173 なんとなく
<山下たち>
「後藤、木村、ゆっくり近づいて行くのではなく、一気に距離を詰めて倒すぞ」
「「あぁ、了解だ」」
ダッ!!
ジャイアントに一気に近づいて行く。
山下たちの移動速度は速い。
ジャイアントまで50mくらいまで接近した時だ。
「危ないぞ!!」
誰が叫んだかわからないが、その声に反応すると同時に避けていた。
ジャイアントによる岩の塊を投げてくる回転速度が上昇している。
岩の大きさは変わらない。
「お、おい、あの上位種の投げる速度が上がっているぞ」
「あぁ・・それに岩の塊だが、ヤツの手から出現するんだな」
「そんなことよりも近づかなければ俺は攻撃できない」
山下が少し引きつった顔で言う。
「俺が距離を取って狙撃する。 後藤は補助を頼む」
木村が言うが早いか、ジャイアントと距離を取り立った位置で狙撃をする。
ドン!!
岩の塊に当たり、ジャイアントが防御した形になった。
「な、何?」
木村がつぶやいていると、岩の塊が後藤を襲う。
「ご、後藤!」
後藤はかろうじて躱すことができたようだ。
「この上位種・・単純な攻撃なんだが、うぜぇな・・」
山下がそうつぶやいた時、大きな岩の塊が山下の上空から落下してくる。
!
山下は剣を振るい、岩を切断。
ズバン!
「ふぅ・・こんな岩を斬って消耗するのかよ」
剣に少し魔法を込めていたようだ。
山下がつぶやくのもつかの間、次の岩が迫っていた。
後藤も魔法を詠唱するどころではない。
木村の狙撃も何度かジャイアントに試してみるが効果がない。
そして、距離を取ろうにも動くことがなかなかできなかった。
!!
「ご、後藤こっちに飛べ!」
「山下ぁ! お前の上空・・」
山下と後藤がお互いに言葉を出す。
ドォーーーン!!
山下たちがいた位置に岩が4つほど落下していた。
「や、山下・・後藤・・」
木村はその場で膝をつく。
!
落下した岩が動く。
少しして砕けていた。
「ガキども、大丈夫か?」
キョウジが後藤と山下を回収。
そして、岩を砕いていた。
山下と後藤は言葉がない。
キョウジを見上げつつ、首を何度が縦に振る。
キョウジはそのまま山下たちに背中を向けて駆けて行く。
キョウジにとってジャイアントなどは全力で倒すような魔物ではない。
飛んでくる岩も紙一重で躱す。
無駄な動きをしていない。
だが、山下たちにはギリギリに避けているように見えている。
「後藤・・大丈夫か?」
「あぁ、問題ない。 だが、あのおっさん何者なんだ?」
「さぁわからないな。 結構強そうだよな」
「力はあるようだが、ギリギリ避けてる感じだぞ、大丈夫か?」
木村が合流する。
「お前たち、大丈夫だったか?」
「あぁ、あのおっさんのおかげで助かったよ」
「そうだな。 遠くで見ていると終わったかと思ったぞ」
木村がそう言葉をかけると、みんなでキョウジの背中を見ていた。
「あのおっさん、何者なんだろうな」
「今、後藤とも話していたんだ。 強いのかと思ったら、あの動き・・力バカかな? あいつを狩ると経験値が手に入るんじゃね?」
「プ・・アッハッハッハ・・山下ぁ、お前助けてもらったやつに言う言葉か」
木村は笑う。
「俺は助けてくれなんて頼んでないぞ」
「俺も」
山下と後藤も笑う。
「お前たち随分だな、おい」
「なんだよ木村ぁ、経験値要らねぇのか?」
「そんなの答えは決まってる。 いる・・ふぅ、仕方ないな」
木村もニヤッとして答えた。
キョウジはジャイアントの前に来ていた。
「さてと、この武具の威力を試させてもらうか・・って言っても、格下じゃぁなぁ・・すまんな」
キョウジはそうつぶやくと、右拳をジャイアントのボディに繰り出した。
一撃。
軽く突きだしただけだが致命傷になったようだ。
ジャイアントがゆっくりと膝をつきながら蒸発していく。
キョウジは魔石を拾い、自分のアイテムボックスへ収納。
そのまま山下たちのところへゆっくりと歩いて戻って来た。
「おじさん、助けていただいてありがとうございます。 それよりも強いんですね」
山下が微笑みながら言う。
キョウジはその笑顔を全く信用していない。
先程、石化した人を斬って平気な奴等だ。
どうでもいい。
助けたのも、ただ何となく気が向いただけだった。
「おじさん? まぁいい。 あの魔物はボディが弱点なんだよ。 俺が強いわけじゃない」
キョウジは答える。
「あ、あの・・俺たちダンジョンを攻略していたらこうなってしまって・・ダンジョンは難しいですね」
山下が滑らかに話し、続ける。
「あなたも攻略しているのですか?」
「俺は、この武具の試験だ」
キョウジはそう言って拳から腕にはめた武具を見せる。
「あなたは格闘家なんですね。 凄いです。 僕は剣で戦うスタイルです」
山下以外の2人もうなずいている。
「そうか・・ま、無事ならそれでいい。 この場所で危なそうなら、そろそろ帰ればいいんじゃね? じゃあな」
キョウジはそう言うと、あっけなく山下たちに背中を向けて次の階層への入り口へ向かって行く。
山下たちはキョウジの背中を見送りながら、お互いに目を合わせうなずいた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
よろしければ、ブックマークなど応援お願いします。




