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17 龍神族の里へ向かって

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



「え、い、いや・・そんなことはないですよ」

俺は急いで言葉を出す。

「そういえば、私も触れられませんでしたね・・」

ヘルヘイムが考える仕草をしながらつぶやく。

余計なことは言わなくていい!

心の声です、はい。


髭をたくわえた執事長がゆっくりと立ち上がり、近づいてくる。

「それはまことですか、テツ様」

おっさん、顔が近い。

「い、いえ・・わかりません。 今のルナさんは分身体ですし、俺も自分の強さがよくわからないのです」

とにかくこの場をしのげればいい。

そんな風に俺は思っていた。


「なるほど・・是非とも一手お手合わせをお願いしたい」

髭のおっさんが言う。

・・・

あんた、戦闘狂ですか?

俺は今、光の巫女の美人お母さんを見てきていい気分なんですけど。

執事長の目は本気のようだ。

・・・

俺はルナの方をチラっと見る。

ルナは笑っている。

このアマァ・・仕方ない。

「執事長さん、少しだけなら・・」

俺がそう言うと、執事長が丁寧にお辞儀をしてお礼を言う。

「テツ様、ありがとうございます」


これだけ丁寧な挨拶をされると、悪い気分じゃない。

ヨシ!

気持を切り替えよう。

俺は執事長と向かい合う。

いつの間にか、ヘルヘイム以下メイドたちが並んで観戦していた。

ルナは相変わらずマイペースで見ている。

「どれ、ワシが合図を出してやろう」

ルナがそう言うと、片手を振り下ろす。

「はじめ!」

何がはじめだ!

あんたのせいでこうなったんだろ。

!!

俺の視界に映るものがある。


執事長がいきなり踏み込んできた。

右手で正拳突きを繰り出してくる。

あまり速くはない。

もしかしておとりか?

俺はそんな風に考えながらも、執事長の右外側へ身体ごと避ける。

執事長が右腕を引きながら、今度は左回し蹴りを出してきた。

普通の回し蹴りだ。

俺はそれも軽く避ける。

執事長は左回し蹴りをそのまま地面につけ、今度は右足で後ろに蹴り出してきた。

馬蹴りの格好だ。

俺はそれも問題なく避けている。

お互いに少し距離を取る。


メイドたちがザワザワしている。

「マジっすか・・執事長の3連撃をかわしたっすよ・・」

「あの瞬速の攻撃って躱せるんですね・・」

「テツ様って何者ですか?」

・・・

などなど、変な言葉が飛び交っている。


「テツ様、少し本気を出してもらわねば、我々がピエロになってしまいます」

執事長が言う。

「あ、すみません。 そうですね・・では、少しだけ気を込めますね」

俺はそういうと、身体を神光気しんこうきで覆う。

「ハッ!」

ヘルヘイムが少し前のめりになり、つぶやく。

「あれだ! 先ほど私が触れられなかった光だ」

メイドたちが一斉にヘルヘイムを向くが、すぐに俺たちに目線を移す。


執事長が驚いているようだ。

「テ、テツ様。 その光はいったい・・」

「あぁ、これですか。 俺もよくわからんのですが、戦う時にまとう光ですね。 武闘家なんかが武装闘気を纏うって聞いたことがあるのですが、それに近いものだと思うのです」

俺にもよくわからん。

「ぶ、武装闘気・・武闘家の究極技と言われている・・」

執事長が驚きながらつぶやく。


執事長のつぶやきをよそに、俺は少し動いて執事長の背中をポンと押してやる。

!!

ルナ以外、誰も見えなかったようだ。

ヘルヘイムもかろうじて残像が見えた程度だろうか。

目を大きくしていた。


執事長が前にヨロヨロと歩いて行き、片膝をつく。

「カハッ・・」

マジですか?

こっちが驚くんですけど。

触れただけですよ。

・・・

ルナがゆっくりと近づいてきて、執事長に回復魔法をかけている。


「いやはや面目ない。 全く動きが見えませんでした。 いつの間に背後に移動されたのやら・・」

執事長が苦笑いしながら言う。

「いえいえ、俺の方こそありがとうございました」

俺はそういって頭を下げる。

メイドたちは、執事長を残して屋敷の中へ入って行く。

ヘルヘイムが近寄って来てルナにお礼を言っていた。

「ありがとうございました、ルナ様。 これでみんな生涯の宝物ができたことでしょう。 それにテツ様、さすがです。 やはり龍神族のエリアへ行かれるのがよろしいかと思います」

「龍神族・・ですか」

俺はオウム返しで聞いた。

「はい。 古龍たちも喜ぶでしょう。 それにどの道、地上へ帰られるのなら、古龍の支援も必要となります」

ヘルヘイムが言う。

「なるほど・・」

俺がうなずいていると、すぐに場所を教えてくれた。

「龍神族の里ですが、我が国を抜けねば行けません。 このまま真っすぐに行かれると谷にさしかかります。 その奥が龍神族の里になります。 もはや数えるほどしか残っておらぬでしょうが、よろしくお願いします」

ヘルヘイムが頭を下げていた。

「ヘ、ヘルヘイムさん、頭を上げてください」

俺は慌てた。

何で俺なんかに頭を下げる必要がある。


ヘルヘイムはにっこりと微笑むと、

「いえ、私の代わりにルナ様やテツ様が動いてくださるのです。 なにとぞよろしくお願いします」

「うむ。 ヘルヘイムよ、世話になったな。 また帰りに寄らせてもらう」

ルナが偉そうに答えていた。

「はい」

ヘルヘイムも返事をする。

ルナさん、あんたねぇ・・。


「さて、行くかテツ」

ルナはそう言うと、マイペースで歩き始める。

俺はヘルヘイムたちに光の巫女たちをよろしくお願いしますと頼み、お礼を言ってルナの後を追った。



俺たちの背中を見送りつつ、ヘルヘイムに執事長が話しかけていた。

「旦那様、ルナ様とテツ様ですが、龍神族の長は会ってくださるでしょうか」

「さぁ、それはわからない。 だが、テツ殿はあのクイーンバハムートの友人だそうだ。 誰も見たこともない古龍だが、それを目にして顕現させたそうだよ」

ヘルヘイムが執事長に語ると、執事長が硬直していた。

意識を失っていたのかもしれない。



俺はルナと一緒にヘルヘイムに教えられた通り、道をただ真っすぐに歩いて行く。

ルナは鼻歌気分のようだ。

「そうだ。 テツよ、スイーツなんか食べながら歩くと楽しいと思うのだがのぉ」

ルナがお気楽に言ってくれる。

それにあんた、さっきまでいっぱい食べていたよね?


「ルナさん、あのね・・こんな殺風景な場所で楽しいも何もないでしょ」

周りは岩ばかりで、草木がない。

ジメジメしたような感じはないが、単に岩の間を歩いている感じだ。

俺はブツブツ言いながらも、ルナにスイーツを出してしまった。

なんか、俺っていいように調教されてるよな。


1時間ほど歩いただろうか、岩場の道がジメジメとする感じがする。

コケが生えているのが見える。

すると、大きな谷が見えてきた。

その谷というか崖というか、近づいて行ってみる。

・・・

そっと覗いてみた。

下は真っ暗だ。

底が見えない。

!!

「ほらぁ!」

ルナが俺を突き飛ばす。

崖から落ちそうになった。

「うわぁ!」

俺は驚く。

落ちてもどうってことないだろうが、その動作が染みついているのだろう。

ギリギリのところで落とされそうになると、ヒヤッとしてしまう。

「ル、ルナさん、あんたねぇ」

「ギャハハハ・・あーはっはっは・・テツ、その顔、最高!」

・・・

殴ってやろうかな、この女。


「テツよ、別に落ちても問題ないであろう。 何をそんなに驚く必要がある」

ルナが笑いながら言う。

「ルナさん、そういう問題じゃありません」

さて、ヘルヘイムは谷の先に龍神族の里があると言っていた。

この谷を進まなきゃいけないのだろうな。

結構な距離のクレバスが続いているが、あの山のところに向かっているな。

だが、ヘルヘイムは谷の先にあると言っていた。

もしかして、地上を歩いて行くと、龍神の里に入れないかもしれない。

言われたとおりにするのがいい。

俺はそう思って、谷に降りようとする。


崖に掴まり下りて行く。

それほど難しくもなく、スッスッと降りて行ける。

あ、ルナさんはどうしたのだろう。

俺はそう思って上を見る。

あれ?

降りてきていないな。

そう思っていたら、俺の後ろを飛んでいた。

そうか。

この人、飛べるんだっけ。

「テツ、しんどそうだな。 どれ、ワシが下まで運んでやろう」

ルナがそう言うと俺を抱える。

スーッと下りて行って、すぐに谷底に到着した。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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