145 時間遡行
ばあちゃんはアニム王の言葉の意味がわからない。
凛は死んだはずだ。
それが戻って来るという。
どういうこと?
ばあちゃんの動揺をよそにルナがテツの所へ近寄って行った。
「ほれテツよ、寝ている場合ではないぞ」
パァーンとテツの頬を弾く。
パン、パン、パン・・。
・・・
「・・痛ってぇ、なんだ?」
俺は頬に痛みを感じて飛び起きた。
?
周りをキョロキョロと見渡す。
・・・
どこだ、ここ?
ルナさん・・あれ、フレイアとアニム王。
!!
え?
ゼロとイリアス?
ん?
ばあちゃんとじいちゃんもいるぞ。
はぁ?
何が起こっているんだ?
「ようやく起きたかテツ。 それ、挨拶しろ」
ルナの言葉に俺は立ち上がりゆっくりと見渡す。
全員の目が俺を向いている。
俺って何か悪いことしたのか?
!!
あ、そういえば城戸を斬った後の記憶がない。
真っ二つに斬ったはずだが・・。
そうだ!
凛が・・凛が殺されたんだ。
そう思うと、少しうなだれた感じになった。
ばあちゃんが俺に話しかけてくる。
「テツ、今、王様が凛が戻ってくるって言ってくださったのだが・・」
!!
俺はその言葉に驚いた。
ばあちゃんの顔をマジマジと見つめる。
「戻ってくる?」
そして、アニム王の顔も見る。
どういうこと?
あ、それにゼロがなんでここにいるんだ?
・・・
・・
俺は状況を説明された。
なるほど、俺が魔王になろうとしたようだ。
それをゼロが止めてくれたらしい。
ありがたい。
だが、なんでゼロがここに居るんだ?
「でもゼロ、どうしてこの帝都にいるのです?」
俺が聞くと照れくさそうにゼロが話す。
「いやね、テツが出してくれた食べ物がおいしかっただろ? 食べるくらいなら世界に干渉はしないだろうと思ってね。 それにボクが来てよかったよ。 これも神が望んだことだろうね。 うんうん」
ゼロが勝手に納得している。
いやあんた、ただ食べたいだけだろ。
おっと、そうだった。
凛が戻ってくるという話だ。
どういうことだ?
「アニム王、凛が戻って来るというのは・・」
アニム王が説明してくれる。
「うむ。 リザレクションの魔法・・死者蘇生の魔法があるのだが、テツのお母様がもう少しレベルが上がれば可能だと思う」
俺はばあちゃんと顔を見合わせて顔をほころばせた。
「だがね、お母様のレベルを上げる時間を待つわけにはいかない。 リザレクションには時間制限があるんだ。 そのフィールドで24時間以内。 これは絶対なのだよ。 時間がないだろう。 そこでもう一つの方法がある」
アニム王の顔をみんなが見つめる。
「時間遡行を行うんだ」
アニム王の言葉にフレイアが反応する。
!
「アニム、あのレイアの時に行おうとしてくれた・・」
アニム王がうなずく。
「うむ。 身体が存在しているときはそれほど制限はないのだよ。 時間遡行はその時間経過をなかったことにする。 凛ちゃんの遺物があればそれを媒体にして時間を遡行する。 72時間までなら巻き戻せるんだ」
アニム王はそこまで話すと一呼吸おいて、やや重い口調で話す。
「ただね、凛ちゃんの場合には等価交換を要求されるのだよ」
「等価交換?」
俺は思わずつぶやいた。
「そうだ。 記憶からわかることだが、凛ちゃんが殺される直前まで戻るとなると、かなりの生命エネルギーが必要となる。 レベルの低いものなら死ぬかもしれない」
アニム王がそこまで言うと、ばあちゃんが言葉を出す。
「王様、私の命を使ってください」
俺は驚いた。
俺よりも先に言われた。
「い、いえ、私の方こそ・・もうここまで生きたのです。 私の命を使ってください」
ばあちゃんに遅れて俺が言う。
アニム王は俺たちを見ながら笑いだす。
「フフ・・あはは・・いや、すまない。 テツもお母様も、何と言うか言葉になりませんな。 凛ちゃんは余程愛されていたのでしょう」
続けてアニム王が話す。
「命がなくなることはないと思われます。 テツにしてもお母様にしてもです。 幸いテツはかなりの高レベルです。 問題はないでしょう。 ただ、覚悟が聞きたいと思っていたのですが、これほどあっさりと言われてしまうと、少し拍子抜けです」
アニム王は笑う。
「アニム王・・」
「テツ、魔石を持っているだろう? レベルの高い魔石なら負担が減るよ」
アニム王が付け加えて言う。
なるほど、どうやら本当に覚悟を聞きたかったようだ。
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