151 アニム王の提案
王宮の入り口では係の人が対応してくれる。
「おはようございますテツ様。 どうぞこちらへ」
どうやらアニム王がいつ俺が来ても応対するようにと指示していたようだ。
係の人が政務室に案内してくれる。
ドアをノックして扉を開ける。
「王様、テツ様をお連れいたしました」
「うむ。 ご苦労でした」
アニム王は係の人を下がらせて俺を中に入れてくれる。
「テツ、私も今から朝食なのだよ。 一緒にどうかね?」
そういえば、朝からコーヒーしか飲んでいなかったので、少し小腹が空いている。
「あ、はい。 よろしければ遠慮なくいただきます」
俺も厚かましくなったな。
そんなことを思いながら席につく。
俺が席につくと飲み物が運ばれてきた。
俺が一口飲むと、アニム王が話しかけてくる。
「テツ、後で君にもわかることだから先に話しておくよ」
俺はアニム王の顔を見る。
「うむ。 実はね、君は帝都内で戦闘をしただろう。 これが結構な問題でね」
アニム王は真剣な顔になって続ける。
「まぁ、相手が犯罪者だから重罪は免れるだろうけど、ただ君の存在が脅威と判定されている」
ブッ!
俺は思わず飲み物を吹き出しそうになった。
「きょ、脅威ですか?」
俺は少し驚いた。
「うむ。 まずギルドメンバー同士の争い、しかも街の中での戦闘。 相手は死んでいる。 事実だけを見るとこれは事件だよ」
アニム王の言葉を聞きながら思う。
確かにそうだ。
ギルドのライセンスカードを作るときに言われていたと思う。
俺が軽く聞いていたのだろう、真剣に捉えていなかったかもしれない。
ただなぁ、あの状況では普通やるぞ。
俺を見つめてアニム王が続ける。
「それにテツの魔王化。 レベルの低いものにとっては脅威としか映らない。 それで昨日協議をしたのだよ。 君の積み重ねてきた功績がある。 それを考えると難しいね。 私個人は何とも思っていないが、あまりテツのことを知らない人物ならどうだろうか。 人間の強さを遥かに超える人物。 魔王にしか映らないだろう。 それにそんな人物が独走すればどうなるのか? 皆、そう考えるだろうね」
「ちょ、ちょっと待ってください。 俺はそんなことしませんよ」
俺の言葉にアニム王が答える。
「絶対という言葉はないよ。 私の意見じゃないのだよ。 この時代の言葉で判断されるということだ。 もしテツじゃなかったら、軽くて辺境の街に軟禁。 本当の犯罪者なら死刑か次元漂流だろうね」
「次元漂流?」
「うむ。 ゲートを作り、場所や時間を定めずに放り込む刑だね。 過去に数えるほどしか実行したことがないと聞いている。 私や先代の時代にはなかったよ」
俺は聞いていて、とても大きな事件になっていると思ってしまった。
軽々しく城戸を倒したのがいけなかったのだろうか。
でも、誰でもするんじゃないか?
・・・
そうか、俺のレベルか。
やはり分相応というか、それなりにというのは必要なのだろう。
俺はそんな自虐的な考えも浮かんだりしていた。
だが、レベルは自分で獲得したものだ。
まぁ、アニム王による恩恵は大きいが。
俺が考え込んでいるとアニム王が声をかけてくる。
「テツ、一応私の考えを聞いてくれるかね」
俺は顔を上げアニム王を見てうなずく。
「テツの扱いだが、おそらく帝都では居られなくなると思う」
!!
俺は驚いた。
「な・・本当ですか?」
アニム王はうなずき、少し微笑む。
「まぁ聞いてくれテツ、これは私の提案なのだが、この帝都のような街をもってみてはどうかな?」
・・・
は?
どういうこと?
街を持てって、領主になれってこと?
いやいや、ありえないし・・そもそも人をまとめるのは面倒だ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
よろしければ、ブックマークなど応援お願いします。




