132 チームプレイ
どうやら効果があるらしい。
ジョーが続けざま、同じ魔法を放つ。
前にいるハイオーガに交互にライトニングが命中する。
・・・
ハイオーガの動きは止まっているが、ダメージがあるのかどうかわからない。
大きな包丁を振り回していたハイオーガに向かってアンがダッシュする。
「こっのぉ!!」
アンの大剣が袈裟切りに振り下ろされた。
ハイオーガは動けないようだ。
左肩から大剣がめり込んで行く。
お腹の辺りで大剣が停止。
アンは急いで大剣を抜こうとするが、抜けないようだ。
「あ、な、何? 剣が抜けない・・」
アンが慌てていると、アンの横を通過しアベルの刺突剣が繰り出される。
ドドドドド・・・!
ハイオーガにすべて命中。
だが深くは刺さらないようだ。
「このバケモノがぁ!!」
アベルがそう叫びつつも刺突剣の攻撃を加速させていく。
ジョーは支援として氷魔法を放ち2体のオーガの動きを封じていた。
アベルの連撃が終わったのか、一度バックステップをする。
その時に、アベルの右側からケインが魔弾を放つ。
ハイオーガの顔面にヒットして、首から上が吹き飛んだ。
少しすると、ハイオーガが蒸発していく。
それに従ってアンの大剣も地面に落ちた。
すぐにアンが拾いに行く。
「ケイン、危ないじゃないか!」
アベルが少し笑いながら言う。
ケインはその言葉を聞きながら微笑むが、顔は引きつっている。
どうやら魔力切れが近いようだ。
肩で息をしていた。
残り1体のハイオーガ。
ジョーの魔法で動くことはないが、その目はアベルとアンを見ている。
アンは先ほどと同じように、ハイオーガに向かって大剣を振り下ろす。
「シッ! いっけぇ!!」
ハイオーガが大きな包丁でガードしようとするが、身体が思うように動かないようだ。
プルプルと大きな包丁が震えたかと思うと、地面に落ちる。
ガシャーン!
その音と同時に、アンの大剣がハイオーガの身体にめり込む。
やはり身体の真ん中あたりで大剣の動きが止まる。
「はぁ、はぁ・・やっぱり私では斬り抜けることができないわね」
そうつぶやきながらも大剣を残してバックステップする。
直後、アベルが刺突剣で連撃を入れる。
アンはチラっとケインを見る。
!!
ケインが膝をついている。
「え、ケイン!!」
アンの声にケインは片手を挙げる。
「アン・・大丈夫だ。 負傷じゃない。 魔力切れだ」
ケインはつぶやきながらゆっくりと立ち上がる。
アベルがバックステップをした。
その直後、アンの後ろから炎の玉が飛んでいく。
ハイオーガに命中。
ドン!!
ハイオーガが頭を揺らし、燃えながら苦しんでいる。
ケインの時のように、即死させれるわけではない。
だが、確実にダメージを与えているようだ。
ハイオーガがもがくと、アンの大剣が地面に転がった。
アンはそれを拾いあげると、もう1度ハイオーガに攻撃を加える。
今度は横薙ぎに斬りつけた。
ハイオーガの左脇から大剣が入り、今度は斬り抜けることができた。
!!
「や、やった・・」
アンが微笑みながらつぶやく。
ハイオーガが蒸発する。
『レベルが上がりました』
・・・
アン、アベル、ジョーの頭の中に天の声が響いていた。
アンが振り返り、アベルとジョーを見る。
ジョーはその場に膝をついてうずくまっていた。
アベルも刺突剣を地面に突き刺し、肩で息をしている。
どうやらギリギリ勝てたようだ。
ケインも少しずつ回復しているらしく、ゆっくりとアンたちの方へ歩いてくる。
「アベル、ジョー、ありがとう。 何とか勝てたわね」
アンがニコッとして話しかける。
「はぁ、はぁ・・あぁ、何とかなったな」
アベルが引きつった顔を向けて言う。
「ふぅ・・俺、もう無理・・」
ジョーが仰向けになって寝ころがった。
「みんな、よく頑張ったな。 お疲れ様だ」
ケインもやってきてみんなで魔物を倒したことを称賛し合っていた。
ケインの後ろにはジェニファーが距離をおいて立っていた。
アンは顔を引き締めてケインの横をゆっくりと歩いて行く。
ジェニファーの前に来て睨む。
「ちょっとあんたねぇ、強いんでしょ? どうして補助してくれないのよ!」
アンは少し怒っているようだ。
ジェニファーはキョトンとした顔を向けてアンに答える。
「ケインが何もしなくていいって言ったから」
・・・
「はぁ? 何それ? 目の前で仲間がやられそうになってるのよ! それを・・」
アンがそこまで言った時だ。
ケインがアンの肩に軽く触れる。
「アン・・いいんだ。 俺の指示が悪かったんだ」
ケインが寂しそうに微笑みながら言う。
「ケ、ケイン! でもね、私たち危なかったのよ。 それにジェニファーはいくらでも支援できたでしょ? それを見ているだけなんて・・」
アンがケインにつっかかる。
「アン・・すまない」
「べ、別にケインが悪いんじゃないわよ。 ジェニファーだって悪くない。 ただ、どうして少し支援してくれなかったのかって思ったのよ」
アンがもっともなことをいう。
ジェニファーがケインの方を向いてつぶやく。
「ケイン、支援した方が良かったのか?」
アンはその言葉を聞いて、言葉を失ったようだ。
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