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深い空の向こうに  作者: お餅。
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3話 休日の昼に


3話〜休日の昼に〜


 昨日は突然空から降ってきたルナを、俺のベッドの隣に敷いた布団で寝かせた。

 ルナは(かたく)なに同じベッドで寝る事を望んでいたがさすがにそれには抵抗がある事や、まだ自分からしたら初対面に近いという事などを繰り返し説明するように話したら渋々承諾してくれてなんとか夜を越した。

 が、俺が目を覚ますとルナは何故か俺のベッドの方に入ってきていた。少しギョッとして自分の体を一度確認するが、知らない相手に特に何か危ない事などをされた様子は全く無くただ一緒に寝ていただけのようだった。

 おかげで土日だというのに、寝覚めの目は一瞬で冴えた。

 多分一緒にいるのが落ち着くのだろうが、生憎(あいにく)それは寝起きの心臓にはとても相性が悪かった。

 「…しかし…」

 寝ているところを起こさないようにそっとベッドを抜け出ては、もう一度彼の首筋の模様を眺める。

 ルナの言うことが全て正しいのであれば、ルナの元いたアエクアには俺に全くそっくりな人がいる事になる。

 「ドッペルゲンガーか、他人の空似か…」

 とりあえず俺は学校の友人の一人と連絡を取り、ルナの話や図書館で調べ物をしたいという話をした。


 ちょうどその時、

 「うぅ〜ん…ステラぁ…?」

 どうやら目を覚ましたらしいルナが背を向けた俺に声を掛けてくる。

 「起きたか…?」

 「うん、おはようステラ…」

 相手の方を見遣(みや)ると柔らかく笑ったルナがこちらを見ていた。

 とりあえず俺はこの後友人と図書館前で待ち合わせている事、そしてその友人にルナを紹介することも話した。

 ルナもそのことには賛成だった、(いわ)くステラもといケン、(よう)は俺の友人はどんな人物なのかが気になるとのことだった。


 そんな話をしていると俺たちは自分のお腹が空いている事に気づく。ルナと俺が揃って食卓へと向かうと、そこにはちょうどいい匂いが漂い始めていた。

 「あら、ケンにルナくん。おはよう、ちょうどご飯出来たところよ!」

 こちらに気づいた母さんがにこやかに挨拶をする。

 「おはようございます、ケンのお母さん」

 「そんな(かしこ)まらなくて良いのよルナくん、お母さんだけで良いわよ?」

 母さん、なんだかノリノリである。こういう時の母さんにはあまり乗らないのが吉。だが

 「えっと、じゃあお言葉に甘えて… おはようございます、お母さん!」

 そうだよな、そんな事ルナには知る由もないもんな。

 そのまま母さんとルナは色々話をしながら、三人で朝食を摂った。


 そして互いに食事を終えて、俺は母さんに話しかける。

 「ちょっとルナ連れて調べ物しに図書館行ってくる!」

 「お昼は食べてくるの?」

 「多分! 一人友達も誘ってるし」

 「それじゃ少しだけ持っていきなさい、ルナくんは持ってないだろうからね」

 そう言って俺は母さんにいくらか手渡される。

 「ありがとう、それじゃ行ってきます!」

 「はーい、行ってらっしゃい!」

 俺はルナと一緒に家を出た。


 道中、俺はルナと話しながら歩いていた。

 「図書館って、本がいっぱいある所なんだよね?」

 「ああ、そうだけど…知らないのか?」

 「アエクアでは違う名前だけど似た場所ならあるよ。 そこは深空の書庫って呼ばれてるんだ、深空って言葉はよく解らないけど…」

 「し、深空…だって?」

 「うん…深空だけど、それがどうかしたの?」

 そう、紛れもなくルナは今深空と言った。それは俺が長年行くことを夢見ている場所の名前だった。そしてその名前の付く場所があるということは恐らく深空は実在しているんだろう。

 「…実は、その深空についての情報を集める為に図書館に行くんだ…」

 「え…じゃあステラは深空を知ってるの?」

 「まあ、一応ある程度な… さ、そろそろ着くぞ」


 俺は図書館の前を、その友達を探して見回すとすぐに見つけた。

 「あ、いた… おーい、ユウキー!」

 「おー、ケン!」

 そのままルナの服の袖を引っ張ってそのハルトのそばへと駆け寄る。

 「その子が例の、ルナ?」

 「そうそう! …あぁルナ、こいつが俺の友達で──」

 俺がそこまで話した時、(さえぎ)るようにルナが発した言葉は…

 「…あれ、君ってニュクだよね? 久しぶり! 元気にしてた?」

 「…え?」

 俺はポカンとした。まさかとは思うが、ユウキの知り合いなのか?

 しかしユウキの方へ視線を移すと、同じくポカンとしていた。

 と、なると恐らくは…

 「もしかして、アエクアの住民か…?」

 「うん、そうだよ…?」

 やっぱりか。

 「ルナ…紹介する。 こいつは俺の友達で、狸塚(まみづか) 祐紀(ゆうき)っていうんだ。」

 ユウキは去年俺と同じクラスで、よく話していた狸の獣人だ。

 「え、それじゃあ…」

 流石にここまで話せば、ルナも察したような表情になる。

 「そう…俺と同じで、ただの似た人だ…と思う。」

 俺以外にも似た人物がアエクアに存在しているという事だろう。となると、まだまだそういう人はいるんだろうか。


 「それじゃ僕が片方渡してた石の事も、知らない…?」

 「えっと、はい…どんな石ですか?」

 「あ、それはこんな…」

 自分の服のポケットを探りだすルナ。しかし…

 「あれ、ない…」

 繰り返し複数のポケットを探るが見つからない様子。

 「…なくしちゃったみたい…」

 「石って、どんな石なんだ?」

 「うん、結晶みたいに透き通ってて…メモリーストーンって物らしいんだけど…」

 「それをどうして、ニュクって人に渡したんだ?」

 「研究してもらってるんだ…不思議な力がある石らしくて…」


 ますます謎が深まる話だな…だがとりあえず今は、

 「まあ…とりあえず一回図書館の中に入ろうか? 一つルナに見せたい本があるんだ」

 「見せたい本…?」

 「ああ、さっき言ってた深空についての本もあってさ…」

 「ほ、ほんと?」

 食いついてくるルナ。

 「んでこの建物は静かにしなきゃいけないから、中に入ったらあまり大声立てないようにな?」

 「うん、わかったよステラ!」


 そのまま俺とルナ、ユウキは一緒に図書館の中へと入った。

 俺は迷うことなくとある本のある棚へと向かった。

 何度もその本の場所へは行き来しているから間違えようがない。

 そしてその本を手に取りルナとユウキが座って待っている場所へ戻ってくると、隣へ座って本を開く。

 「このページなんだ、ここに深空について書いてあって… ここに書いてあるのは『その暗い夜空のずっと先は、深海へと繋がっているらしい。 それを人は”深空”という——』って文なんだけど…」

 「いやケン、これってファンタジー小説だろ…?」

 「でもこれが完全にフィクションなんて事は書いてないし、なによりこのルナがいる事が証拠だろ?」

 「いやまあそうだけども…」

 「それにルナが元々居たアエクアの街に、深空の書庫って場所があるみたいなんだ」

 「うん、それは本当だよ 僕はこことは全然違う街並みの場所にいたし、ステラが言う事には僕空から落ちてきたみたいだし…」

 「ちょ、ちょっとさっきから気になってたんだけど…どうしてケンのことをステラって呼んでるんだ?」

 「あ、それならアエクアの街にどうやら俺にそっくりな奴がいたらしいんだ。 ユウキと同じように…」


 そこまで話して、ユウキは一つ大きく呼吸をして喋る。

 「にわかに信じがたい話ではあるけど、実際に証拠があるんだもんなぁ…」

 「それじゃ信じてくれるのか?」

 「まぁ流石にね… そうじゃなきゃその…ルナくんだっけ? その子の説明も付かないし。」

 そしてユウキがまた一呼吸置いて

 「ルナくんも、嘘ついてるようには見えないからね」

 母さんと同じ事を言うユウキ…まあさすがに俺もこの状況は少し不思議だと思ってるけどな。


 その後も作戦会議よろしく色々と話をしたが特に進展も無く、結果としてその時はは状況を整理しただけで終わってしまった。

 色々話しているうちに俺らはお腹が空いてきている事に気付いた。

 その持って来た本を借りて図書館を出て、三人でとりあえずファストフード店へ向かった。


 出てきた料理一つ一つにルナが目を丸くしていたのは、また別の機会に話す事にする。

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