120 まさか、城戸か?
さて、時間つぶしにはなったな。
俺は取りあえずアリアにお礼を言って席を立つ。
あれ、いったい何しに来たんだっけ?
まぁ、いい。
受付を後にして、フロアを見ると驚いた。
!!
あれは・・エルフじゃないのか?
耳の長いきれいな女の人が歩いている。
フレイアじゃない。
緑色の長い髪をなびかせて歩いている。
エルフらしき女の子は掲示板の方へ近寄って行く。
男たちがすぐに声をかけに行っているが、軽く片手であしらわれている。
気位が高い奴だな。
すると、そのエルフらしき女の子がクルッと後ろを振り向く。
片手を上げてニコニコと笑顔を作り走り出す。
その視線の先を見ると、白い衣装に身を包んだ男たちが歩いて来ていた。
眩しい感じがする。
エルフが思いっきり先頭の男に飛びついていた。
男は自然な動作でエルフを抱き、優しく口づけをする。
・・・
抱きついたエルフがゆっくりと男から離れた。
目はうつろな感じになっている。
ジッと男を見つめている。
あの男、やるなぁと俺は見ていた。
・・・
ん?
何か見覚えがある。
そんな気がした。
男はゆっくりと受付へ向かって行き順番を取っているようだ。
すぐに受付が応対している。
待ち時間はなかったようだ。
受付はロディーネだ。
ロディーネがはにかみ、なにかぎこちない感じがする。
男は立ち上がると、ロディーネに軽く挨拶し掲示板の方へ向かって行った。
エルフにキスした男の他の2人もまぁまぁのイケメンだろう。
ただ、男の俺から見ればそれほどでもない。
だが、あぁいうタイプは女性受けがいいのだろうな。
そんなことを思ってみていた。
アリアが言っていたところでは、5人組のイケメンパーティだったな。
こいつ等で間違いないだろう。
エルフの他に一人女性がいるが、確かに色っぽい感じがする。
みんなで微笑みを浮かべながら掲示板を見ていた。
俺は集中してこのパーティを見る。
ピピピ・・。
なるほど、全員がレベル27程度か。
結構なものだ。
俺がそんなことをしていると、ギルドの入り口からフレイアが入ってきた。
フレイアはゆっくりと歩きながらキョロキョロとしている。
俺を見つけると片手を上げて駆け寄ってくる。
当然、冒険者の男たちの注目を浴びる。
あのイケメンパーティもフレイアを見ていた。
フレイアが俺の所に来てニコッと微笑む。
「テツ、準備いいわよ!」
俺はうなずき、フレイアと一緒に昇降装置の方へ行こうとした。
するとイケメンパーティのエルフとキスをした男が俺の顔を真剣なまなざしで見ている。
何かを考えている感じだ。
・・・
「もしかして、町田ちゃんかい?」
!!
俺はその一言で分かった。
城戸敬だ。
俺もそれほどのタイムラグもなく答える。
「あ、城戸さん?」
俺の言葉を聞くと、城戸は満面の笑みを浮かべて近寄ってきた。
「いやぁ、久しぶりじゃない? 何年ぶり? 俺が自衛隊を任期で終わってからだから・・20年以上は経っているんじゃない?」
城戸はニコニコしながら話してくる。
城戸のパーティたちが不思議そうな顔を城戸に向ける。
城戸が説明していた。
昔の自衛隊の時の知り合いなんだとかなんとか。
アリア、変装じゃないぞ。
俺は心でつぶやく。
俺の城戸に対する印象。
嫌な奴だ。
俺の後輩が入ってきたとき、俺にこそっと一言。
「町田さん、城戸さんとは種族が違います」
確かに的を得た言葉だった。
俺が見る城戸は常に自分が優れていると思っているタイプだ。
口には出さないが、自分の判断を間違えているとは思ってはいない。
海上自衛隊には甲板掃除というみんなで掃除をする時間がある。
その時間に俺が少し遅れた。
確か班長か何かに呼ばれていたと思う。
私用ではない。
城戸が言ったものだ。
「町田ぁ、みんなで作業するのに遅れんなよ」
そんな城戸は遅れるどころか、外出届を提出していないときが多々あった。
俺が外出届を出していない時には、あいつはいつも楽ばかりしてるよな、とみんなに言っていたという。
それに俺たちの班にはもう一人城戸寄りのやつがいた。
そいつは特に何も言わないが、常に城戸をフォローする。
また城戸は、東京の地元ではそこそこの悪の連中に顔が知れているということで、城戸寄りの奴は軽く尊敬でもしていたのだろう。
俺と後輩は、そんな種族とは全くの接点がない、いわば真面目な種族タイプだ。
合うはずがない。
まぁ他にもいろいろあるが、俺にはそんな記憶があった。
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