148 ラピット亭にて
とにかく凛が気絶して王宮で保護されていたということで話は落ち着いた。
どうしてそうなったのかはわからないということにしておいた。
凛が嫁から注意を受けていた。
今度からは決してママから離れないこと。
ママも注意するからと凛に軽いお説教だ。
まさか凛が復活したなんてとても言えない。
これは俺とばあちゃんたちの秘密だ。
さてと、無事に解決したので俺は家に戻ることにする。
「じゃ、またな。 凛もおやすみ~」
「うん、おやすみパパ」
凛の笑顔が俺にはたまらなくうれしかった。
時間は21時。
俺は家に帰る途中で思い出した。
!!
そういえば、ゼロたちが街に繰り出したはずだ。
まぁ、どこへ行ったのかはわかる。
食べ物のあるところだろう。
俺は急いでギルドへ向かう。
まずはラピット亭へ行ってみる。
・・・
居た!
店員が困ったような顔でゼロを見ている。
ゼロはニコニコしながら店員を見ていた。
イリアスは黙って食べている。
俺が近づいて行くとゼロが気づいて片手を上げる。
「おーい、テツ」
あのね・・笑って手を振っていいのか、ゼロ。
俺はそう思いながら店員の方を向く。
店員が引きつった笑顔で俺に話してくる。
「これはテツ様。 実はですね、この方がテツ様のお知り合いだというのです。 それはいいのです。 ただ・・お金を持っていないということでして、それで事情を聞いていた次第です」
「あ、わかりました。 確かに俺の友人です。 この人たちが食べたのは俺がお支払いしますから問題なく」
俺が答えると店員の顔が一気に明るくなった。
「そうですか、ありがとうございます。 さすがテツ様ですね、太っ腹です」
店員はそういうと奥へと消えて行った。
太っ腹?
俺はその言葉が少し気になったが、まぁいい。
ゼロの横に座らせてもらう。
「テツ、終わったのかい?」
ゼロがモグモグと食べながら聞いてくる。
「はい、無事終わりました。 ありがとうございました」
「うむ、それは良かった・・これもうまいな・・」
ゼロがつぶやく。
イリアスは黙々と食べている。
「テツ、それで君はどうするつもりなんだい?」
ゼロが聞く。
「それですが・・正直わかりません。 自分がどうなっているのかもわからないのです。 ただ、明日アニム王が王宮に来てくれと言っていました。 おそらくそこで何らかの方向性が見えると思います」
「そうかい。 君はもはや人の枠ではいられないだろう。 自分ではわからないかもしれないが、人種族の制約はなくなっていると思うよ。 それを進化というのかどうかわからないが」
「制約がなくなっている?」
俺はゼロの言葉を繰り返す。
「まぁ、明日に人種族の判断が出るのだろう? それで決めればいい。 それよりもこのお店はおいしいね」
ゼロには食べ物のことが重要らしい。
俺もあまり深く考えれずにゼロに応対する。
「えぇ、美味しいですよ。 それに他にも街にはおいしいお店はいっぱいあります。 あ、この街では帝都ホテルの食堂も絶品ですよ」
ゼロが目をキラキラさせながら俺を見つめる。
「ほ、ほんとかい? ここよりもおいしいところがあるのかい?」
まるっきり子供だな。
俺はそう思いながらゼロを見る。
「え、えぇ、それぞれのお店が独特というか、どこも美味しいのですよ」
「うんうん、来たかいがあったよ。 これは全部食べ終わるまで帰れないな」
ゼロが不吉な言葉を出す。
すると、俺の近くに人が一人近寄ってきた。
「よう、テツ」
ケインだった。
「あ、ケイン!」
「見てくれ、この通り身体も元通りになったよ」
ケインはそう言って俺に身体を見せてくれた。
腰には拳銃のホルスターをつけてまるで西部劇だ。
「そうか、よかったなケイン」
「ありがとうテツ。 それに俺の回復した身体を見てもあまり驚かないんだな。 ジェニファーもそうだったが、他の連中は驚いていたよ。 その後みんなで食事をしてテツが来るかと思っていたが、今はみんな休んでいる。 それで俺が様子を見に来たんだ」
ケインが微笑みながら言う。
「あ、あぁそうだったのか。 すまないケイン」
「いや、いいってことよ。 テツも忙しいだろう。 それでその隣の子どもさんはテツの子供かい?」
俺はゼロの方をチラっと見て答える。
「い、いや違うよ。 この人は俺の友人なんだ」
「ふぅん、そうかい。 ま、取りあえずテツには挨拶しておかなきゃと思ってね。 邪魔したね、またな」
ケインは軽く挨拶をすると、そのままラピット亭を出て行く。
俺も挨拶を返して見送っていた。
なんかカッコいいぞ、ケイン。
ゼロたちはひたすら気にすることなく食べている。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
よろしければ、ブックマークなど応援お願いします。




