12 ダンジョンマスター登場
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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「ルナさん、これで魔法を放ちます。 少し爆風が来るかもしれないので、俺の後ろでいてくださいね」
ルナが俺の後ろに移動。
俺は魔法で自分の周りを防御。
フェンリルが近づいてきていた。
30メートルくらいまで近づいてきただろうか。
フェンリルが体勢を低くして、飛びかかろうとする。
俺はそんなのお構いなしに、シルバーでフレアを撃つ。
カチカチ!
あ、しまった。
2連弾撃ってしまった。
魔法防御を強く意識する。
フェンリルに赤い小さな弾が向かって行く。
少し、ほんの少しの静寂の後、フェンリルのところで大爆発が起こる。
ドッゴォォォォーーーン!!!!
おぉ!
俺のところも揺れているぞ。
「テツよ、これはいい魔法を持っているな。 獄炎魔法のようだ」
ルナが俺の背中から言う。
フレアの爆風はしばらく続いたが、収まって来た。
シールドを解除してみると、先程までの冷気はない。
『経験値を獲得しました』
天の声が聞こえていた。
どうやらフェンリルを倒したらしい。
だが、倒したのはいいが、フロアマスターだったのだろうか?
もし違っていたらどうなるのだろうか。
違うボスが出て来るのかな?
そして、最下層のボスを倒すとダンジョンの管理権限が委譲されるはずじゃなかったのか?
それとも既に俺の管理下になったのかな?
いろんなことが俺の頭に浮かんできた。
「ルナさん、これでクリアなんですか?」
俺は少し不安そうな顔で聞く。
「ふむ。 先ほどの犬が管理者ならば、このダンジョンの鍵か何かが落ちているはずなのじゃが・・ないな」
「鍵、ですか?」
俺はオウム返しで聞く。
「うむ。 まぁ印みたいなものじゃからな。 鍵である必要はないが、何かそういったものが落ちてないかと思って見ているのだがな・・」
ルナがそう言うと、女の子の声が聞こえてくる。
「ちょっと、ちょっと、何してくれるんですか~! 私のフェンリルちゃんを倒すなんてひどすぎません?」
俺たちはその声の方を向く。
今のルナくらいか、少し小さな感じの女の子だが、どこかでみたことがあるような・・そんな感じがした。
俺がそんな感じでその女の子を見ていると、ルナが言葉を発する。
「貴様はサキュバスではないか。 お前がこのダンジョンの管理者か」
「なんなんですか、偉そうに・・そりゃ、あたしが管理者ですけど、あなたこそ・・な・・んで・・」
女の子の歯切れが悪くなってきた。
小走りで近寄って来る。
ルナの近くまで来てゆっくりとルナの周りを動きながらルナを見つめる。
クンクン・・匂いまで嗅いでいる。
俺は黙って見ているだけだ。
「・・まさか・・ね。 あの方は違う世界におられると聞いていたのですが。 そんな・・」
女の子が両手を組んで考え込んでいる。
「サキュバスの女よ、どうしたのだ?」
ルナが聞く。
「あの・・いや違うわね。 でも・・」
「おい、はっきりしろ!」
ルナが言う。
「は、はい!」
女の子は背筋を伸ばす。
そして、続けて言う。
「あのですね、もしかしてあなたは夜の王の関係者の方なのですか? 雰囲気といいますか、匂いといいますか・・ヴァンパイアに近い感じがするのです」
!
俺は驚いた。
ヴァンパイアに匂いなんてあったんだ。
俺にはわからないぞ。
雰囲気は・・それもわからないな。
美人ということだけはわかる。
「ふむ。 まんざらバカでもないようだな。 そうだ、ルナだ」
!!
女の子が飛び上がって驚く。
「ひえぇぇぇーーー!! その名前を言っちゃいけないんですよ! デーモンロード様に殺されます」
「なに? デーモンロードがいるのか? まさかヘルヘイムというのではないだろうな」
ルナが言うとその女の子はさらに驚いていた。
「ど、ど、どうして知っているんですか? あのお方は地上には一度も現れたことはないはずですけど・・」
女の子はオロオロしている。
「おい女、ヘルヘイムはどこにいるのだ?」
ルナが言う。
「へ、ヘル・・呼び捨てですか? あなた、死にましたね」
女の子は妙に落ち着いてきている。
「女、どうでもいいのだ。 ワシの質問に答えぬか!」
「は、はいー!!」
女の子は条件反射なのだろうか、背筋をピシッと伸ばしている。
本能的にルナが絶対者なのだろうことをわかっている感じだな。
・・・・
・・
女の子はいろいろ話してくれた。
女の子はサキュバスで、ヨルズというそうだ。
どこかで見たことがあると思ったら、ウルダさんにどことなく似ているんだ。
・・中身は全く別物だな。
それに身体もまだまだ貧弱だ。
また、ヨルズからダンジョンマスターキーをいただいた。
ヨルズの首にぶら下げていたものだ。
そのままルナに手渡している。
俺が持っていても意味がない。
「ヨルズよ、まずはヘルヘイムのところまで案内しろ」
ルナが完全に上から目線で言う。
「は、はい~! でも、ダンジョンの管理者が交代しましたし、誰かいなければ不安定になってしまいます」
ヨルズが言う。
「そうか・・ならば、こいつを残して行こう」
ルナがそう言うと、魔素を集めて魔核を作る。
それを掌の上に乗せて何やら詠唱していた。
すぐにきれいな紫色に光り、それを近くの岩に埋め込んだ。
!
岩がバキバキと離れて、だんだんと人型になって行く。
あれ?
見たことあるぞ・・あ!!
こいつ、タイタンじゃないか!
俺は少し前のめりになりながら見ていた。
タイタンの大きさは2メートルくらいだが、ゆっくりと歩いてきてルナの前で膝まづく。
「タイタンよ、このダンジョンの管理をしろ」
ルナがそう言うと、タイタンがゆっくりと立ち上がり壁際の方へ移動して動かなくなった。
「ヨルズよ、これで大丈夫だ」
ルナがそういうと、ヨルズは口を半分くらい開けて呆けている。
ルナがスタスタと歩いて行って、ヨルズのお尻を蹴っ飛ばす。
バシ!
「ハッ! こ、これは・・なんていう魔物なんですか? 恐ろしいほどの魔素を感じるのですが。 それにあなたはいったいなんてことをするんです・・」
ヨルズがそこまで話すと、ルナがもう一度ヨルズのお尻を蹴っ飛ばす。
「キャン!」
「うるさい。 サッサとヘルヘイムのところへ案内しろ」
「・・うぅ・・はい・・」
ヨルズは涙目になりながら、既にルナに調教されているようだった。
もしかして、こうやってウルダも調教されたのかな?
ルナ・・あんた怖いよ。
俺がそう思っていると、ルナが近づいてくる。
「テツよ、少し疲れたのだ。 ちょっと顔を貸せ」
ルナがそう言うと、俺の頭を掴み、いきなりディープなキスをする。
ウグググ・・ルナさん、あんたいったい!
もう生命エネルギーは必要ないって言ってなかったっけ?
俺はそこまで思うと、意識が薄れていく。
・・・
・・
俺が目を覚ますと、横でルナが座っている。
ヨルズは駄犬よろしく、ニコニコしてルナの周りではしゃいでいた。
「おぉ、気が付いたかテツ。 すまんな、タイタンなどを作ったから疲れたのだ。 まぁ、ワシに対するご褒美だと思ってくれ」
ルナが言う。
俺は言葉がなかった。
身体をゆっくりと起こし、全身をチェック。
・・・
どこも問題ない。
自動回復ですぐに回復しているようだ。
そんな中、タイタンが動かずに同じ場所でジッとしていた。
注意してタイタンを見てみる。
ピ!
タイタン:レベル45。
おい!
ルナさんよ、地上のタイタンよりもレベルが高いぞ。
それに、あのロボマシンみたいな魔物を作ったというか、イメージしていたのはやはりあんただったのか。
死ぬかと思った魔物だぞ。
俺は少し恨めしそうにルナを見る。
「ん? どうしたのだ、テツ。 何か文句でもあ・る・の・か?」
ルナが微笑みながら俺のおでこをチョンと触る。
「い、いえ、文句はありませんが、ルナさんにライフドレインされると意識を失う自分が情けなくて・・」
俺は苦しい言い訳をする。
それに、こんな美人にこんな顔されたら、何にも言えないぞ。
「まぁ、そう言うな。 一気にテツのエネルギーをいただいているからな。 時間をかければ意識を保てると思うが、ついついおいしくてな・・」
ルナがニヤッとしながら言う。
そして、続けて、
「ヨルズよ、早速頼むぞ」
ルナが声を掛けていた。
「ハイ!! わかりました、ルナ様」
・・・
ヨルズ、完全に躾けられたな。
心の声です、はい。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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