表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

りぼん、空を飛ぶ

 人間と猫では、味覚と嗅覚のバランスや、顎の力や歯の形も全く異なる。

 つまり……


(ごちそうさま。生でもおいしかった)


『それは良かったわ。あたし今目で見た事がわからないんだけど、何であいつの脚はいきなり切れたの?』


(固くした薄い布は刃物と一緒。縦に押し当ててそのまま伸ばせば、それで切れる。簡単な物理現象)


『うん、聞いてもわからなかったや。それはともかく、いい加減やり残したことはない?』


(無い)


『それじゃあ改めて、いちご山に向かって出発しましょう』


(うん。で、どっち?)


『ごめん、それあたしにもわからないの。とりあえず海を背にして進んで行って、人間の住む場所でもあったら、そこで情報を集めてみましょ』


(人間は嫌)


『そうは言っても、人間が使う地図でも見つけないと調べられないわよ。そもそも相手の言葉は聞けても、こちらから尋ねる術はないんだから』


(……あまねはその山を見たら分かる?)


『そりゃ、直接見えたらわかるわよ』


(それで十分。じゃあ出発)


『え? まさか歩いて探すつもりなの?』


(これがあれば、移動は簡単)


 理凡はリボンの両端を地面に突き立て、自身を上空高く持ち上げるように伸ばした。


『何するつもり?』


(まずは上からその山が見えるかどうか確認。無いようなら、そのままこれを足代わりに使って歩く)


『けっこう無茶するわね。とりあえず、今のところはいちご山は見えないわ』


(了解、これより移動を開始……これ、思ったより難しい。風も強い)


例え小さくても、地上数十メートルに重心がある状態での二足歩行は無理があった。


『もう下りなさいよ。見てるこっちが怖いわ』


(風は海から内陸に向かって吹いてる、これならいける)


『ちょっと何する気よ』


(この風に乗って飛ぶ……こう)


 地面まで伸ばしていたリボンを折り畳み、グライダーのような形を作った。

 すると元々の軽さもあって一気に風に乗り、軽快に進んでいく。


(見た事ない建物)


 少しすると、眼下に人間の街らしき建造物の群が見えた。かつて写真などで見たような気もするが、どこか違う感じも受けるそれは、理凡に別の世界に来たと言う実感を与える。


『あっ、あれ!』


 さらに飛行し、海からかなり離れた為か風の勢いも弱まり、そろそろこの移動法に限界が見えてきた頃。まだ遠い地ににそれはあった。

 周囲を広範囲に緑で囲まれた丸っこい山。あまねの反応から、どうやらあれで間違い無いようだ。


(あそこにポチが)


『もう完全に犬呼ばわりね。まぁいいけど』


 理凡はちょうど森に入る手前辺りで着陸した。


『で、ここからどうするつもり? まだ山までは遠いけど』


(ここから先は陸路。ポチに会うまでに、いろいろやっておきたい事がある)


『それ普通もっと前に言う台詞よね。ここまで来たらもう大自然(もりとやま)だけよ』


(大丈夫。むしろこんな場所の方が適してる)


理凡は躊躇う事なく、森に向かって足を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ