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162 朝の出来事:衝撃



ルナが嫁をジッと見ている。

・・・

「女・・くさいな」

ルナがポロッとつぶやく。

嫁がえっ? という感じでルナを見る。

俺も驚いた。

一応、俺の嫁って知ってるよなこの人。

平気で怖い言葉を使うよ。

心の声です、はい。

俺の方がドキッとする。


「ル、ルナさん、臭いって・・」

「うむ。 言葉通りだ。 何とも生臭い」

「生臭い?」

俺は言葉を繰り替えす。

ルナが嫁の前に立ち、ジッと嫁を眺める。

「ふむ。 お主・・自分のことだけで満たされておるな」

「は?」

ルナの言葉に嫁が驚いていた。

「ちょっとあなたねぇ・・生臭いって・・それにいったい何を・・」

嫁が言葉を出そうとするとルナが睨む。

「黙れ」

ルナの言葉に嫁の身体が硬直する。


ルナがゆっくりと俺の方を向きながら聞く。

「テツよ、この女は本当にお前のつがいなのか? お前ももの好きだなぁ」

ルナが笑う。

・・・

この人は平気でズバズバ言うね。

俺には真似したくてもできないな。

「えっと・・嫁・・そう、一応()()()()。 いや今でもそうですが、何と言うか・・パートナーではありません」

俺は思わず本心が出たような気がした。

ルナに「つがい」なのかと聞かれて、頭の中で言葉を反芻していた。

・・

男と女という関係は出来上がっていた。

それでパートナーかというと、どうも怪しい。

いや、怪しいどころじゃない。

嫁は常に俺を否定していた。

俺がやることなすこと、否定から入って来る。

もし、こんな世界にならなかったら、すべて金というモノサシで俺が測られていただろう。

おまけに嫁の女友達は中流階級以上の生活をしている人が多い。

そんな人たちと比べられていた。

毎日、毎日稼ぎが少ないの連呼。

子供の前でも平気で言っていたからな。

・・・

俺の頭の中に一度にそんなことがバッと浮かんだ。


「ただですね・・子供たちには母親という存在は必要だと思うのですよ。 それに俺がつながっていなければ父親というものがわからなくなるでしょう」

俺も苦笑しながら答える。

ルナは少し考えていたかと思うとつぶやく。

「ふむ・・人とは不自由な生き物だな」

「それはそうと、ルナさんいったい何をしているのですか?」

「おぉそうだった。 フレイアのところに朝スイーツを食べに行くのだ。 こうしてはおれん」

ルナは言葉を残し、ササッと移動していく。

全く変わらないなルナさんは。

俺はルナを見送ると嫁を見る。

・・・

まだ硬直していた。

そっか、ルナに睨まれてスタン効果みたいな感じになっているのかもな。


嫁の背中を軽く叩いてやる。

「ぷはぁ・・はぁ、はぁ・・いったい何なのよ」

嫁が驚いていた。

硬直は解除されたらしい。

「あぁ、ルナさんな。 ヴァンパイアだから君の身体が怯えたんだよ」

「ヴァ、ヴァンパイア?」

「あぁそうだ。 まぁレベル差があるから仕方ないな。 えっと、それよりさっき言いかけてた言葉・・なんだっけ?」

俺が聞くと嫁が首を振る。

「ううん・・何でもない」

「あっそ、じゃあね」

俺はそう言ってギルドへ向かう。


<嫁視点>


嫁は俺の背中を見送っている。

確か今旦那が言った。

『嫁でした』と。

そしてパートナーではないとはっきりと言っていた。

その言葉を反芻する。

・・・

腹立たしさよりも嫁の中に大きな真空が広がって行くようだった。

胸が内側から圧迫されるような気がする。


私が何かしたのかしら?

嫁はその場で上を向いて考えている。

・・・

わからない。

何か旦那に対して意地悪をしたことはないと思っている。

むしろ私は子供たちの学校の事や家の外での活動は頑張った方よ。

家事もほとんど私がしたはずよ(嫁目線です、はい)。

旦那は外での活動はしなかったわよ。

させなかったけど。

外での活動をさせれば余計な波風が立ったに違いない。

嫁はそう判断する。

ただ、私が苦手なのは朝起きてくることだけだったじゃない。

後、いろんなことは両方がやった方がいいと思ったわよ。

旦那は私から見てそれほどやっている感じはしない。

私が見ているところではうっとうしいくらいにジッとしていた。

嫁はブツブツつぶやきながら学校へ足を向けると、ゆっくりと歩き出す。


嫁の見落としているところ。

自分の見えないところでのテツの行動だろう。

それがわからない限り、そして推察できない限り決して理解できないに違いない。



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