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114 レアの調査



レアは一方的に判断したりはしない。

梓様の話も聞いて、それで自分の判断をするつもりだった。

とはいえ、自分がテツ様に心惹かれているのは間違いない。

ただ、今は素直な心で梓様の話を聞いている。

・・・

嫁の長い話もネタが尽きて来たようだ。

レアがまたも丁寧に優しく聞く。

「梓様、テツ様はお子様を育てる義務を放棄されたりしませんでしたか?」

「そうですね、外をほっつき回っているのを放棄と言えばそうかもしれません」

「家には帰って来られることはなかったのですか? わたくしが見たところでは、お子様たちはテツ様にかなり懐かれているように感じるのですが・・」

レアは聞く。

「う~ん・・難しいところですね。 子供たちはパパさん・・いえ旦那のことをどう考えているのかわかりません」

レアはその言葉を聞いて、これは子供たちにも聞いてみなければと考えていた。

「梓様、長々とお話に付き合わせてしまい申し訳ありませんでした。 お詫びいたしますわ。 ありがとうございました」

レアが席を立ち、嫁に頭を下げていた。

時間は15時前になっていた。

「え? あ、もうこんな時間に・・こちらこそ楽しい時間をありがとうございました」

嫁も急いで立ち上がり、レアに挨拶をする。

そしてレアの方を見て聞いた。

「レアさん、いったい何の話だったのでしょうか?」

レアは嫁の方を向いて微笑む。

嫁は第二夫人の話のことなど忘れているようだ。

レアが聞き上手だったのか、気持ちよく話せていた。


「いえ、梓様がどういった価値観をお持ちで世界を見ておられるのかと、興味があったものですから。 失礼いたしました」

レアの回答に少し変な顔をしながら嫁が聞く。

「価値観・・ですか?」

「はい。 でも誤解なさらないでくださいね。 私の見ている世界とどう違うのかを知りたかったのです。 人物判断などとは違いますから」

レアの回答に、嫁はついつい聞いてしまった。

「レアさん・・どういったことがわかりましたか?」


嫁の言葉にレアの動きが止まる。

レアは一瞬迷ってしまった。

自分の考えを伝える必要があるのかと。

だが、レアは嫁の方に身体を向けて言う。

「はい、これはわたくし的な見方ですので、参考になるかどうかわかりません。 梓様は現状によって価値観を変化させておられるようにお見受けいたします。 テツ様の評価を相対的なモノサシで判断されておられるようです」

「相対的・・」

嫁はつぶやく。

「はい、わたくしが見たテツ様は、自分というゆるぎないものを持っておられます。 そして、それを他に強制させるような人ではありません。 例えば、人が持っていないものを持っていても自慢することなく普通に行動することができる人物と申せばよいでしょうか。 それに、どんな人にも同じ価値観モノサシで接することができるお方です。 また自分の命をも常に客観的に見ておられます。 まぁ、一言で言えばすばらしい人物ということですわね。 梓様はそのところがよくご理解できていないと判断させていただきました。 つまり、本物が何かわからないと思われます。 いえ、私も偉そうなことは言えませんね、失礼いたしました。 ですが、テツ様のような人物を知人、ましてやパートナーとして得ることは、どれほど自分の人生を豊かにしてくれるかわかりません。 おっと、これまた余計なことでしたわね。 では、失礼いたします」

レアは一気に話すと、颯爽と自習室を後にした。


嫁はしばらく突っ立ったままだった。

言い返す言葉すら浮かばない。

・・・

「何? いったい何が起こっているの? あの旦那が・・わからない」

パートナーとして1ミリも必要ないと言われた。

考えると、自分勝手な言葉だと思ってはらわたが煮えくり返った。

もうあんな奴はどうでもいいと思っていたところだ。

縁が切れてさっぱりしていたと思っていた。

まぁ、子供たちのことは大きくなるまで近くにいると言う。

それでいいだろうと思っていた。

お金は全く問題なくなった。

それだけだった。

なのに、この空虚感。

わからないけど、大事なものが抜け落ちたような感じがする。

そして、レアとかいう女に変にかき回される。

いったい何だと言うの?

これじゃ、私が何か悪いことをしたみたいじゃない。

変よ、何か変よ!

嫁はそう思うが、どうしようもない。

何か言葉にならない塊が崩れていくような、そんな不気味さを感じる。

考えてもわからない。

・・・

嫁はそのままゆっくりと帰路についていた。


◇◇


レアは嫁のところを立ち去った後、テツの子供たちに話を聞こうと思っていた。

お菓子(フレイアのところで手に入れた)を用意し、テツの子供たちの家を訪れる。

学校は既に終わっており、颯たちはお義母さんに連れられて帰っていた。

嫁の家の呼び鈴を押す。

「はーい」

お義母さんの声だ。

ドアを開けると、レアがにっこりと微笑む。

「先ほどは失礼しました。 梓様ももうすぐお戻りになると思われます。 お詫びといってはなんですが、これをどうぞ」

レアはそういってお菓子の入った箱を手渡す。

「あ、はいはい。 ありがとうございます」

お義母さんは受け取りながらお礼を言う。

「梓様のお母様でいらっしゃいますね。 よろしければ、梓様のお子様たちと少しお話させていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか?」

レアは丁寧に聞く。

もし、今聞けなくても街などで偶然を装って聞くことはできる。

そう思っていた。

「えぇ、どうぞ」

お義母さんは別に断るでもなく、素直にレアを中へ入れてくれる。


レアは少し驚いた。

この人は疑うということを知らないのだろうか。

それともすべてを理解した上で、平然と振舞っているのだろうか。

・・

恐ろしい人物だ、掴みどころがない。

レアはそう判断する。

結論は単にレアの深読みなのだが、レアに一目置かせたのは事実だった。



最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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