157 食事
ゆっくりとしたペースで次の食事が運ばれてくる。
凛はニコニコして食べている。
ほんとに良かったよ、凛。
颯は無言で食べている。
おいしい証拠だな。
嫁も無言だ。
お義母さんがニコニコしながら嫁に話しかけている。
「梓、とてもおいしいわね。 またあのホテルに食べに行かなきゃね。 でもテツさんのところに来るといつでも食べられるわね」
お義母さん・・あんた完全なポジティブ人間だな。
じいちゃんも無言で食べている。
ばあちゃんが俺の方を見て言う。
「テツ・・あんた大丈夫かねぇ? 贅沢は心を腐らせるよ」
「う、うん。 気を付けるよ」
ばあちゃんは視線を外すと食事を再開。
確かにばあちゃんの言う通りだ。
これが当たり前と思うようになったらダメだろう。
俺も頭ではわかるが、実際には相当注意しないと傲慢になるような気がする。
そう思ってみるが、正直先のことはわからない。
・・・
時間は20時前になっていた。
みんなで楽しく食事ができた。
俺はみんなを見送りに行く。
「テュールさん、みんなを見送ってきます。 今日はありがとうございました。 それにヴェルとエイルも本当に助かったよ、ありがとう」
テュールたちはお気遣いなくと言って笑顔で見送ってくれた。
ゲートを通過し、王宮の通路に出る。
ゾロゾロと俺たちが歩いて行く。
凛と颯がニコニコしながらはしゃいでいた。
王宮を出て、ばあちゃんたちの家に向かう途中で優が話しかけてくる。
「おっさん、あんな凄いところに住むんだよな? 貴族じゃねーかよ」
「まぁ仕方ないさ。 俺のレベルとかが問題になるようだからな」
アニム王などからもそういう方向で話をまとめると言われている。
「え、そうなのか? でもなぁ、やっぱいいよなぁ・・」
優は見た目に振り回されているようだ。
お義母さんも上機嫌で梓に話していた。
「梓、テツさんってすごい出世したのね。 まさかあんな場所をポンとプレゼントされるなんてねぇ」
嫁は黙って聞いている。
お義母さん、相変わらず軽いな。
「ねぇパパ、またあの家に遊びに行っていい?」
凛が俺を見て聞いてくる。
「もちろんだ、当たり前だろ。 凛や颯の家でもあるんだからな、いつでも来ていいぞ」
「うん」
凛は大きくうなずく。
俺はみんなを見送り、一度ギルドへ寄ってから帰ろうと思う。
時間は21時前。
ギルドの前に到着。
入り口がスムースに開く。
中に入って行き受付を見る。
混雑はしていない。
早速受付に行ってみた。
ポーネだった。
「こんばんは、テツ様。 どういったご用件でしょうか?」
「ポーネ、エレンさんいるかな?」
「・・テツ様、いきなりエレン様ですか。 私ではお役に立てませんか?」
ポーネが絡んでくる。
そりゃ俺の言い方が悪かったな。
「い、いや、そういうわけじゃない。 ごめんよポーネ。 あのさぁ、テュールって人知ってる?」
俺は改めてポーネに聞いてみる。
意外な答えが即答で返ってきた。
「えぇ、もちろんです。 テュール様はミラン様の親友ですから」
「え?」
俺の方が驚いた。
「ミランさんの親友?」
俺はオウム返しにつぶやく。
「えぇ、そうです。 戦友と言っていいかもしれません」
ポーネがそう言って顔を近づけてくる。
「とっても優しくお強いお方ですよ。 テツ様でも危ないかもしれませんね」
マジか?
「ほんとか、ポーネ。 そうか・・」
俺は大きくうなずきながら思う。
いろんな人がいるなぁ。
王宮はびっくり箱か?
俺が知らないだけでいろんな人がいるのだろうな。
アリアンロッドなんて女だったしな。
俺が考えているとポーネがジッと俺を見つめる。
「テツ様、まさかそれを聞きに来ただけですか?」
「あ、あぁ、それだけだ」
ポーネが下を向いてうなずく。
「そうですか・・では、こちらからもお知らせがあります。 テツ様、まだ正式に通知されていないかもしれませんが、テツ様のギルドランクがS級にダウンとなります」
ポーネが一呼吸おいて小さな声で言う。
「何かやらかしたのですか?」
「い、いや、特に何もしたわけではないが・・」
俺が歯切れ悪く答えているとポーネがうなずく。
「えぇ、わかっております。 テツ様は英雄です。 英雄、色を好むと申しますし、そういう案件はよく耳にしております。 このポーネも応援しております。 レア様にしてもそうですが、フレイア様、ルナ様と伝説級の美女陣を相手にしておられます。 そりゃあ不祥事の1つや2つあっても・・」
俺はポーネの頭を軽く殴った。
ポカ。
「あいったぁ・・」
ポーネが片目を閉じてベロを出していた。
「ポーネ・・俺、そんなことしてないからな」
「えぇ、わかっておりますとも」
ポーネが大きくうなずく。
絶対わかってないだろ。
まぁいい。
テュールさんのことが聞けただけでも収穫アリだ。
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