんなマイケルの緊張を感じたのだろうか、仲間たちが声をかける。
「マイケル、どうしたの?」
ジェシカだ。
マイケルはスコープを覗きながら話す。
「あぁ、確認した人だが・・こちらに手を振っているんだ」
!!
「「「え?」」」
ジェシカたちは驚いていた。
「まさか・・マイケルと同じような能力を持っているのか?」
「そんなこと・・私たちよりもレベルが高い人たちなんて、見たことないわよ」
「えぇ、私もそうよ」
「偶然・・ってことじゃないよな。 確実にこちらの存在をわかっているな・・何者なんだ?」
仲間の言葉にマイケルが答える。
「ん? 何か手で合図をしているぞ」
マイケルがスコープにグッと顔を近づけた。
◇
<テツ>
俺は軽く手を振ってから、ユニコーンやジャイアントの方を指さした。
俺的には訓練の邪魔をしてはいけないと思ったからだ。
このまま訓練を見守っていればいい。
◇
<マイケルたち>
「どうやら俺たちに魔物の位置を教えてくれているようだ」
マイケルがつぶやく。
マシューがうなずく。
「なるほど・・本当にマイケルと同じような能力を持っているらしいな」
「えぇ、敵の居場所がわかるなんて良い能力ね」
「マイケル、その見えてる奴だが、どんな感じだ? 俺たちの双眼鏡ではよくわからないんだ」
マシューが聞く。
「うむ。 見たままだが、何も持っていない。 ただ日本刀のようなものをぶら下げているようだ。 それだけだな」
!!
その言葉に仲間たちはさらに驚いた。
「忍者ですか、そいつは」
「フフ・・冗談よね、マイケル」
・・・
「冗談ではない。 本当にその姿だ」
マイケルは淡々と答える。
「マイケル、じゃあ何かい。 魔物の居場所を教えてくれているということは、仲間からはぐれたわけじゃなさそうだな・・そいつは仲間を失ったか・・だが、それなら引き返すはずだ。 まさか、たった1人でここまで来たということか・・そんなバカな!」
マシューが吐き捨てるように言う。
「マシュー、興奮しないで。 後から仲間が来るかもしれないじゃない。 それに私たちには関係ないわ。 敵ではないことを祈るだけね」
マシューは自分たちのレベルが最高だという自負がどこかにあったのだろう。
他に同等レベルの人がいるとは考えたくもなかった。
「そうだなマシュー。 俺たちはできることをするだけだ。 まずはジャイアントを倒さなきゃな。 それに、もしスコープ越しのやつが襲ってきたときのことも考えておかなければなるまい。 警戒を怠るなよ」
「「「了解!」」」
マイケルはそういいつつ、ジャイアントに銃口を向ける。
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