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14 ヘルヘイムの屋敷へ

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感謝です。



俺たちの目の前で、アニム王が使ったようなゲートをヘルヘイムが出していた。

黒い膜のようなもので覆われた入り口が現れる。

「どうぞ、こちらへ」

ヘルヘイムがそう言うと、俺たちを案内してくれる。

ヨルズはずっと黙ったままだった。

ゲートをくぐると、広いロビーのような場所へ出た。

ロビーの左右に頭を下げて人が整列している。

見るからにメイドだろう人たちが並んでいた。

「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」

全員が乱れることなくハモっていう。

その中を、俺たちは歩いて行く。


ヘルヘイムは当然として、ルナも平気で歩いて行く。

俺とヨルズだけがオドオドとして歩いていた。

そりゃ、こんなに人が頭を下げた間を歩けないぞ。

それに下げた頭から強烈な視線を感じるし・・。

ヨルズがフラフラとしている。

よろめいて倒れようとすると、メイドの1人が自然に近寄り、そっと抱えた。

ヘルヘイムが振り向き、

「ヨルズは疲れたようですね。 どこか休めるところで様子を見てあげてください」

そういうと、メイドが頭を下げ、

「かしこまりました」

ヨルズを抱えて歩いて行く。

ルナは笑っている。


俺はルナとヘルヘイムの後をついて行く。

ただ、強烈な視線は感じる。

ヨルズもこのプレッシャーにやられたのだろうな。

しばらく歩いて行くと、ヘルヘイムの迎賓の部屋に到着したようだ。

「どうぞルナ様。 それに・・」

「あ、テツです」

俺はすぐに名乗った。

そういえば、まだ自分の名前を言ってなかったっけ。

ヘルヘイムがうなずき、言う。

「テツ様もどうぞ席についてください」

俺はぎこちなくうなずき、ルナの横に座ろうとすると、サッとどこから現れたのかわからないが、椅子を後ろに引いてくれて俺が座るタイミングで椅子を差し出してくれる。

完全に自然な感じだ。

俺にはできないな。



テツ達が屋敷に来たときに並んで出迎えたメイドや執事。

ヘルヘイム達が去った後、あるメイドが言う。

「執事長、あのルナ様の後ろにいた人間でしょうか、我々のプレッシャーを感じても気絶しませんでしたね」

「うむ。 さすがルナ様のお連れの方だな。 ただ、用心しなければならないほどの雰囲気を感じはしたが・・」

きれいに整った髭を触りながら、執事長が言う。

「え、本当ですか? 私にはわかりませんでしたが・・」

「うむ。 うまく抑えておられたようだ」

執事長がそう答えると、ザワザワとしていた。

「さて、ヨルズ様のご様子を見て、我々もお客様をもてなさなければいけないよ」

「「はい! かしこまりました」」

メイドたちは、きれいに返事をすると自分たちの仕事を行っていく。



<ヘルヘイムの迎賓室>


俺は相変わらずヘルヘイムの視線を感じ続けている。

「フム・・やはり不思議です」

ヘルヘイムが言う。

「ヘルヘイムよ、テツが緊張しておるではないか」

ルナが笑いながら言葉をかけていた。

「おっと、これは失礼しました」

ヘルヘイムが謝罪をする。

俺はホッと一息をつく。


ヘルヘイムが微笑みながらルナに聞いていた。

「ルナ様、それにしてもまさかこんなところでお会いできるとは思ってもみませんでした」

「うむ。 ワシも思ってもいなかったぞ・・」

・・・・

・・・

ルナとヘルヘイムが今までの成り行きを話していた。

俺は黙って聞いているだけだ。

ただ、出された飲み物はおいしい。

ルナが話している。

ルナたちアニム王国などの星域の連中が、この地球に転移してきたこと。

邪神王の復活があったこと。

それを撃退した後の遺跡からここへ飛ばされたこと。


ヘルヘイムも同じように自分たちの境遇を語っていた。

ザナドゥという都市名は知らないという。

だが、時代的には自分たちのいた時代の後の時代だろうということ。

この星に転移してきたのは、あまりにも前の環境が劣悪になり、自分たちの種族が途絶えそうになったこと。

夜の神の気まぐれか、どこか生活できる場所へ転移をしたら、この地球だったそうだ。

初めは地上でいたが、どうも文明レベルが違い過ぎる。

他星系の進化時間を妨害するわけにもいくまい。

それで転移してきた種族たちと亜空間を作って世界を構築したそうだ。

それ以降は、ほんのたまに外の世界に行ったりもするが、基本はこの世界で生きているという。

外の世界へ出られるんだ。

俺はそれに驚いた。

・・・

かなりの時間を費やし、話していた。

途中で食事も運ばれてきた。


ラピット亭よりもおいしかった。

ルナもヘルヘイムも上品に食べるが、俺はマナーがわからない。

ただ、小汚くない程度に食べているだけだ。

箸を使わせてくれるので、それがありがたかった。

話の中で当然俺の話題にも触れる。

・・・

「テツ、あの雰囲気を見せてやればいい」

ルナが言う。

「ルナさん、あの雰囲気って、神光気しんこうきのことですか?」

俺は聞き返す。

「なんていう名称なのか知らんが、あの光るやつだ」

ルナが簡単に言ってくれる。

ヘルヘイムは興味深々だ。


俺は席を立ち、呼吸を整えて気合を入れてみる。

「ふん!」

俺の身体が金色っぽい白色の光をまとう。


カラン、カラン・・。

壁際にいたメイドが、お盆を落としていた。

「し、失礼しました」

そのメイドは急いでお盆を拾い、ヘルヘイムに謝罪する。

ヘルヘイムはどうでもいいらしい。

ただ、ゆっくりと立ち上がり俺の方へ近づいて来る。

手を伸ばして光に触れようとする。


バチィ!!

ヘルヘイムの手が弾かれた。

「クッ! なるほど、夜の眷属は触れることを許されないというわけですか」

すると、ルナが席を立ち俺の方へ近寄って来る。

そして、俺の肩に触れる。

「ヘルヘイムよ、そんなこともないぞ」

ルナがニコッとして言う。

「ルナ様、いったいどういうことでしょうか?」

「さぁな。 ワシはテツとは親しいからな」

ルナはそれ以上は言わず微笑んでいる。


俺は神光気しんこうきを解き、普通の状態に戻る。

ヘルヘイムは俺を見ながら言う。

「テツ様は、雰囲気そのまま、まるで竜神族の長のようですな」

俺は少し驚いた。

龍神族の長って、まさかクイーンバハムートのことか?

少し迷ったが、俺は聞いてみることにした。

「あの・・ヘルヘイムさん。 龍神族の長って、もしかしてクイーンバハムートのことですか?」

俺の言葉にヘルヘイムが反対に驚いたようだ。

「よくご存知ですね。 えぇ、誰も姿を見たこともないという伝説の古龍です」

・・・

俺は迷ってしまった。

クイーンバハムートを顕現させました、なんて言えないだろう。

いや、ルナとこれほど親しく接しているので話しても大丈夫かもしれない。

それに、いずれわかることだろう。

俺はそう思うと、ルナを見た。

ルナは何も言わない。

ただ飲み物をおいしそうに飲んでいた。

そして、出されたスイーツを口いっぱいに頬張っている。

ダメだこりゃ。


「ヘルヘイムさん・・実はですね・・」

俺はそう言って、クイーンバハムートを顕現けんげんさせたこと。

名前も与えたこと。

その他、修行のことなどを簡単に説明した。

・・・

・・

「なるほど・・それなら納得です。 それで、この世界の結界も干渉しやすくなったのかもしれませんね」

ヘルヘイムはつぶやきながら、納得していた。


「おっと、それよりもルナ様。 ヨルズを連れて何をしておられたのですか?」

ヘルヘイムが言う。

「うむ。 まずはダンジョンの管理権限をいただいて、ワシのエネルギーの安定供給の確保だな。 それに、神殿国家なるところから光の巫女の捜索を依頼されておってな・・」

ルナがそう言うと、ヘルヘイムが少し考えていた。

そして、ルナを見て言う。

「ルナ様。 その光の巫女ですが、我が国で保護しております」

俺はその言葉を聞き、バッとヘルヘイムに向き直った。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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