141 硬直
<帝都の飛行船の発着場>
北米ギルドからの飛行船が到着していた。
乗客がぞろぞろと降りてくる。
テツたちの一行も降りて来た。
ジェニファーがケインを背負っている。
「ケイン、神殿はすぐ近くだから、身体が元に戻ったら一緒に食事でもしよう。 帝都のラピット亭ってところが美味しいんだよ」
「ありがとう、テツ。 行って来るよ。 食事が楽しみだな」
ケインがニヤッと笑うと、ジェニファーたちは神殿の方へ向かって歩いて行った。
俺はフレイアに睨まれている。
「テツ、よくも私を見捨ててくれたわね。 くだらない話を長いこと聞かされて・・」
フレイアが語気を強めようとすると、人の流れの中にポツンと突っ立っている人がいた。
城戸だ。
俺の方をジッと見ている。
俺はフレイアの口を手でふさぎ、城戸の方を見た。
フレイアが少し暴れようとしたが、すぐに状況を理解。
俺と一緒に城戸を見つめていた。
俺は城戸に近づいて行く。
「町田か・・少しいいかな」
城戸が少し暗い雰囲気で話しかけてくる。
俺はうなずくと、城戸の後をついていった。
フレイアは俺から少し離れ後をついてくる。
城戸は昇降装置を使いギルドを後にする。
無言のままだ。
そのまま歩いて、ダンジョンのある方へ歩いて行く。
帝都の城壁の近くまで来ると人通りも少なく、ちょっとした広場がある。
そこで立ち止まった。
「城戸さん、どんな話ですか?」
俺は城戸の背中に言葉をかける。
城戸がゆっくりと振り向きながら、俺の方に何かを投げてきた。
トサ・・。
俺の前にステッキが落ちる。
ん?
どこかで見たようなステッキだな。
俺はそう思いつつ見ていた。
城戸が言葉を出す。
「・・わざとじゃないんだ。 まさか刺さるとは思ってなかったんだ・・」
?
何を言っているんだ、こいつ?
俺には意味がわからない。
城戸の顔を見ると、笑っているような引きつっているような妙な顔をしている。
「・・町田・・悪気はなかったんだよ。 許してくれ・・」
俺は城戸を見つめている。
・・・
意味がわからない。
城戸は少し震えているようだった。
「・・俺がレイピアで少し服をまくり上げたんだ。 そうしたら深く刺さってしまって・・そのまま蒸発したんだ・・」
?
「城戸さん・・いったい何を言っているのかわかりませんが・・」
俺の顔を城戸が見て視線を外す。
「・・本当にすまない。 町田・・そのステッキ・・娘さんのものだろう?」
ドキン!!
俺の全身を何かが駆け抜けた。
娘?
何を言っているんだ?
俺はゆっくりと歩いてステッキを拾ってみた。
・・・
確かに、じいちゃんに作ってもらった凛の魔法ステッキのようだ。
何でこれを城戸が持っていたんだ。
それに投げ捨てたよな?
どういうことだ?
いや、わかっている。
城戸が謝っている。
何をだ?
考えたくない。
ここで思考を停止したい。
だが、勝手に頭の中で物事を考えている。
城戸の言葉を整理している。
やめろ!
考えるな!
考えるな!!!
俺は凛の魔法ステッキを握りしめながら膝をついていた。
あぁ、凛が殺されたんだ。
誰に?
目の前にいる城戸だ。
何で凛なんだ?
こいつは何で凛を・・。
ドキン!!
また、俺の身体を衝撃が突き抜ける。
俺は少し息を吐き、言葉を出す。
ふぅ・・
「城戸・・どういうことだ?」
俺の横でフレイアが少し震えていた。
「・・テ、テツ・・」
俺は立ち上がり、城戸の方を向く。
俺の身体からゆっくりと怒りが溢れてゆくようだった。
城戸が一歩後ろへ下がる。
「動くな!」
俺が言葉を出す。
城戸の身体が硬直する。
「・・がはっ」
「城戸、どういうことか説明しろ。 お前が凛を殺したのか? いったいあの子が何をしたんだ? えぇ!!」
後でわかったことだが、俺の身体から出るオーラが場の雰囲気を支配していたようだ。
俺のスキル、神威による闘気のようなものらしい。
城戸は金縛りにあったように動くことができない。
だが、口は動かせる。
「城戸、正直に答えろ。 いったい何をしたんだ?」
「うぐぐ・・・」
城戸が呻いている。
すると、どこからともなく一人の人が歩いて来る。
ルナだった。
俺に近づいてくる。
「妙な気配を感じて来てみれば、テツか」
「テツ、フレイアも怯えて動けていないぞ」
ルナが言う。
俺はチラっとフレイアを見たが、そのままルナの方を見る。
「ルナさん・・今、こいつから大事な話を聞くところです。 すみません」
「テツ、貴様の闘気で誰もこの領域に近づけるものはいない。 フレイアですら苦しんでいる。 それにその男もしゃべれないぞ」
ルナの言葉に俺は少しだけ冷静さを取り戻した気がする。
「ぷはぁ・・テツ、いったいどうしたのよ」
フレイアが俺の肩に触れて言う。
「こいつが凛を殺したらしい」
「え? 凛ちゃんが・・」
フレイアはそこまでしか言葉が出て来ないようだった。
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