158 ハーレム?
俺は一応ポーネにお礼を言って席を後にする。
ポーネが笑顔で見送ってくれた。
もしかしたら、ポーネの優しさだったのかもしれない。
俺のレベルダウンやいろんな事案など、詳細はわからなくともそれとなく感じるのだろう。
ギルドの受付をやっているんだ。
人を見る目はあるだろう。
俺はギルドを出る前に一度振り向いて、ポーネに軽く手を振ってみる。
・・・
ポーネは違う人を接客していた。
◇
<嫁の家>
時間は21時15分。
凛たちは魔法で身体をきれいにして寝る用意をしていた。
「ママ、今日はとってもおいしかったね。 それにしてもパパすごいなぁ」
「うん、テツってすごいな」
颯もバーンを頭に乗っけてうなずいている。
「神様すごい、神様すごい」
バーンが颯の頭の上でオウムのようにしゃべっている。
スラちゃんがスリスリと颯にすり寄ってきていた。
それを凛が抱っこする。
「キャッ、スラちゃん冷たぁーい」
颯があくびをする。
凛もつられてあくびをした。
「ふぁあ・・颯ぇ、もう寝ようか」
「うん。 お腹もいっぱいになったし・・おやすみママ」
凛と颯は一緒に寝室の方へ歩いて行った。
お義母さんと嫁がリビングで座っている。
「梓、あなたもテツさんのところで住ませてもらったら?」
お義母さんが軽く聞く。
「・・うん」
嫁は歯切れの悪い返事をする。
「そうしたら、私も一緒に住まわせてくれるかしら?」
お義母さんはポジティブシンキングのようだ。
「そ、それは難しいんじゃないかしら・・」
嫁が答える。
「どうして?」
「だって、パパさんは一応英雄でしょ? だから特別な扱いになったんじゃないのかな。 よくわからないけど」
「あ、そうか・・そうよね。 テツさんのお母さんも一緒に住んでないわけだし、無理ね。 でもねぇ・・改めて考えてみたらもの凄いことが起こっているわね。 昔の生活が考えられないわ。 今だって空中都市ですものね。 それにいろんなことをするのも魔法なんてあるし、いいことだらけだわ」
お義母さんは1人つぶやきながらニコニコと上を向いていた。
嫁は素直に喜べない。
あの旦那とは一応家族としてつながりがあると思っている。
だが、私はパートナーとして必要ないと言われた。
私もどうでもいいと思っていた。
だが、現実の格差を感じている。
私も以前から比べれば、遥かに豊かな生活ができている。
問題はない。
だが、あの旦那は規格が違う感じがする。
言葉にならないが、旦那との間に決して埋められない溝を感じ始めていた。
◇
<テツの屋敷>
俺は自分の家に帰って来ていた。
家に入るとヴェルが出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ、テツ様」
「ありがとう、ヴェル」
俺は片手を上げて礼を言う。
家の中はきれいに清掃されていた。
俺がギルドに行って帰ってくる間に片づけたようだ。
するとテュールがやってくる。
「テツ様、お身体をきれいにされてはいかがですか? お風呂がちょうどよい感じに整っておりますよ」
「あ、そうか。 お風呂もあったのですね。 わかりました、ありがとうございます」
俺はテュールにお礼を言って風呂場に向かう。
エイルが案内してくれた。
「テツ様、こちらです」
「エイル、ありがとう」
俺はエイルの前を通過して風呂に入って行く。
「テツ様、お背中でもお流しいたしましょうか?」
エイルが言う。
俺の足が止まる。
背中を流す?
どこのドラマだ。
「エイル・・冗談だよな?」
俺は取りあえず聞いてみる。
「いえ、冗談ではございません。 我々はテツ様のお世話をするためにここにいるのです。 何等ご遠慮はいりません」
エイルは微笑みながら答える。
・・・
マジか。
エイル・・美人というよりかわいい感じがする。
こういった子が傍にいてくれる方が一番幸せなのかもしれない。
フレイアは確かに美人だが、凶暴さも見えるしなぁ。
などと、勝手な理屈が俺の頭に浮かぶ。
俺はエイルの顔をしばらく見つめていた。
「テツ様、私に恋愛対象を求めておられるのでしたら、無理でございます」
エイルがはっきり言う。
「は? まだ俺、何も言ってないけど・・」
「テツ様、我々はお世話係です。 テツ様とは立つべき位置が違います。 それに、フレイア様やレア様・・とても恐ろしい方々です・・おっと、これはご内密にお願いします」
エイルが少し慌てた感じで話す。
可愛いぞ、エイル。
「い、いや、そういうわけじゃないんだが・・まぁ、背中くらいは自分で洗うよ。 俺が動けなくなった時によろしく頼む」
「わ、わかりました」
エイルが顔を赤らめながらうなずいていた。
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