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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第3章 冒険者の少女、新しい力を求める

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60話 新たな武器を求めて







 ミレーヌが紫音に聖墓への入り方の説明を始める。


「だが、アマネ様の【女神武器】のある聖墓には、関係者以外入ることが許されていない。聖墓に立ち入るには、入る許可を得ている同行者が必要になる」


「誰ですか?」

「王族かフェミニース教会総主教だ」

「じゃあ、アリシアに頼めば……」


「アリシア様は駄目だな、学校の休みが足りない。安心したまえシオン君、総主教フィオナ・シューリスは私の親友だ。話せばきっと力になってくれる、王都の教会にいて場所も近いから、忙しい彼女でも何とかなるだろう。明日にでも連絡を取っておくから、シオン君は明日旅立つといい」


「はい、ありがとうございます」

(フィオナ様の番号なら私も知っているけど、ここはミレーヌ様におまかせしよう)


 紫音がそう思っていると、リズが申し訳無そうに話し出す。


「シオンさん、私も明日から実家に帰ろうと思うッス。一緒に行けないけどいいッスか?」

「うん、別に構わないよ。久しぶりにお家に帰って羽を伸ばしてきなよ」


 リズは紫音のその言葉を聞いて首を横に振る。


「違うッス。私が帰るのは、実家の宝物庫に保管されているご先祖の… リーゼロッテ様が使っていた【女神武器】アイギスシャルウルを奪取……、いや拝借してくるためッス!」


「グシスナルタがそうじゃなかったの?」


 紫音の質問にリズが答える。


「これは、力の弱かった祖母が与えられたものッス。アイギスシャルウルは、複数の矢を同時に撃てたという凄い武器だと聞いているッス。私はこの前の戦いで、攻撃力不足を痛感したッス。その武器でそれを補いたいッス」


 リズは姉の攻撃力と連射速度を見て、自分の攻撃力と連射不足を痛感していた。


「リズちゃん、私も一緒に行くよ……」

「ありがとうッス、ミリアちゃん」


 ミリアが親友を心配して同行を申し出る。

 馬車で行くとはいえ、その馬車が魔物に襲われる事が稀に起きていたからで、それを聞いていたミレーヌがこう提案してきた。


「では、みんな旅の準備をして、明日に備えて早く寝ること」


 こうして、一同は部屋に戻っていく。

 その夜、紫音が旅支度をしていると、隣のエレナの部屋から大きな物音がした。


「エレナさん、どうしたんですか?!」


 そのため紫音が何事かと借りたサーベルを手に持って、慌ててエレナの部屋の扉を開けて室内に入ると、エレナがベッドの上で床にいる蜘蛛相手に怯えている姿を目にする。。


 紫音がサーベルの鞘で、蜘蛛を追い払うとエレナが礼を言ってきた。


「ありがとうございます、シオンさん。私田舎育ちで虫もある程度平気なのですが、蜘蛛だけは苦手で……」


「そうなんですか」


 そんなやり取りをしていると、リズとミリアも心配そうにやってくる。

 紫音は事情を話して二人を部屋に返して、自分も帰ろうとした時にふとエレナの枕元の電気スタンド近くに置いてあるフェミニース教の教典が目に入った。


(これがフェミニース教の教典、どんな事が書いているのだろう)


 そう思ってエレナに見せて欲しいとお願いしてみる。


「そっ、それは駄目です!」


 そしたら、エレナが慌てて教典を取ろうとしたため、手が滑って教典が地面に落ちてしまう。

 すると、カバーが外れた中の本の表紙には、仲良くしている半裸のイケメンが描かれていた。


「……………………」


 二人の間に少しの沈黙が続いた後、激動の一日が過ぎて――


「いや、このまま過ぎていくわけないじゃないですか!!」


 エレナが珍しくそう突っ込むと、紫音に慌てて弁解する。


「シオンさん、これは違うんです! いつもはちゃんと教典を読んでいるんです! 今日だって、ちゃんとこのあと読むつもりだったんです!」


 エレナは、半泣きになりながら紫音に必死に釈明した。


「あっ……、はい、わかっています…」


 紫音はエレナと視線を合わせずに、そう言って理解を示した。


「本当は、わかってないですよね!?」

「そんなことは……」

「こうなっては仕方ありません… シオンさんを殺して私も死にます……」


 エレナは完全にテンパって、ロッドを手に持ってとんでもないことを口走る。

 紫音は錯乱しているエレナに、理解があることを説明した。


「大丈夫です。エレナさんの趣味は理解しています! 私の大切な親友も、こういうのを持っていたので……」


「そうなのですか?」


 エレナはそれを聞くと少し落ち着く。


「アキちゃんっていう幼馴染の娘で、そういうのが好きだったんで……」


 紫音はそこでアキが中学の時に書いていた漫画の事を思い出して、慌ててその本を拾い上げ表紙の絵柄を確かめる。


「アキちゃんの絵柄にそっくりだ……」

「え!?」


 エレナは紫音のその言葉の意味を問いただす。


「シオンさんは、この本の作者オータム801先生をご存知なのですか?」

「オータム801? オータム!?」


(たしか、オータムは英語で秋! でも字が違う。アキちゃんの名前は亜季……。何よりアキちゃんが、この世界に居るわけがない……)


 紫音はその疑問をかき消すようにエレナに質問する。


「それにしても、こういう本って、このせか……国でもあるんですね」


 紫音の疑問にエレナは、饒舌かつ早口で説明しだした。


「昔からこの手のものはあったみたいですが、このオータム801先生の作品の表現方法は革新的で”漫画?”という表現方法らしいのですが、まるで演劇を見ているような迫力がありまして、それに何よりストーリーが素晴らしく、キュンキュンするモノばかりなんです」


 乗ってきたエレナは紫音にさらに深い説明を続ける。


「シオンさん、ここだけの話でお願いします」

「はい」


「私が聞いた話ですと、オータム801先生の作品が世に出始めたのは二年半前ぐらいで、最初は王都のフェミニース教会に仕える一部の修道女達の間に秘密裏に少数が出回ったそうなのです。それが逸品だと口コミで広がり、二年前から本格的に一般にも流通し始めたそうで、私はその教会の伝手で一年前に知りまして……。ちなみにオータム801先生は、今はこのアルトンの南西に行った所に801御殿を建て一人で住んでいるそうです」


 オタク特有の早口且つ長文で説明を終えたエレナは、未だ興奮冷めやらずといった感じであった。


「ところで、シオンさん。この事はみなさんには、内緒にしておいてくださいね」

「はい、わかりました」


 エレナに殺されたくないので、紫音はこの事は墓場まで持っていこうと心の中で思う。

 紫音はオータム801のことが気になったが、今は【女神武器】入手に集中しようと思うのであった。


 次の日―

 紫音が朝食を食べて出発の準備をしていると、クリス達が屋敷にやってくる。


「おはようございますクリスさん、どうしたんですか?」


「おはよう、シオン。昨日の夜、ミレーヌ様に君達の手伝いを頼まれてね。急な依頼だから、対応できるのがこの人数だけになってしまったけどね」


 どうやら、ミレーヌがクリスに応援を頼んでくれたらしい。


「というわけで、リズちゃん達にはアフラをつけるわ。シオンには私と索敵係のノエミを連れて行くわ。あと、ソフィーは要らないけど、一緒に行くってうるさいから連れて行くわ」


(ソフィーちゃん、がんばれ!)


 紫音は要らない子扱いされてしまったソフィーを、心の中で応援した。

 ちなみに応援が女性ばかりなのは、紫音達が女性ばかりなのを配慮したからである。

 屋敷の外には、ソフィー、アフラ、ノエミが待っていた。


「おはよー、今回もよろしくね!」


 アフラが元気よく挨拶してくれる。


「よろしく……」


 対象的にノエミが簡潔に淡々とした口調で挨拶してきた。


「おはよう……、よろしく」


 ソフィーが予想を裏切って、ツンツンな感じで挨拶してこなかったことに、リズがツッコミを入れる。


「ソフィーお姉さんどうしたッス? ツンデレキャラ設定を忘れているッスよ?」


「誰がツンデレよ! お姉様に大人しくするように言われたからそうしているだけよ!」


 クリスの言いつけを守りいつもより少し声のトーンを落として、リズに反論するソフィー。

 こうして紫音達は、二手に分かれて【女神武器】を求めて出発した。



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