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深い空の向こうに  作者: お餅。
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4話 登校の日に


4話〜登校の日に〜


 週が明けて月曜日。ルナ…いや、ヒカルが俺と同じ学校へと通う為の学校側の準備は完璧に整っていた。流石の母さんだった。

 「ステラぁ、ネクタイ結ぶのってどうやるの…?」

 「あー俺がやってやるから良いって…」

 「ありがとう、ステラ…」

 俺たちは朝ごはんを済ませ、ヒカルにとっては着慣れない制服の着方を教えていた。

 「それと、そのステラって呼ぶのもややこしいから学校では無しな? ユウキの事をニュクって呼ぶのも無し、約束できるか?」

 いきなり転校して来た奴が、知り合いという体の俺の事だけならまだしも、他の人もあだ名で呼んでいるのはどう考えても不自然だと思ったからだ。

 「わかった、ステ…えっと、ケン?」

 「よし、そうそうその調子」

 「それと…もし俺とユウキ以外で他に見覚えがある人がいたら、本人には声を掛けずにこっそり俺だけに教えてくれよ?」

 俺は一昨日ユウキと会った時の事を詳しく思い出しながら言った。

 「うん、約束するよ!」

 俺とユウキ、ステラとニュク。アエクアに二人も似た人物がいるのであればまだ居ても不思議ではない。

 もしかしたら深空…アエクアはこことは構造の似ている別の世界なのかもしれない。だとしたら十分あり得る話だし、簡単に説明が付く。


 「…さ、これで準備ができたな!」

 「これで学校に行けるの?」

 ヒカルには初めての制服は少し窮屈な様で、ソワソワと落ち着きが無い。まぁ、一日過ごしてたらそのうち慣れるだろう。

 しかしルナが最初に着ていた服は普通のパーカーみたいな服だったが、アエクアでも皆ここと似たような服を着ているのだろうか。

 「ああ、行くぞ?」

 「うんっ、行こっか、ケン!」


 ルナ…いや、ヒカルの準備がちゃんと終わったのを確認して俺らは家を出た。

 「さっきの約束、ちゃんと守れるよな?」

 俺は心配で確認の為に再度聞いた。が、

 「もう、大丈夫だって言ってるでしょ、ケン? 心配性なところもステラにそっくりなんだから…」

 まぁ…この返答なら恐らく心配は要らないだろう。

 「あ、あとは…アエクアに関する話もしないようにしてくれよ? 昔は俺の近所に住んでたけど小さい頃に引っ越したって事にしてくれよ?」

 「うん、解った!」

 ヒカルは満面の笑みで返事を返してくる。


 そのまましばらく約束や学校の話をしながら歩いていると、思ったよりも早く学校へと着いた。

 そして俺はヒカルを職員室へと連れて行き、そこで先生と少し話をして俺だけ先に教室へ行く事になった。少し心配になったが、さっきまでの様子なら多分大丈夫だろう。

 自分の教室に入ろうとしたその時、誰かの名前を叫びながら弾丸のように兎獣人が飛び出してすぐさま隣の教室へと入っていった。


 …もう慣れた事ではあるんだが、よくぶつかりそうになるんだよなぁ…と、思いながら立ち止まってその兎獣人が向かった方をなんとなく見ていると、後ろから声が飛んでくる。

 「お、ケン! おはよう!」

 それは2日前に聞いたばかりの声だった。

 「あぁ、おはよう、ユウキ」

 俺は振り向きながら返事を返すと、その隣にはこれまたよく話す相手が更に二人も居た。

 「どないしたんケン、教室に来るんいつもより少し遅ない?」

 二人の内最初に話しだしたのは獺口おそぐち 治人はると、平均より少し背が低いくらいのカワウソの獣人だ。彼は中学までカンサイの方に居たらしく、喋り方が訛っている。

 「ああ、ちょっと先に職員室に寄らなきゃいけない用事があったから…」

 「なぁに、ケンくん何かやらかしたの?」

 続いて入れ替わりに話し始めたのは葉栗はぐり しゅん、ハルトよりも更に少しだけ背が低く足の少し遅めなリス獣人。足が遅いといっても歩幅が小さいだけでちょこまかと素早く足を動かせばそれなりの速さは出るが、本人曰くスタミナをかなり消費するのであまり乱発はできないらしい。

 「いいや、ちょっと先生に話があっただけで特に何でもないよ」

 ちなみにシュンとユウキは去年俺と同じクラスだったが、今は隣のクラスだ。それからこの二人がハルトとも知り合って、休み時間に一緒に居たから俺とも知り合ったって形だ。

 「ほお…何があったんか気になるなぁ?」

 「そんなに大した事じゃないけど…そうだな、昼休みには多分分かるよ」

 昼休みは大抵俺とこの三人、一緒に食堂で過ごしている。なので恐らく、そのタイミングでヒカルも一緒に話す事になるだろう、と俺は考えていた。

 ちらりとユウキの顔を見遣ると、俺の視線に気付いて軽く頷いた。まあユウキにだけはあらかじめ土曜日に話をしていたし、何の事かは分かっているとは思うが。


 その時ちょうど校内にチャイムが響き渡った。や否や、先程の兎獣人が爆速で戻ってきた。

 「ほな、また昼休みなー!」

 「ああ、また」

 そして三人は隣の教室へ、俺は自分の教室へと入っていく。


 俺が自分の席へと着くと、丁度先生も教室に入ってきた。

 まあいつも通りの先生の話が続いた後、例の話があった。

 「えー、ここで突然だが今日はこのクラスに転校生が入る事になった。入ってこい。」

 突然の事にどよめく教室、まぁそうなるよな。そしてそっと教室のドアが開いて入ってきたのは、勿論ヒカルだ。

 「え、えーっと…僕の名前は、月浪 光です!」

 よし、ちゃんと間違えずに言えたな。と、ホッと胸を撫で下ろす。

 「はい、月浪くんだ。皆仲良くするようにな」

 先生がそう言いながら名前を黒板に書いてくれる。そうだ、もし本人に書かされてたら多分危なかっただろうな…。

 「それじゃ、そこの八星の隣の席に座ってくれるか?」

 「はい!」


 そのまま少し嬉しそうにしながら俺の隣の席まで来ると、小声で俺に向かって

 「よろしくね、ケン?」

 と声を掛けてきて、俺は少し安心した。

 「ああ、よろしくなヒカル」

 俺は軽く手を差し伸べて、ヒカルは少しの間の後に理解して、握手を交わした。

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