Episode.1 出会い
久々の投稿で至らない所もありますが、これからこの作品を連載していけたらなと思います。
暖かい目で見守り、そしてこれからも見ていただけると幸いです。
「よくぞ来たな勇者よ……。」
禍々しいオーラを放っている魔の王。
「お前を倒すためにここまで旅をしてきたんだっ……絶対に負けないっ!」
神々しく光り輝く剣を構える青年。彼こそが勇者である。
「そして、世界の平和を取り戻すっ!その子も傷つけさせやしないぞ!」
「アラタさんっ!」
囚われの少女に目を向けそう言い放った。
そう!その少女……いや!美少女こそが実は魔王のムスメである私!この物語の主人公のカノンである!
時は遡り、魔王の住む城の手前にある街。
様々な冒険者が行き交うこともあり街は栄えていた。
勇者はここで私と出会った。
私はお城で過ごしているばかりは暇なので、時折お忍びでこうして街に来ていた。
その時に出会った青年こそが勇者。正直、どストライクでめっちゃカッコイイ。一目惚れだった。
「もしや、あなたが噂の勇者様……ですか?」
聖なるオーラが凄いので、確信に近いものは持ちつつそう聞いた。
「勇者には間違いないですけど、様なんてつけられるほど大それた人間じゃないですよ。」
そうやって苦笑いしている。
「いえ、魔物に襲われている数々の村を救ったり、困ってる人々を助けたり、この街にもそんな噂は届いていますよ!凄く立派だと思いますっ!」
まぁ大半はお父様の部下や側近さんから聞いたお話だし、私達からすればすごく困ることも多いのだけれど。
「立派だなんてそんな!……でも、ありがとうございます!」
ニコッと笑う勇者様。
「あの、お名前をお聞きしても宜しいですか?僕はアラタっていいます。」
「アラタ……さん。えーっと!私はカノンといいます!」
「カノンさん……あの、宜しければ街を案内していただけませんか?初めての街はやっぱりなれなくて。」
ハハハはっと笑うアラタ。
これはもしやデートのチャンスでは!?
「私でよければ!」
「ありがとうございます!こんな綺麗な人に街を案内してもらえるなんて、嬉しい限りです!」
「そんなっ、綺麗だなんて……//」
普段配下たちには言われてるけど、それは対等な人の言葉では無く、お世辞や恐れや媚など色々ない身を含んだものだ。私のことを真に見て言ってくれた言葉ではない。
だからなのかな、その言葉が凄く嬉しいと思ってしまう。
「ありがとうございますっ。それじゃあ行きましょうかっ。えーっと、まずは……」
私がどこを案内するか考えていると、
(ぐぅ〜……)
勇者は赤面している。
「長旅ですものね、オススメの場所があるので、そこに行きましょうっ!」
「はい……//」
私達は街を進んでいった。
すっかり日も落ちてきた。
「今日はほんとにありがとうございました。いろんな所を案内してもらって、楽しかったです。」
「こちらこそ、凄く楽しかったですよっ!」
今日1日過ごして本当に楽しかった。今までは城にいるばかりでも楽しいことや嬉しいことはあったが、それとは比べ物にならないくらい楽しく過ごせた。
だからっ、
「あのっ、アラタさんっ!魔王を倒したあと、またここに来て頂けませんかっ!」
今言える精一杯の言葉がそれ。
私は魔王の娘。叶わないかもしれない。
それでも私はこの人がほんとに好きになった。
「分かりました。約束します。必ず魔王を倒して、また会いに来ます。」
ぎゅっと私の手を握りしめがら、アラタさんは言った。
「あ、ありがとうございます……//」
今、伝えるしかないと私は思った。
「アラタさんがよければ……魔王を打ち倒した時にはっ……恋人にして頂けませんかっ!」
「えっ……!」
アラタは驚いたようだ。
突然の告白にドギマギしている。
しかし、
「僕なんかでよければ……こちらこそよろしくお願いします!」
決心したように真剣な目を向けてくれた。
「アラタさんっ!」
「わわっ!」
私は思わず抱きついてしまった。
本当に嬉しい。
そんな気持ちに浸っていると、アラタさんがゆっくり抱き締めてくれた。
幸せな時間を噛み締めていた。
そんな時だった。一斉に街にいた鳥が慌てふためき逃げていった。
「……っ!この気配は!」
アラタさんは何かを感じたようだった。
いや、私にもわかっていた。何が起こっていたのか。
私たちの前に降り立った一人の男。禍々しいオーラを放つその男は魔王と呼ばれ恐れられている男だった。
「見つけたぞッ!」
そう言って私を見てくる。
お忍びで来ているのがバレたのだろう。
「この禍々しい力……まさか!」
今ここでアラタさんに正体を知られる訳にはいかない。
「なんども断ったはずよっ!私はあなたのものにはならないっ!」(お父様!話を合わせて!この人には私が魔王の娘だとは知られたくないのっ!)
目の前に出て話すと同時にテレパシーをおくる。
「いいや、今日こそは私についてきてもらおうっ!」
(どういう事だ、我が娘よッ!そのものは勇者ではないのかッ?!)
お父様もアラタさんの聖なるオーラを感じ取り察したのであろう。
「絶対に嫌よ!」(とにかく今はダメっ!とりあえず、家に帰るから……そうだ!連れ去って行って!それでここは誤魔化してっ!事情はあとで話すからっ!)
「ええいッ!ならば力づくで連れていく迄よッ!」
(分かった。後でしっかりと聞かせてもらおうッ!)
そう言って私は手を引かれる。
「きゃっ!」(ありがとう、お父様。)
「カノンさん!」
「アラタさんっ!」
そう言って私の手を掴もうとするが、お父様がそれより早く動いていた。
「転移魔法ッ!」
私とお父様はアラタさんの目の前から消えた。
その場の思いつきだけで始めた作品ですが、展開が急なところはご了承ください……。
初回ですので、文字数は少し多めになっています。
そして、自分のメインとなっていた未完結作品の、『今日から僕は僕じゃない』も見ていただけると幸いです。