表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第3章 冒険者の少女、新しい力を求める

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/383

61.5話  ぬいぐるみはかわいい








「宝物庫に着いたぞ」


 リズの父親が宝物庫の鍵を開け、中に入ると棚には武器や貴重品が並べられており、その真中の大きめの台座に、小型の変わった形をしたクロスボウが六丁安置されていた。


 クロスボウは胴体部に宝玉がはめ込まれており、グリップの上辺りに羽のような飾りが付けられている。


「これがアイギスシャルウルッスか?」


「そうだ。この風変わりなクロスボウ六丁がアイギスシャルウルとして、我が家に代々伝わっているものだ」


 リズは取り敢えず手にとってみた。


「金属でできている割には、かなり軽いッス。グシスナルタよりも軽いッス、これならこうやって二丁持ちすることもできるッス!」


 リズはクロスボウを2丁持ちして、構えてみる。


「取り敢えず、これを試してみるッス」


 そして、リズはクロスボウに魔力を込める。すると、クロスボウの宝玉が光り、魔力で出来た矢が装填される事を確認した彼女は、自分の推理を披露しはじめた。


「やっぱり、リーゼロッテ様がオーラでなく魔力を鍛えていたというのを聞いた時から、アイギスシャルウルが魔力を媒体とする武器だと思っていたッス…」


 そして、一同が注目する中、リズは少し間を取るとジト目を見開きドヤ顔でこう言い放つ。


「つまりアイギスシャルウルは、こうやって六丁のクロスボウに魔力を込めて魔法の矢を装填させ、それをこうやって二丁持ちで次々と撃っていく武器だったッス!!」


「な…… なんだってー!!」


 リズの推理を聞いた一同は驚く。……が、エレナがすぐさま冷静にその推理に疑問を投げかける。


「それを複数同時と表現するでしょうか?」


 エレナのその的確な質問に、リズは苦しい言い訳をした。


「きっと、話が伝わる内に尾ヒレがついて盛った感じになったッス……。それに六発連続で撃てるのは悪くないような気がするッス。問題はその位置から動けないことッスけど……」


 エレアの言う通り、自分の推理が言い伝えの戦場を駆け回ったという話と矛盾することに、リズは気付いていたからだ。


 それに加えて、六丁のクロスボウに魔力を込める時間的ロス、その魔力消費量がネックになりそうだと思ったが、自分の着弾予測眼を使って同じところに六発連続で当てれば破壊力が上がるかもしれない。


 そう考えては見るが、その場から動けないというのは戦場では致命的で従者に運搬させていたのかもしれないが、効率が悪い気がする。

 何より【女神武器】との性能としては、お粗末すぎるのだ。


 使用方法が解らない現状では、自分が思っていた程の戦闘力アップには、ならない事にリズは少しがっかりする。


「お父さん、このクロスボウ持っていっていいッスか? 」

「ああ構わんよ。宝物庫で埃を被っているより、オマエが使った方がいいだろう」


「ありがとうッス。この大きさなら女神の中鞄なら入りそうッス。お父さん確かここに置いてあったはずッスね?」


「ああ、ここにある」


 リズは父親から中鞄を受け取ると、自分の思っていたより戦力強化にならなかった事に、残念そうにクロスボウを収納し始めた。


「リズ……」


 リズの父親が、娘のがっかりしている表情を見て、声をかけようとした時―


「はうぅぅぅぅ……!」


 ミリアが急に怯えた声を出して、大事に抱えていた梟のぬいぐるみを地面に落とす。

 そんなミリアに、リズは驚きながら声をかける。


「どうしたッス、ミリアちゃん!?」

「今……、ぬいぐるみが動いたの……」


 リズがそんなバカなと思って、地面に落ちているぬいぐるみを見ると、確かにぬいぐるみが地面で勝手に揺れて動いている。


「これは一体……」


 みんなが驚きと不思議な気持ちで見ていると、翼を広げた卵型の可愛らしいあちこち丸みを帯びた白い梟が、ぬいぐるみの中から外の布地を破って現れた。


「ホ――」


 白い梟はそう鳴き声を放つと空中に浮遊して、暫く一同の頭上を旋回するとリズの頭の上に着陸する。


「なっ、なんッスか!?」

「ホ――」


「えっ、アナタの名前“ミトゥルヴァ”って言うッスか?」

「ホ――」


 そう鳴くと、リズの上で嬉しそうに翼を羽ばたかせている白い卵型フクロウ。


「リズちゃんは、その子の言うことわかるの?」


 アフラが不思議そうにリズに尋ねると、彼女は逆に驚いた表情で質問を返す。


「えっ!? 皆さんにはこの子がそう言ったのが、聞こえなかったッス?」


 リズからの逆に質問された一同は首を横に振って否定する。

 どうやら、リズにだけ“ミトゥルヴァ”が、何を言っているか解るようであった。


「そもそも、“ミトゥルヴァ”は、アナタみたいな玉子型ではなく精悍な梟なはずッス! 肖像画にそう描いてあるッス! アナタはどう見たって玉子、もしくは雪玉じゃないッスか!」


「ホ――」


 それを聞いた“ミトゥルヴァ”は、怒ったのかフワッと空中に浮かぶと、丸みを帯びた短いくちばしでリズの頭を突いてくる。


「痛いッス。辞めるッス、悪かったッス!」


 リズの謝罪を聞いた“ミトゥルヴァ”は、再びリズの頭の上に降りる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ