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127 ゲブの挨拶



あの、いきなり見えたのですが・・。

俺は表情に出すことなくゲブを向く。

「ギルドマスター、せっかくのお話なので胸をお借りしていいですか」

俺は声を出してみる。

レベル的には問題ないと思う。

ゲブはうれしそうに首を縦に振る。

「そうこなくっちゃな。 キャシー、ちょいと闘技場を借りるぜ」

「ギルドマスター・・わかりました。 失礼のないようにお願いします」

受付の女の人がそう言うと、ギルマスは背中越しに片手を軽く振っている。

俺たちはゲブについて行く。

少し歩くと大きな扉があった。

ゲブが開けてくれる。

「ここだ」


俺たちは中に入って行く。

広い空間だ。

野球場くらいの広さがあるんじゃないか。

俺はそう思いながら見ていた。

「テツ君、どんな武器で戦うんだい? 俺はこれだがね」

ゲブはそう聞きながら両拳を合わせて軽く身体を動かしている。

「はい、私もこの拳で戦わせてもらうつもりです」

俺も返答し飛燕を横に置く。

「いいね、既にやる気は整っているということか」

ゲブがうれしそうに言う。

「テツ君、いつでもいいぞ」

ミランさんと初めて会った時のようだ。

なんか懐かしいな。


ダッ!

俺は遠慮なく飛び込む。

レベル差があるので軽く踏み込んで右回し蹴りを繰り出してみた。

ゲブは俺の右足に合わせて左腕でガードする。

「いいねテツ君。 いきなりかい」

!!

俺は驚いた。

ゲブは蹴りを受けつつ前に出てきている。


まさか!

俺がいくら軽く蹴りを出したからといってもレベル差が10近くもある。

相当な速度になっているはずだ。

それに俺のタイミングでは、俺のすねがゲブの腕に当たると思っていた。

だが、脛どころか膝辺りのところで受ける感じになる。

威力はほとんどないだろう。

俺は急いで蹴りを止めて下に降ろす。

そのまま左手の掌打を繰り出した。

ゲブは目の前だ。

俺の左腕が突き抜ける。

違う!

空振りさせられた。


バカな!

目をつむっても当たるところにいたはずだ。

だがゲブは俺の左腕の外側にいた。

俺は急いで自分の右側に全力で飛び退く。

俺が先ほどまでいたところをゲブの左腕が水平にいでいた。


「やるねぇテツ君。 俺の攻撃をかわすなんざ人間じゃねぇぜ」

ゲブが笑いながら話しかけてくる。

そして続けて言う。

「それにテツ君、最後の動きは良かったぜ。 もっと全力でやってくれないと困るな」

俺の背中に寒いものが走る。

軽く震えると、俺はもう一度注意深くゲブを見る。

ピピ・・。

!!

レベル46。

な、何?

さっきはレベル41だったぞ。

どういうことだ?

俺がそんなことを考えていると、ゲブが目の前に来ていた。

ゲブは左正拳突きを繰り出す。

俺はそれを見つつ、左側へ飛ぶ。

同時に神光気しんこうきを纏った。


ゲブはその場で立ち止まり、先程までの笑いがない。

「武装闘気か・・テツ君、いったい何者なんだ?」

ゲブがそうつぶやきながら両腕を交差させて振り払う。

「ハッ!」

ゲブの身体を白というか金色の光というか、俺の神光気のような光が覆った。

「行くぞ」

ゲブが俺に向かって飛び込んできた。

!!

「速い!」

ゲブが連続攻撃を仕掛けてくる。

拳ばかりの攻撃かと思っていると、蹴りも混ぜてくる。

かなり速い。


俺はゲブの攻撃をかわしつつ思っていた。

おかしい・・。

俺が集中すれば、弾丸も見えたはずだ。

それにゼロのところでの修行。

凄まじかった。

あの半年を俺は耐え抜いたんだ。

なのに、ゲブの動きは見えるのだがスローモーションに見えない。

いったい何が起こっているんだ?



フレイアが闘技場の壁際で立って見ていた。

受付のキャシーも一緒について来ていたようだ。

キャシーがフレイアに話しかける。

「フレイアさん、うちのギルドマスターに勝てる人なんていないと思いますよ。 トリノさんとも戦ったことあるのですが、まるで子供扱いでした。 自分から魔族を名乗り、それにたがわぬ実力を見せつけています。 初めは皆さん警戒していましたけれど、すぐにその誠実さに心惹かれていくようでした。 私だってそうです。 だからそんなギルドマスターの強さの一端を知っています。 改めて見て思うのですが、テツ様って何者なんですか? ギルマスと戦い始めて、光ったかと思うと、今では二人ともたまに見えたかと思うと、バチバチと閃光が見えるだけで、何が起こっているのかわかりません」

キャシーは一気に話してくる。

「そうね、私にもはっきりとは見えないけど、二人が戦っているのはわかるわ」

「え? フレイアさん、見えるんですか?」

キャシーは驚く。

「ううん、完全には見えないわよ。 そう感じるだけ」

フレイアにしても全部が見えているわけではない。

何となくわかる程度だ。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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