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15 この世界

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



ヘルヘイムが俺たちをゆっくりと見てから話す。

「はい。 我が宮殿でくつろがれておられますよ」

・・・・

・・

ヘルヘイムが言うには、どうも光の巫女たちを取り巻く様子がおかしいと言う。

何故それがわかったか。

調査員として、部下を潜入させているそうだ。

「神殿の職員の中に、ノートという女の人がいませんでしたか?」

ヘルヘイムが言う。

そういえば、いたようないなかったような・・よく覚えていない。

俺が考えているとヘルヘイムが笑いながら言う。

「まぁ、わからなくてもいいのですが、それほど気にならないようでしたら、潜入調査も上手に行われているということでしょう」

そう言って話を続けてくれる。


そのノートの報告を聞いていると、どうも神官たちだけで光の巫女、光の神の恩恵を独占しようとしている感じがするという。

本来なら光の巫女は、普通に暮らして都市や街をウロウロするだけで、その恩恵を与えることができるという。

人が目にすればするほど、そのオーラというか気というか、そういったもので空間が満たされていくのだそうだ。

例えば、人によっては自然治癒力が高まったり、余計な負の感情が解消されたりなど、微々たるものだが、積もれば計り知れない大きな恩恵となるらしい。

まぁ、そういうものだろう。

俺も聞きながら納得。

それをいつからか、神官たちが独占し出したという。


光りが弱まれば、夜の部分も不安定になってくる。

ヘルヘイムは当初、傍観ぼうかんしていたがあまりにも年数が経過する。

これではこの世界そのものが危ういと考えて、調査員を通じて話をすると、光の巫女の母親はすぐに納得。

それで今に至っているようだ。

・・・

・・

「なるほどな。 だが、なぜ自分達で光のエネルギーを集めようとしたのだろうか。 太陽を手に入れれば火傷するぞ」

ルナが言う。

「フフ・・ルナ様は上手いことをおっしゃいますね。 そこら辺の真意はわかりませんが、おそらく外の世界へと出ようと考えているのかもしれません」

ヘルヘイムが言う。

「ふーむ・・無いものねだりだな」

ルナがつぶやく。

「はい、私もそう思います。 隣の畑が良く見えるのでしょう」

ルナとヘルヘイムは呆れたような感じで話していた。

俺はただ聞いているだけだ。

ルナとヘルヘイムの話が終わろうとしているようだ。

俺は一つ聞いてみた。

「あの・・ヘルヘイムさん。 1つ聞きたいのですが・・」

俺がそう言うと、ヘルヘイムはにっこりとして聞いてくれる。

「どうぞ」

「はい。 先ほど、ヘルヘイムさんはこの星に来たときに地上にいたとおっしゃってました。 それに何度か行き来もしたような感じでした。 俺たちも地上へ帰れますか?」

ヘルヘイムは目を閉じながらうなずく。

「えぇ、問題ありません。 帰るのは大丈夫ですが、今はダメですね」

は?

どういうこと・・俺は首を少し前に出してポカンとしている。


「少し私の言葉が悪かったですね。 この世界が安定すれば問題ないということです。 ですが、今は少し乱れています。 光の巫女もそうですが、我々夜の眷属、竜神族などのバランスが整えば問題なく移動できますよ」

ヘルヘイムが答える。

「バランスが整う・・」

俺がそのまま言葉をつぶやくと、ヘルヘイムが答える。

「まぁ、元ある位置に戻り、普通に生活できれば問題ありません」

「なるほど・・」

俺にはわかったような、わからないような、でも戻ることはできるようだ。

それだけでも安心した。


ヘルヘイムの話も終わる。

ルナは出された飲み物だけでなく、スイーツをおねだりし、口に詰め込んでいた。

この女は・・。

俺がそう思って見ていると、ヘルヘイムが話し出す。

「テツ殿は、これからどうされるおつもりですか?」

・・・

そんなことわかるわけがない。

俺の素直な感想だ。

それに、まだこの世界がどんなものなのかも把握できていない。

そう考えつつも答える。

「えぇ・・まだ何もわからない状態ですので・・ただ、はっきりしていることと言えば、地上へ帰る手段を見つけることでしょうか。 でも、先程の話を聞いて少し安心しました」

「なるほど・・」

ヘルヘイムは答えながら考え込んでいる。

そして、何か閃いたような感じだ。

「そうですね・・まずは光の巫女に会われてはどうですか? その後は各都市国家を訪ねて真意を問うのがよろしいかと思います。 龍神族などにも会う必要があると思います」

ヘルヘイムが言う。

・・・

なんか調子よくヘルヘイムに乗せられているような感じだが、それ以外に俺に選択肢はない。


まぁルナとも普通に話ができるようだから、信用していいだろう。

俺はそう思うとヘルヘイムに頭を下げた。

「ヘルヘイムさん、ありがとうございます」

「テツ殿・・頭をお上げください。 龍神族はほとんど数が残っておりませんが、テツ殿が行かれたらさぞ喜ばれるでしょう。 それにエルフ族にも気に入られるかと思われます」

ヘルヘイムがいろいろ話してくれる。

・・・

・・

このおっさん、一番の黒幕じゃね?

だが、変な感じじゃないし・・ま、仕方ないな。

そんなことが一瞬頭をよぎったが、エルフの言葉が俺に響いた。


「エルフがいるのですか?」

俺は思わず聞く。

「えぇ、おります。 こちらも数は少ないですが存在しておりますよ」

「そうですか。 私のところでもエルフとハイエルフの姉妹がおりました」

「ハイエルフがいるのですか? それは珍しい」

ヘルヘイムが少し驚いている。

「私どもの世界では、時間の観念があまりありません。 進化速度も遅々たるものです。 エルフもハイエルフになりえているのかどうか・・わかりませんね」

ヘルヘイムが困惑しながら答える。

俺はその言葉を聞き、確かハイエルフになる条件って変な条件だったよなと思っていた。


ヘルヘイムや神官長たちからの話でわかるのは、6つの都市国家なるものがこの世界に存在しているということだ。

神殿国家、死霊国家などだ。

後は神殿国家が勢力的に国と認めている竜神族、魔術国家、武装国家、精霊国家があったと思うが、エルフは国を持たないようだ。

なるほど。


「テツ殿、どうぞこの世界をよろしくお願いします。 私が動いてしまっては、この国が危ういのです。 それにどの国も大きな力を出せないでしょう。 出せば、その後の空白を狙われますからね」

ヘルヘイムはそういうと、壁際で待機していたメイドに俺たちを光の巫女のところへ案内するように指示をしていた。

ルナはまだ食べるものが残っているというので、後から来るそうだ。

俺だけ案内してもらう。

口の周りを汚すルナを後にして、俺はメイドについて行く。



俺が去った迎賓室の中で、ルナとヘルヘイムが話していた。

「どうだ、ヘルヘイムよ。 あのテツという人間、なかなかのものだろう」

「ルナ様、人間と呼べるのかどうか。 あの光の障壁はとうてい私では突破できそうにない代物です。 クイーンバハムート様などの竜神気りゅうじんきのようでした。 まだ手が痺れております」

ヘルヘイムが神光気に触れた手を見ながら言う。

「まぁな。 テツの警戒心が解かれれば、平気で触れられるのだがな。 お主はまだ警戒されているということだ」

ルナが笑いながら言う。

「いやはや・・ですが、まさかこうしてルナ様にお会いできる日が来るとは思ってもみませんでした。 本当に感激しております」

ヘルヘイムがゆっくりと頭を下げていた。

「ふむ。 まさかワシもお主がこの地球にいるなどとは思ってもみなかったぞ。 ま、この世界が落ち着けば、地上とも行き来できるかもしれぬな」

ルナがそう言うと、ヘルヘイムはうれしそうにうなずいていた。



最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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