130 ケインのパーティ
25階層へ到達。
サバンナのような風景が広がるエリアだった。
辺りは見渡しのよい感じだが、逆に敵にもすぐに発見されるだろう。
ケインの仲間の男、ジョーが静かに立ち目を閉じる。
「どうだ、ジョー」
ジョーが目を開けて微笑む。
「あぁ、いるな。 レベル的には問題ないと思う。 ただ、俺のところから500メートルくらいしかわからないがな」
「さっすが! 索敵魔法なんてレアなんだろ?」
「アベル、魔法じゃないって。 スキルなんだよ」
「ほんとにアベルは何も知らないわね」
「何言っているんだよ、知ってるよ。 じょ、冗談だよ」
「ほんとに~? ま、いいわ」
「アンは口悪いよな」
「なんですってぇ!」
・・・
ケインは笑いながら聞いていた。
チラっとジェニファーの方を見る。
ジェニファーは気にするでもなくケインたちの後をついて来ていた。
ジェニーは笑わないな。
ケインは思っていた。
人とは交わらない。
というか、人との接し方がわからないような感じだった。
見た目は天使のような美しさだ。
だが、ガラスのような冷たさもある。
みんなジェニーに声をかけるが、すぐに離れていく。
人としての温かみがないという言葉も聞く。
だが、ケインは知っている。
ジェニファーは牢獄に感情を閉じ込めているのだと。
大きくなってわかる。
小さい時に親兄弟が誰もいない。
よく今の年齢まで育ったものだ。
ジェニーは自分で自分を教育したのだろうか。
誰もモデルになる人物が近くにいない。
俺が人として接してやらなきゃ、誰がジェニーに人を教えてやれるんだ。
ケインは本気でそう思っていた。
ケインの仲間たちの小さな言葉が聞こえる。
「・・あのケインの知り合いのジェニファーって子、何も話さないよな」
「そうなのよ。 私が話しかけても笑ってうなずくだけ。 気持ち悪くなってくるわ」
「見た目はスゲー美人だが、人形のようだしな・・」
・・・
ケインにはかろうじて聞こえていた。
ケインが近寄って行き注意しようとする。
ジョーが言葉を出す。
「敵が動き出したぞ。 どうやらこちらに気づいたらしい」
その言葉で全員が一斉に前に集中する。
ジェニファーは特に変化はない。
敵はガーゴイル:レベル19×多数、オーガ:レベル23×10、ハイオーガ:レベル26×3が迫って来ていた。
ケインは自分の両サイドにぶら下げているホルスターから拳銃を引き抜いた。
西部劇で出て来るガンマンスタイルだ。
だが、火薬で飛ぶ銃弾ではない。
自分の魔力を弾丸に変え撃つスタイルのようだ。
弾倉はない。
ジョーは魔法、アベルは刺突剣を使う。
アンは見た目は華奢だが、自分よりもでかい大剣使いだ。
自分のアイテムボックスから愛用の大剣を取り出す。
「アンのその何でもボックスだっけ? いつ見ても不思議だよな。 何にもないところからそんな大きな剣が出てくるんだからな・・」
アベルはそう言いつつ、アンの手元を見ていた。
いや、違ったようだ。
アンの胸元を見ていたらしい。
「そう? それに何でもボックスじゃなくて、アイテムボックスよ」
アンはそう答えつつもアベルの目線を追ってみた。
「・・ちょっとアベル」
そう言うと、大剣でアベルを殴る。
ゴン!
「痛ってぇなぁ・・なんだよ、アン!」
「あのね、どこ見てんのよ。 人の胸見るより敵を見ろ!」
「アン、仕方無いじゃないか。 そんなに強烈な胸を見るなっていう方が無理だよ」
「そこまでだ。 来たぞ!」
ケインが声を掛ける。
ガーゴイルが迫って来ていた。
ケインが両手で銃を構える。
すぐにケインの銃から魔弾が発射された。
テツが作っているような魔弾ではない。
普通の銃の弾薬のようなイメージで作っているのだろうか。
ケインが連続でトリガーを弾く。
ババン! バン! バン!
次々にガーゴイルに命中する。
小さな爆発が起こり、ガーゴイルが落下しながら蒸発していく。
威力的には小さなファイアーボールといったところだろうか。
「これじゃぁ、俺たちの出番はないな」
アベルがその状況を見ながら言う。
しばらくすると、上空を舞っていたガーゴイルはいなくなった。
地上にはオーガ:レベル23×10、ハイオーガ:レベル26×3が迫って来ていた。
「よし、今度は私たちの番ね」
アンが大剣を肩に担ぎながら言う。
「アン、敵がオーガだからって油断するなよ。 ダンジョンはほぼ階層と同じレベルの魔物が現れる。 だが、その保証はないんだからな」
「わかってるって」
「ケイン、油断はしない」
アベルもそう言うと、アンと一緒に前から迫ってくるオーガとハイオーガに向かって行く。
その後をケインとジョーがついて行く。
ジェニファーはその後から黙って歩いて行った。
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