100 神様ですか?
ルナが俺の目を覗き込んでジッと見る。
少しして、俺の前の方を向きキョロキョロとしていた。
すると女の子がいた場所へルナが移動する。
その場でしゃがみ、片手をつけて何やら真剣な顔をしている。
ルナはゆっくりと立ち上がり俺に言う。
「神だな、テツよ。 わずかだが神の残り香というか、そういった気を感じる」
ルナの言葉にヘルヘイムとヴァヴェルが驚いていた。
「か、神ですか、ルナ様・・」
「うむ。 やはりテツに会いに来たのだろうな」
ルナがそういうと、ヘルヘイムとヴァヴェルがぐるっと首を俺に向ける。
!!
い、いきなり俺の方に向くな!
驚くだろ。
俺はビクッとなり、背筋を伸ばす。
「神様ですか? 前にも男の姿をした人が神様だとか言ってましたが・・」
俺はルナに聞いてみる。
「うむ。 誰かを依り代にしておるからな。 とはいえ、何か言っておったか?」
ルナが言う。
「え、あぁ、はい。 ありがとうと言ってました」
俺は聞かれるままに答える。
「なるほどな・・ということは、我々の用は済んだということだ」
ルナはそうつぶやいていると、動かなくなった。
少し震えていたかと思うと大きな声で言う。
「おぉ! これであのシュークリームが食べられるのだな!」
思いっきりの笑顔で俺の方を向く。
ヘルヘイムとヴァヴェルはお互いに顔を見合わせて、何を言っているのかという感じだ。
それにしても神様か。
いったい何で俺に会いに来たんだ?
・・・
いや、理由はないとルナが言っていたな。
でもなぁ・・って、無限ループか。
俺が考えていると、ルナが声を掛けてくる。
「テツよ、ステータスを見てみろ。 何か変化はないか?」
俺は言われるままにステータス画面を開く。
テツ(ランクSS)
レベル:53
種族 :人?
HP :1020/1030
MP :940/950
力 :1050
防御 :998
敏捷 :1210
技能 :889
運 :77
職業 :超人9
固有スキル
神威☆
祝福☆+ε(イプシロン)
神光気☆
調理5
う~ん・・なんの変化もない。
成長すらしていない。
相変わらず種族は『人?』マークだ。
ん?
いや、あった。
祝福がデルタからイプシロンなっている。
だが、これって何か役に立っているのかな?
そんな疑問が浮かぶが、わからない。
「ルナさん、特に大きな変化はないですが、祝福が増えています」
俺がそう答えると、ヘルヘイムとヴァヴェルが驚いていた。
「テ、テツ殿・・それは本当ですか?」
「ルナ様、祝福というのは増えるものなのですか?」
ヘルヘイムが思わず言葉を口にする。
「ふむ。 我々の種族ではなかなかないが、人種族などではあるようだな。 元が元だ。 貧弱だからな。 それに我々とは時間の流れからして違う。 それを補うスキルだろう」
ルナが話していた。
ヘルヘイムもヴァヴェルもなるほどと、妙に納得している。
俺はその真剣にうなずく姿を見ながら思う。
いやいや、あんたらルナの言うことを疑っていないだろう。
まぁ、そんな突っ込みはいいとして、神様か・・。
考えてみれば、こんな世界になる前から俺たち人間は大きな流れの中で生かされていたように思う。
ばあちゃんがよく言っていたものだ。
俺は未熟児で生まれてきたが保育器に入らなくて良かったらしい。
ばあちゃんが妊娠中毒症にかかり、子供はあきらめてくれと言われたが生まれてきた。
生まれてきても弱くて仮性コレラにかかったとかで、当時は俺と同じ子がたくさん亡くなったそうだ。
毎日のように新聞の死亡欄に0歳や1歳といった記事が載っていたという。
そういった命に関わる事案の時に、不思議と俺は生き残っていたんだとばあちゃんがよく言っていたことを思い出した。
それって加護と呼べるのかな?
あるのかもしれない、そういうものが。
ただ、今の世界システムにはそういったものを感じることはできる。
形はないようだが、存在はあるみたいだ。
そんな存在が俺みたいな個人や種族に興味があるのか?
いや、単なる気まぐれか。
・・・
考えても答えはないな。
でも、負の感情を持って俺を見てないと言うことはありがたい。
自然から排除される心配はないようだ。
俺はそれ以上は考えることはやめた。
俺はルナたちと一緒に帰って行く。
◇
ドレイクたちの協議は3日間行われ、ドレイクが人種族の長としてまとめていくことになった。
王立性を確立し、血族によるのではなく一般市民から選出される王というシステムにするという。
任期を設定し、それでまた国民の判断を仰ぎつつ運営。
ヘルヘイムやヴァヴェルたちとはお互いの領域は侵さないということで了承。
ただ、交流は盛んに行いたいという。
光の巫女は象徴として神殿と協調して、王国が守護していくそうだ。
・・・
・・
いろいろと聞かされたが、覚えきれない。
どうでもいいというわけではないが、仲良くやれるのならそれに越したことはない。
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